神聖かまってちゃん@リキッドルーム恵比寿

の子(Vo・G)「骨折してるやつはいるが、人生骨折してるやつはもっとたくさんいるんだから!」
mono(Key)「うまいこと言うね! お前、頭おかしいけど天才だよ!」
……といった会話までもが最高のスパイスとして効いてくるくらい、2010年音楽シーンを引っかき回した異端にして奇才=神聖かまってちゃんは、この日は奇跡的なくらいに鮮烈にロックだったし、パンクだった。アルバム『つまんね』『みんな死ね』リリース・タイミングで行われた、今回の大阪&東京初ワンマン・ツアー。アルバム・リリース当日=12月22日に同じくここリキッドルームで行われた東京公演は、「RO69」ブログや各サイトでも触れられていたようにぐだぐだの極致だったわけだが、同ツアーの追加公演であるこの日のライブはどうも様子が違った。

もちろん(?)、ライブの進行は例によってぐだぐだではあった。一応作ってあるらしいセットリストをその場の気分で作り替え、「次、“芋虫さん”!」とコールした直後に「クリスマス配信やったんだけど、その時電話してくれた人いる?」とmonoがオーディエンスに呼びかけたりして「いいからやれや!」とキレたの子が曲を“最悪な少女の将来”にスイッチした……のはいいがあまりに突然なのでみさこ(Dr・Cho)が曲の頭をトチったり、終盤になって衝動スイッチ入りまくったの子が「次は“ゆーれいみマン”!」と宣言して「もうやった!」と他のメンバー&観客にツッコまれまくったり、滑舌いまいちな上に(11月のライブ中に骨折した右手のギプスがまだ取れないのに)酔っ払い状態のmonoが何言ってるかわからない上にテンション上がりまくったの子がさらに何言ってるのかわからない絶叫を畳み掛けたりーーという風景は、もはや2010年の風物詩とも言えるかまってちゃんのライブ空間そのものだった。

それでも、この日のかまってちゃんの音は、日常への違和感を摘発する(マインドとしての)パンク感に満ちあふれていた。“死にたい季節”など随所で異物感を放ちまくる高音ヴォコーダーでの絶叫。壮麗な悲鳴のように共鳴&増幅し合う“スピード”の疾走ビートとギター・サウンドとシンセのアンサンブル。“黒いたまご”で暴力的なまでに吹き荒れるダンス・ロック的音像……自分たちを取り巻く日常や音楽シーンに呑み込まれないために、ありとあらゆる「お約束」を排し、鋭利でアヴァンギャルドでエキセントリックな音楽を構築した、いや「するしかなかった」神聖かまってちゃん。そんな彼らの、ポップに緊迫しまくった空気感が、上記のようなぐだぐだの展開と相俟って、この日のフロアを完全に支配してしまっていたのである。

そして。“あるてぃめっとレイザー!”の、聴いてるこっちの聴覚を破壊するかのようなイカレた絶叫! “学校に行きたくない”での華麗なダイブ!……と、この日の終盤のの子は1曲ごとにギアが上がっていくような天井知らずのヤバさを発信し続けていた。「えー、急なお知らせですが、あと1曲だそうです!」と、スタッフの耳打ちを受けてちばぎん(B・Cho)がアナウンスすると、フロアから沸き上がる「えー!」の大合唱。「2010年、俺らのマイペースに付き合ってくれてありがとうございます」と語るmono。本編最後の“いかれたNEET”では、の子がピンクのストラトを完全粉砕! アンコールで再び登場した後も、「最後の最後まで熱くフィーバーフィーバー! エクスプロージョンしていって!」とうわごとのように叫びながら“夕方のピアノ”で戦慄のヴォコーダー大咆哮! 最後は“ロックンロールは鳴り止まないっ”でオーディエンス大ジャンプ!の壮絶な大団円。そして、帰りに配られたチラシの束に混じって、「ご来場の皆様へ。一足早く来年のご案内です。http://gantan.info 神聖かまってちゃん」とだけ書かれた紙が。何やら重大発表があるらしいそのサイトには現在、元旦までのカウントダウンを行っている時計だけ。シーン随一の愉快犯にして確信犯=神聖かまってちゃん、来年早々見逃せない。

ちなみに、この日のオープニング・アクトはねごと。「なぜねごとが呼ばれたのか……」(澤村小夜子/Dr)と本人たちもMCで話していた通り、それこそ楽器編成以外には共通項のなさそうな共演ではあるが、“インストゥルメンタル”の静謐なピアノ弾き語り→鮮烈なロック・オーケストラ的アンサンブルの展開でリキッドルームのオーディエンスとがっちりギアを合わせた後は、“透き通る衝動”“ワンダーワールド”などミニアルバム『Hello! “Z"』6曲を全曲披露。「今年の1月に初めて(かまってちゃんと)一緒にやった時、なぜか私だけの子さんに紹介されて……気が合うと思われたみたいで(笑)」と困惑気味の澤村だが、この日のライブのために「生血」を持ってきた(実はアセロラジュース入りのペットボトルに「生血」と書いたもの)と超天然っぷりを見せつけてもいた。ポップ感とオルタナ感が手を取り合って踊り回るような“ワンダーワールド”。ヘヴィ・バラード“NO”に赤黒く渦巻く沙田瑞紀(G・Cho)のジャズマスターのサウンド。「ここに集まったみなさんと一緒に宇宙へ行きたいと思います!」という蒼山幸子(Vo・Key)のコールから流れ込んだ“ループ”の強靭な4つ打ちビートと藤咲佑(B・Cho)の極太ベースが描き出すワープ感。30分強のアクトながら、1日1日成長を続けている新星の「今」をクリアが伝わってくる充実の内容だった。(高橋智樹)

<セットリスト>
01. 白いたまご
02. ベイビーレイニーデイリー
03. 制服b少年
04. ゆーれいみマン
05. 最悪な少女の将来
06. さわやかな朝
07. 笛吹き花ちゃん
08. ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん
09. スピード
10. 黒いたまご
11. 夜空の虫とどこまでも
12. 死にたい季節
13. ねこラジ
14. あるてぃめっとレイザー!
15. 学校に行きたくない
16. 通学LOW
17. いかれたNEET

EN1. 夕方のピアノ
EN2. ぺんてる
EN3. ロックンロールは鳴り止まないっ
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