ザ・クロマニヨンズ @ 日比谷野外大音楽堂

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「闇夜の地球を救うべく、ウンボボ号がやってきたぜー!!」という前説のお兄さんの煽り文句に、躊躇い無く吹き上がる歓声、また歓声。昨年の11月から足掛け5か月間、全59公演に及ぶロング・スケジュールで行われてきた『ザ・クロマニヨンズ ツアー2010-2011 ウンボボ月へ行く』は、すでに2/21に行われた渋谷C.C.Lemonホール公演の模様がレポートされている(http://ro69.jp/live/detail/48153)けれども、今回は終盤戦となる日比谷野音公演をレポート。以下、今後の公演に参加予定の方は、ネタバレにご注意下さい。

舞台のバックドロップには青い地球のシルエットが弧を描き、そしてステージ上にはクロマニヨンズの最新アルバム『Oi! Um Bobo』のアートワーク・ロゴをあしらった旗が突き立てられている。客席中央に浮かべられた光るバルーンは、太陽だろうか。「ウンボボ、ウンボボ……」という掛け声と太鼓のSEが響き渡って、いよいよ4人がステージ上に姿を現した。
ザ・クロマニヨンズ @ 日比谷野外大音楽堂
ごく短いイントロを経て性急に響き渡ったオープニング・ナンバーは“オートバイと皮ジャンパーとカレー”。のっけから、周到に編み上げられたコーラスのフックが大きなシンガロンングと化して転がってゆくクロマニヨンズ・ライブの真骨頂だ。ハイ・スピードで飛ばしながら誰一人として置き去りにしない、積載量∞の暴走ロックンロールである。そして大振りなマーシーのギター・リフにヒロトの絶好調巻き舌ボーカルが踊る“伝書鳩”、幸運にも穏やかな春の空気に恵まれた屋外ステージにピッタリと嵌った“あったかい”、さらにはヒロトのブルース・ハープとマーシーの鋭いギター・ソロがけたたましい応酬を繰り広げる“キャデラック”と、『Oi! Um Bobo』の収録曲順どおりにステージが進められてゆくのだった。

「会いたかったぞー! 昨日じゃないよ。明日じゃないよ。今日会いたかったよ。A面の4曲目までやったんで、次はA面の5曲目です」。ヒロトがそんなふうにサクッと説明を挟み込み、マーシー&小林のダンディーなコーラスを巻いて“キャデラック”が披露される。ボ・ディドリー・ビートを刻むマーシーのギターが、まさに!という感じでボ・ディドリー・モデルの真紅の長方形ギターにスイッチしている。そして伸びやかに歌われた“多摩川ビール”では、辺りが夜に染まるというステージ上で無数の小さなライトが一斉に点灯し、美しい星空の背景を描き出した。
ザ・クロマニヨンズ @ 日比谷野外大音楽堂
「A面の6曲目までやりました。B面はまたあとでやろうな。じゃあ違うの、かけようか」とヒロトはレコード盤を入れ替える仕草(あるいはジューク・ボックスだろうか?)を見せて、「……オ~♪……1回しかやりません。一緒にオ~♪って歌っておくと、後で得するぞ」と“グリセリン・クイーン”へ。当然盛り上がるのだが、続く“草原の輝き”は、ここでもヒロトのブルース・ハープとマーシーのギター・ソロが激しいデッド・ヒートを繰り広げる素晴らしい熱演になっていた。そして今回のツアー真っ最中に届けられたニュー・シングル“流線型”だ。その歌を聴き、また宇宙を背景にプレイする4人を目の当たりにすることで、僕は年内の全機引退が決まっているスペース・シャトルを連想したりしてしまった。最高にロマンチックな思いと、決定的に取り返しのつかない過去を同時に鷲掴みにしてメロディに乗せるマーシー節が胸の内で広がってゆく感じがする。“流線型”との両A面シングルである“飛び乗れ!!ボニー!!”、そしてアルバム『MONDO ROCCIA』から“ムーンベイビー”を経て、ステージ中盤のクライマックスとなったのは“スピードとナイフ”だ。ここでも客席から届けられるコーラスに後押しされるようにして、インタラクティブな表現空間であるクロマニヨンズのライブの素晴らしさが明らかにされる。「オーディエンスのために用意されたコーラス・パートがある」という点が、クロマニヨンズの名曲の数々の強みだ。

「楽しいなー! B面、聴いてくださーい!」と再びレコード盤を置くジェスチャーを見せて、今度は“ひらきっぱなし”、“7月4日の横田基地”、“ボンジュール ロマンマン”と勢い良く畳み掛けてゆく4人。『Oi! Um Bobo』はアナログ盤レコードで聴く喜びを念頭に置いた作風で、つまり20世紀の歴史的なロック名盤のように曲順の並び、流れもA面/B面でそれぞれ一段落する構成になっているわけだが、それがそのまま再現される。で、これがさらにどういうことなのかというと、クロマニヨンズが「最高のライブを想定して最高のレコードを作ってしまった」ということなのだ。あと、現役バリバリのロック・バンドの立場を考えれば「だってライブで新曲やりたいし」という理由もあるのだと思う。名曲を生み出す→アルバムを作る→ツアーに出る、というロック・バンドの基本的にして理想的なルーティン・ワークを、彼らはとんでもないほどの熱意と精度で完成させてしまったのだ(だから尚更、“流線型”というトドメの一撃の存在には驚かされた)。“いきもののかん”、“我が心のアナーキー”といった揺るぎない手掛かりだけをそのまま歌にしてしまったナンバーが続くさまは、まったく感動の一語に尽きる。
ザ・クロマニヨンズ @ 日比谷野外大音楽堂
本編終盤は“エイトビート”、“ギリギリガガンガン”、“あさくらさんしょ”、“紙飛行機”という必殺ナンバーの連打である。“エイトビート”でヒロトが自らの左胸を打ちながら歌う姿には身震いがしたし、“あさくらさんしょ”でマーシーは開脚ジャンプを何度も決めていた。そして、抱えたスネアでマーチング・ビートを打ち鳴らす桐田勝治を先頭に4人が行進してステージに再登場したアンコールでは、桐田が前線で足踏みしながらスネアを叩き続け、その脇でヒロトがバスドラムを打ち鳴らす、という編成で『Oi! Um Bobo』の最終ナンバー“南南西に進路をとれ”が披露された。その後、“土星にやさしく”、“タリホー”とプレイしてアンコールも終了。ヒロトは「またやろうなー! また絶対やろうなー! ロックンロール!」と声を上げ、マーシーは本編とアンコールの終わりに「またね」と告げた。何かをやり続けることは、決して退屈なことじゃない。やり方次第でそれは最高にエキサイティングな約束に変わる。

ザ・クロマニヨンズは今後、大阪と名古屋での公演を経て、山形・秋田・青森での振替公演によっていよいよ今回のツアーをフィニッシュする予定だ。(小池宏和)

セット・リスト
1:オートバイと皮ジャンパーとカレー
2:伝書鳩
3:あったかい
4:底なしブルー
5:キャデラック
6:多摩川ビール
7:グリセリン・クイーン
8:草原の輝き
9:流線型
10:飛び乗れ!!ボニー!!
11:ムーンベイビー
12:スピードとナイフ
13:ひらきっぱなし
14:7月4日の横田基地
15:ボンジュール ロマンマン
16:いきもののかん
17:我が心のアナーキー
18:エイトビート
19:ギリギリガガンガン
20:あさくらさんしょ
21:紙飛行機
EN-1:南南西に進路をとれ
EN-2:土星にやさしく
EN-3:タリホー
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