遂にこの日がやってきた。高井戸温水プールが市民に無料開放される「体育の日」!――じゃなくて(いきなり大ボケ失礼!)、パンク・キッズが指折り待ちわびた2010年の一大イベント、Ken Yokoyamaプレゼンツの『DEAD AT BAY AREA』がいよいよ開催されるのだ。去る10月3日に、ひと足先に神戸国際展示場にて“WEST BAY”公演が行われ、約一週間後の本日は幕張メッセでの“EAST BAY”編。少し汗ばむくらいの見事な秋晴れのもと(気温は28℃まで上昇)、最寄りの海浜幕張駅には真っ昼間から大勢のキッズがぞくぞく結集。早くも漂う“祭り”なムードにハートが高鳴る!
13時頃にメッセに到着すると、物販エリアには既に長蛇の列が出来上がっていて、場内はキッズの賑やかな喧騒に包まれてる。そこには物販のほか、ライブ・ペインティング・コーナー、カメラマン・菊池茂夫、三吉ツカサ、岸田哲平の三氏による“DEAD
AT PHOTO PIT”なるライブ写真展示ブース、ケニーと馴染みの関西のタトゥー・ショップ「THREE TIDES TATTOO」や渋谷TOWER RECORDSの出張ショップ(名付けて「KENNY RECORDS」! ケニーがリコメンドする100枚目のディスクを販売。その一枚一枚にコメント付き!)、さらにバーや飲食ブースなどなど様々な企画が設置され、完全にフェスの様相を呈しているのである。
いちばん奥に位置する「ACOUSTIC PLAYERS & C-BOYZ IN DA HOUSE」とのボードが掲げられたサブ・ステージでは、13時20分から弾き語りライブがスタート。高本&CHUN2(from COMEBACK MY DAUGHTERS)をトップ・バッターとして(“Wall Flower”、“Vice&Vice”などを、しっとりと。名曲“Bored Rigid”では手拍子も起こって盛大にフィーバー!)、15分ほどの転換を挟んでdustboxのSUGA(最新アルバム『starbow』収録の“You'll Never Be All Alone”などを伸びやかに熱唱!)、HAWAIIAN6のYUTA(緊張の面持ちながら、いきなり“Magic”で大盛り上がり!)、ASPARAGUSの“シノッピ”こと渡邊 忍(アスパラ・ソングはもちろん、キャプヘジやつじあやのナンバー、そして“I Go Alone”もプレイ!)、最後にC-BOYZ(カメラマン・中河原理英らからなる半ケツ・スケーター集団!)が代わる代わるオン・ステージ。それぞれがケニーとの思い出話を交えたりしながら、熱のこもったステージでお祭りに華と笑顔を添えた。
17時30分になる頃には、メイン・ステージへと民族大移動が発生。まずはピザ・オブ・デスが送り出す久々のニュー・カマーにして“WEST BAY”にも出演したMEANINGが登場する。「MAKUHARI! 思いっきり行こうゼ!! マザー・ファッカー!!!」とフロントマン・HAYATOがいきなり吹っかけて、11月17日ドロップの1stアルバム『BRAVE NEW WORLD』から血混じりのヘヴィ・スクリーモを叩きつけていく。瞬く間に立ち現れた熱狂にも飽きたらず、「どうしたMAKUHARI!? 生きてるか!? もっと行こうゼ!!」とさらにHAYATOがアジテート。重厚なトリプル・ギターと絨毯爆撃のごとく打ちつけるビート、そして泣き叫ぶようなHAYATOのスクリームがマジ鮮烈だ。「こんな大きいとこでやらせてもらって、Kenさんとピザ・オブ・デスありがとうございます! 俺らみたいな音楽好きじゃなくても、俺らは前から一番後ろまで、精一杯伝える努力をします。よろしくお願いします!」(HAYATO)と一本気なMCでも喝采を浴びていたMEANING。わずか25分のステージながら甚大なインパクトを刻んで5人はステージを後にした。
前アクトの熱狂さめやらぬ18時15分――突如SEがストップし、怒号のような歓声のなかマキシマム ザ ホルモンが登場! 冒頭の“「F」”から幕張を阿鼻叫喚のヘドバン地獄へと突き落とす(スゲェ勢い!)。「MAKUHARI楽しんでますか!? 今日はヤバいね! この空気は今日にしかないね!!」と興奮を隠せない様子のナヲから、「なんで私たちがここに立ってるかを説明すると……5年前まで、アタシとKenさんが付き合ってました!」とのショーゲキ発言が! 「で、5年前に別れの朝が来て、『次会うときは幕張のステージで……』って」とナヲ(「今晩あたり、二人の“BED AT BAY AREA”が始まるでしょう」とウマイこと整えるダイスケはん!笑)。そんな妄想MCでもオーディエンスを沸きに沸かせ、“Mrブギータンブリンマン”、“ロッキン・アグリーモーション”と、フロアとステージが真っ向からブツかって壮絶なスクラムを繰り広げるようなハンパねえ一体感で激走。全員強制参加でお馴染みの“恋のおまじない”も飛び出し、ラストの“恋のメガラバ”までイベントをハイジャックする勢いでバーストしたホルモンだった。
そして、19時30分。耳にタコができるくらいディープ・パープルの「Burn」を浴びたのち(中には「タマホ~~ム!」と叫んでるキッズも・笑)、いよいよ本日の主催者・Ken Yokoyamaのお出ましだ。大喝采の中、いつも通りプラッとステージに現れたケニー。じっくり場内を見回して、何やらJun Grayに耳打ちして“Cherry Blossom”からライブを走らせる(さっそく無数のコブシが屹立!)。「来たよ、この日が! 皆様、よう来てくださった!!」と開口一番にオーディエンスを歓迎すれば、割れんばかりの大歓声を送り返すフロア。いきなりスゲェ一体感だ。きっと、みんな単にライブを観に来たのではなく、ケニーとの再会を果たしに(あるいは、この大一番を祝福しに)幕張までやって来たのだろう。「人」という字の成り立ちの話じゃないけど、そんなふうにステージとフロアが互いに何かを“委ね合っている”ような、ケニーのライブでしか感じられない強固にして親密なユニティ感が冒頭から場内を満たしているのだ。「ヤバいよ、こっから観る景色、壮観だよ!」と上気しながら(「イケヤとかコストコみたいだね!」とも・笑)、ステージ・バックの巨大な『DEAD AT BAY AREA』シンボルを背に、“Kill for you”、“Last Train Home”、“Your Safe
Rock”と破竹の勢いで畳み掛けていくKen Band。そのシンボル・マークの中央はモニターになっていて、描かれたケニーのイラストに角が生えたり、時にガイコツになったりして、デカバコならではの仕掛けで視覚的にもオーディエンスを沸かせる。そして、中盤にはこのイベントへの想いをMC――「去年の12月からこのライブを企画してきたから、なんか、ちょっと寂しいんだよな。今日のこのライブをスゲェ楽しみに、不安に思ったりしながら待ってたから。それがあと数時間で終わっちゃうなんて……」。また別の場面では「もしかしたら、こんなに大掛かりなこともう出来ないかなって思ったの。最後の大舞台のつもりで来たのよ。でも、今日のこういうの見たら、またいつかやりたいなって思ったわ。来年か、再来年あたり、また会いましょうね!」と笑顔で語りかけるケニーに割れんばかりの賛同の拍手が贈られ、ライヴはさらに一体感を高めて加速(古くからの愛機・Honey Kenに持ち替えて鳴らされた“Stay Gold”→“Walk”→“Running On The Winding Road”のフェーズはヤバ過ぎた!泣)。「最後に、『DEAD AT BAY AREA』の俺ん中のテーマ・ソングやるわ! 何かモノを作ってる人がいたら一生懸命モノ作って、モノを売ってる人は一生懸命モノ売ってよ。俺も一生懸命音楽やってくから、そうやって伝えていって!」と、精一杯の想いをのせて届けられた“Let The Beat Carry On”は掛け値なしに感動的だった。
実に4度のアンコールにも応えて(ひっさびさの「Lovin' You」に激アガり! 幕張でも禁断のストリップやっちゃった!笑)、30曲以上の熱演で『DEAD AT BAY AREA』はフィニッシュ。この日の記憶を胸に、それぞれの持ち場で、それぞれに最高のビートを鳴らしていくこと――それこそが僕ら参加者のできる唯一のことであり、また、ケニーの唯一にして最大の望みなんだと思う。ともかくは最高の“PUNKROCK DREAM”を見せてくれたケニーに心からの感謝を!(奥村明裕)