そんなUSオルタナティヴの現在を象徴する潮の目のひとつが、いわゆる「ネオ・サーフ」と呼ばれる勢力だろう。彼らは古の50Sロカビリーからフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド、ビーチ・ボーイズのサーフ・ポップにガレージ・ロック、そしてサイケデリックやシューゲイザーを根っこに持つバンド達であり、たとえばMGMTやガールズ、ドラムスやベスト・コースト、それにモーニング・ベンダーズやリアル・エステイトといったバンド達がこのネオ・サーフの一員として名前が挙げられている。
渋谷クラブクアトロは残念ながら満員とはならなかったけれど、それこそアーケイド・ファイアやMGMT以降のUSインディを熱心に追っています風のコアなオーディエンスが集結(男子率高し)。そして約20分押しで彼らがステージに登場する。「サンディエゴのべック」とも称されるネイサンの「寝起きか?」と突っ込みたくなるようなよれっと崩れたカレッジ風の装いの横で、屈強な体つきのステファンはランニング一枚&フライングVのベースを構えているという、ちぐはぐファニーな佇まいがなんともらしすぎる。
しかし、“Friends Were Gone”で幕開けたこの日のショウは予想外に簡潔、そしてフレッシュな内容だった。なにしろアンコールまで併せて全17曲、しかし17曲演りきってもトータルタイム約50分という極端なショートセットだったのである。ほぼ内輪ウケに終始したMCやイントロをトチって仕切り直す等のうだうだなインターミッションを含んでもコレなのだから、1曲あたりの所要時間は恐らく平均2分半そこそこだったんじゃないだろうか。極短ナンバーを次から次へとドロップしていく様は「ネオ・サーフ」というタームから連想されるドリーミーなサイケデリック感とは程遠く、ローファイ・パンクのシンプルな骨格にギリギリまで逆行していくようなマナーを感じさせるものだった。ボーカルには頑なにリバーブ処理が施されているのだが、高速のビートとノイズがリバーブの余韻を掻き消すように次から次へと降り注いでくる。
この日のMCでネイサンが自分達のサウンドを60年代のB級ガレージ・コンピ「ナゲッツ」に喩える場面もあったが、言われてみれば確かに音もパフォーマンスもナゲッツ風味満載。まるでネオ・サーフの「デモ」を垣間見るような体験だった。(粉川しの)