ウェーヴス @ 渋谷クラブクアトロ

ウェーヴス @ 渋谷クラブクアトロ - pic by Tiger Haginopic by Tiger Hagino
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昨今のUSオルタナティヴの隆盛とは、幾多の細分化された音楽ジャンルやバンド同士の交友関係が混じり合い、重なり合い、互いに影響を与え合うことで、質実共にバラエティに富んだ成果を生み続けている極めて有機的なムーヴメントだ。かつてのグランジやヘヴィ・ロックのように「今はこれ!」という巨大なトレンドを軸にした大きな渦、というよりも、そこかしこで潮の目がくるくると変わりながらも一方向に向かって緩やかに流れていくようなイメージがある。

そんなUSオルタナティヴの現在を象徴する潮の目のひとつが、いわゆる「ネオ・サーフ」と呼ばれる勢力だろう。彼らは古の50Sロカビリーからフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド、ビーチ・ボーイズのサーフ・ポップにガレージ・ロック、そしてサイケデリックやシューゲイザーを根っこに持つバンド達であり、たとえばMGMTやガールズ、ドラムスやベスト・コースト、それにモーニング・ベンダーズやリアル・エステイトといったバンド達がこのネオ・サーフの一員として名前が挙げられている。
ウェーヴス @ 渋谷クラブクアトロ - pic by Tiger Haginopic by Tiger Hagino
サンディエゴ出身の宅録シンガー・ソングライター、ネイサン・ウィリアムスのひとりプロジェクトとして始まったこのウェーヴスもまた、そんなネオ・サーフの一角を成すバンドである。昨年リリースされたセカンド・アルバム『キング・オブ・ザ・ビーチ』は、ベース(ステファン・ホープ、元ジェイ・リータード・バンドのベーシスト)とドラムス(ジェイコブ・コッパー)を迎えて初めてのバンド編成で制作された一枚で、SPIN誌やROLLING STONE誌、それにPITCHFORKといったUS主要メディアのクリティックポールで軒並み上位に食い込んだ彼らの出世作。『キング・オブ・ザ・ビーチ』を引っ提げての全米ツアーは各地で軒並みソールドアウトを記録するなど、2010年以降最も脂の乗っているUSオルタナティヴ・バンドのひとつがこのウェーヴスなのである。今回はそんな彼らの初の単独来日公演となった。

渋谷クラブクアトロは残念ながら満員とはならなかったけれど、それこそアーケイド・ファイアやMGMT以降のUSインディを熱心に追っています風のコアなオーディエンスが集結(男子率高し)。そして約20分押しで彼らがステージに登場する。「サンディエゴのべック」とも称されるネイサンの「寝起きか?」と突っ込みたくなるようなよれっと崩れたカレッジ風の装いの横で、屈強な体つきのステファンはランニング一枚&フライングVのベースを構えているという、ちぐはぐファニーな佇まいがなんともらしすぎる。

しかし、“Friends Were Gone”で幕開けたこの日のショウは予想外に簡潔、そしてフレッシュな内容だった。なにしろアンコールまで併せて全17曲、しかし17曲演りきってもトータルタイム約50分という極端なショートセットだったのである。ほぼ内輪ウケに終始したMCやイントロをトチって仕切り直す等のうだうだなインターミッションを含んでもコレなのだから、1曲あたりの所要時間は恐らく平均2分半そこそこだったんじゃないだろうか。極短ナンバーを次から次へとドロップしていく様は「ネオ・サーフ」というタームから連想されるドリーミーなサイケデリック感とは程遠く、ローファイ・パンクのシンプルな骨格にギリギリまで逆行していくようなマナーを感じさせるものだった。ボーカルには頑なにリバーブ処理が施されているのだが、高速のビートとノイズがリバーブの余韻を掻き消すように次から次へと降り注いでくる。
ウェーヴス @ 渋谷クラブクアトロ - pic by Tiger Haginopic by Tiger Hagino
足取り不透明な彼ら元来のローファイ・パンクをポップに整形しなおしたのが『キング・オブ・ザ・ビーチ』であり、そのポップさゆえに『キング・オブ・ザ・ビーチ』はネオ・サーフの金字塔的アルバムになったわけが、この日の彼らのライブ・パフォーマンスはそんな『キング・オブ・ザ・ビーチ』のウェルメイドなサウンドプロダクションを粉砕するベクトルでギターもベースもドラムスも尽力していたように思う。アルバム中でウィーザー級のポップネスを発揮していた“Linus Spacegead”のようなナンバーも、ジャリジャリとしたガレージ・パンク・ナンバーに様変わりしていた。

この日のMCでネイサンが自分達のサウンドを60年代のB級ガレージ・コンピ「ナゲッツ」に喩える場面もあったが、言われてみれば確かに音もパフォーマンスもナゲッツ風味満載。まるでネオ・サーフの「デモ」を垣間見るような体験だった。(粉川しの)
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