さかいゆう@渋谷クラブクアトロ

さかいゆう@渋谷クラブクアトロ
さかいゆう@渋谷クラブクアトロ
いやあ、いいライブだった。夜空に浮かぶ満月を仰ぎ見ながら渋谷の道玄坂を歩いていた帰り道。思わず口をついて出たのは、そんな素直な言葉だった。で、なにが。さかいゆうのクアトロ・ワンマンが、である。デビュー前からKREVAやマボロシのフィーチャリング・アーティストとして活躍し、昨年10月にメジャー・デビューを果たした高知出身のシンガーソングライター、さかいゆう。シルクのように柔らかく透き通った歌声と、弾き語りによるキーボードの音色を基調として、ソウル、ファンク、ヒップホップ、クラシックなどの要素をふんだんに盛り込んだポップスを届けることで注目を集めている彼だが、そんな彼の底抜けに明るくオープンな魅力が、メジャー・ファースト・アルバム『Yes!!』を引っさげた全国ツアー・ファイナルとなるこの日のアクトでは全開になっていたのだ。

「What’s up? しぶやー!」「Are you ready? しぶやー!」という声に続いて、さかいバンドが登場したのは予定時刻を10分ほど過ぎた頃。シルクハットとエンジ×黒のボーダージャケットを着込んださかい、「セイホー!」とオーディエンスをひとしきり煽ったところで、これまたシルクハット&ジャケット&眼鏡を身につけたクマのぬいぐるみが傍らに置かれたステージ中央のキーボードの席につく。そして、アルバムでもオープニングを飾っている名刺代わりの1曲“N.A.M.E”をドロップ。そのままデビュー・シングル“ストーリー”へと突入すると、フロアは早くも大きなハンドクラップで包まれる。その後も、時折メンバーと笑顔でアイコンタクトを取りながら軽やかな手つきで鍵盤を弾き鳴らすさかいを中心に、明るく伸びやかな音のバイブレーションが会場いっぱいに広がっていく。しかし何と言ってもすばらしいのは、どこまでも柔らかく伸びやかなさかいの歌声。透明感がありながらも決して浮世離れしておらず、リアルな体温を感じさせるソウルフルな歌声に、会場にいる誰もが酔いしれているようだった。

「普段イヤなことあって凹んでいる人もいるかもしれないけれど、今日はさかいバンドが全部吸い込みますから。イヤなこと全部捨てていってください!」という挨拶に続いて“週末モーニン”“おはようサンシャイン”でフロアを沸かせた後は、さかい一人だけがステージに残って弾き語りによるパフォーマンスがスタート。全体重を鍵盤に乗せるようにしてプレイされた先ほどのエネルギッシュなにプレイからは一転して、一音一音、慈しむように奏でられるピアノの音色と真珠のように丸みを帯びた歌声が、フロアを幻想的な世界へと誘っていく。さらに18歳で音楽に目覚め20歳で上京、22歳で単身LAに渡ったときの思い出とともに、「LAで観たライブに感動して、いつかカバーしたいと思っていた曲をやります」との紹介からsadeの“Kiss of Life”を披露。とは言えバンドサウンドであるこの曲をピアノひとつで如何にカバーするのかと思いきや……ノーマルなマイクの傍らに設置されたビートボックス用のマイクを使い、ボイスパーカッションを披露。そこで録音されたビートを基調に、自らの歌声、シンセ、ピアノの音色を次々と重ねて多彩なサウンドへと進化させていく。これにはオーディエンスも大盛り上がりで、さかいのパフォーマーとしてのポテンシャルの高さはもちろん、音楽に向き合う職人的な一面も垣間見られた、とても贅沢な時間になっていた。なお、続いて同じ手法で披露された“今夜はブギーバック”のカバーも、本当にすばらしかった。

その後は再びバンドメンバーが登場。バッハのクラシック曲を大胆にアレンジした“まなざし☆デイドリーム”あり、レゲエ風味のミドル・チューン“train”あり、ギターの竹内朋康(マボロシ/元SUPER BUTTER DOG)によるラップが炸裂する“SHIBUYA NIGHT”あり……と、大胆でしなやかなアレンジの妙を感じさせるような楽曲のオンパレード。そのどれもが、伸び伸びとした羽を広げて鳴っているところが何とも心地よい。「たまに悲しい曲を書こうとも思うんだけど……やっぱり書けないですよ。ハッピーですもん!」とアンコールでさかいは呟いていたけれど、その言葉が心からのモノであることが分かるような、彼のオープンな人柄がそのまま音として鳴っているような、あたたかみのあるアクトの連続だった。

バンドメンバーが去っても鳴り止まない歓声に引き戻されるように、さかい一人がステージに残って行われたダブルアンコール。「皆さんは自分のふるさをと思い浮かべながら聴いてください」としてプレイされたのは、未発表曲“ふるさと”。牧歌的なピアノの旋律と高知弁まじりの歌声をノスタルジックに響かせた後、バンドメンバー、スタッフ、オーディエンスへの感謝の言葉を丁寧に述べてステージを後にした彼の姿は、普段の生活の中で付いた心の汚れをすべて洗い流してしまうほど、爽やかなものだった。やっぱり、こんなにもオープンで幸福なバイブレーションに満ちあふれたライブを見せつけられた後には、「いいライブだったなぁ」と、しみじみ呟きたくなってしまう。(齋藤美穂)

セットリスト
1. N.A.M.E
2. .ストーリー
3. ラビリンス
4. ウシミツビト
5. 週末モーニン
6. おはようサンシャイン
7. ↓
8. How Beautiful
9. Kiss of Life
10. 今夜はブギーバック
11. まなざし☆デイドリーム
12. Room
13. ティーンエイジャー
14. train

アンコール
15. SHIBUYA NIGHT
16. Midnaght U
17. ふるさと
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