エレファントカシマシ @ TOKYO DOME CITY HALL

エレファントカシマシ @ TOKYO DOME CITY HALL
エレファントカシマシ @ TOKYO DOME CITY HALL - all pics by 岡田貴之all pics by 岡田貴之
 特に最近のエレカシのライブの爆発力と突き抜けっぷりは毎回毎回度肝を抜かれるばかりだが、それは決して「高いクオリティのレベルで安定している」という生易しいものではない。それこそ1本1本のライブごとに、地べたから己の歌と音と全存在をどーんと打ち上げて大気圏突破を実現するようなもので、そんなエネルギーとバイタリティを持ったアクトをいちいち展開するのは至難の業だ。が、今のエレカシはそれを真っ向からやってのけている――と言えば、そのすごさが少しは伝わるだろうか。そして、そんなエレカシの真髄が、4月から行われてきた『エレファントカシマシ CONCERT TOUR 2011 悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜』のツアー・ファイナルにしてTOKYO DOME CITY HALL(旧JCB HALL)2デイズの2日目となるこの日のアクトでも、誰もが驚愕するしかないスケールでもって提示されていた。“moonlight magic”を力強いアコギのストロークとともに宮本浩次が独唱し、そこにメンバーの音が加わって真っ白にスパークした瞬間から、トリプル・アンコール(!)の“待つ男”まで全28曲・2時間20分、熱血と情感とメロディのピークメーター振り切れっ放しの名演だった。

 ホールの空気まるごとバリバリと震わせるような赤黒くヘヴィな音像の“脱コミュニケーション”、この上なく晴れやかな風を満場のアリーナ&客席に吹かせてみせた“歩く男”、世界のカオスの中を生きる僕らの生命をハード・エッジなサウンドで鼓舞する“旅”……など、年明けの武道館やツアー全編を通して完全に血肉化されまくった『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』を本編19曲の中に盛り込んだセットリスト。その中に“悲しみの果て”が燦然と輝きを放っていたり、「それじゃ昔の曲を……昔っつっても10年前の『昔』、20年前の『昔』、30年前の『昔』っていろんな昔があるんですけど、10年ぐらい前の曲です」と披露した“定め”のソリッドなビートと《「生きて、行き抜いて果てるだけさ行け!」》のフレーズが胸に刺さりまくったり、シーケンスとともに雪崩れ込んだ“ジョニーの彷徨”ではレッチリかってくらいのの巨大なうねりを生み出していったり……と、1曲1曲から「ロック・バンドとしてこの曲をやる意味と理由」が滲み出してくるような、渾身のステージが展開されていく。

エレファントカシマシ @ TOKYO DOME CITY HALL
 両足をぐいと踏みしめストラトをかき鳴らしながら“いつか見た夢を”の途中で「いけえええええ!!」という咆哮とともに拳を突き上げ、曲終わりで「毎日、ドーンと生きていこうぜ! ドーーーン!」と喉も裂けよとばかりに絶叫する宮本の姿はいちいち胸突き上げる熱量に満ちていたし、宮本/石くん(石森敏行・G)/成ちゃん(高緑成治・B)/トミ(冨永義之・Dr)にサポート・メンバー=蔦谷好位置(Key)&ヒラマミキオ(G)を加えた6人編成の鉄壁のサウンドは「盤石」とか「円熟」とかいう響きとはまったく別種の力強さとダイナミズムと切れ味をもって3000人のオーディエンスの身体と心にぐいぐいと迫ってくる。そんな凄絶な演奏の合間に、「今回のツアー、みんなセンスいいです! お互い様だけど、僕らもたくさん元気もらってます! ありがとう!」と叫び上げ、「音楽を通じて、いろんなところでコンサートをやって、すごくいい時間を――って、今日もすごくいい時間なんですけど。音楽って素晴らしいですね!……もうちょっといいこと言おうとしたんですが(笑)」と素直な感謝の気持ちを整理のつかないままに伝える宮本。高らかな拍手喝采が巻き起こらないわけがない。

 ハンドマイクで力の限りに歌い上げる“普通の日々”のメロディの荘厳なまでの美しさ。「『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』では唯一の弾き語りの、散歩の歌です。東京の散歩、いいですよ、水道橋あたりとか……まあいいや(笑)」と披露した“夜の道”のハートフルなあったかさ。日々闘い続けるロック・アーティストとしての顔のみならず、市井の憂いと苦悩を狂おしいほどセンチメンタルなメロディに編み上げていく至上のメロディメイカーとしての側面も、この日の宮本は際立っていた。最後、“幸せよ、この指にとまれ”で再びホール全体を目映いサウンドスケープで満たした後、インタールード“朝”を挟んでインダストリアル・ヘヴィ・ロック“悪魔メフィスト”へ! ギターの重轟音すら切り裂いて響き渡る、狂気そのもののような宮本のシャウトに、思わず戦慄が走ったところで……本編終了。

エレファントカシマシ @ TOKYO DOME CITY HALL
 ここで終わってしまってもロック・アクトとしては十分すぎるのだが、ここからのエレカシはさらにとんでもない領域に突入する。エピック時代の名盤『東京の空』期のシングル曲“極楽大将生活賛歌”の爆裂快活ロックンロールで会場全体を踊らせたかと思えば、1st『エレファントカシマシ』から“習わぬ経を読む男”、さらに「渋い曲を」という宮本の言葉から“DJ in my life”(04年『風』収録)……と新旧ナンバーの乱れ打ち。結成30年、デビューからでも23年に及ぶキャリアを支えてきたであろうベテラン・ファンからは悲鳴のような歓喜の声が起こり、新たにファンになったであろう若いオーディエンスの顔には驚きと感激が広がっていく。“俺の道”の♪でゅでゅでゅでゅっでゅでゅー、の熱唱がどんなディストーション・サウンドよりも鋭利に鳴り響き、ロックンロール・アンセム“ファイティングマン”で大団円!……かと思いきや、黒シャツで再びステージに現れた宮本がレスポールを構えて「じゃ、珍しい曲を……」と奏で始めたのは、シングル『孤独な太陽』のカップリング曲“東京ジェラシィ”! 《いまさら 俺の人生 後悔は無し baby 勝利は 俺は全然怖くない》という永遠の闘争宣言でホールに充満した高揚感を、“俺たちの明日”の《さあ がんばろうぜ!》の熱唱ででっかい歓喜へと導き、“ガストロンジャー”の爆圧がオーディエンスの拳を高く突き上げさせる。まさかのトリプル・アンコール“待つ男”で膨大なエネルギーの最後の一滴まで使い果たすかのような咆哮を絞り出し、「サンキュー・エヴリバディ! また会おう!」と宮本。荒ぶる才気と尽きない闘争心だけが描き出せる、最高のロックンロール・スペクタクルだった。

 そして……この日の20時、毎年恒例となっている日比谷野音公演を9月17日に、そして大阪城野音公演を10月1日に開催することが発表された。今なお進化するエレカシ、その歩みは力強く加速する一方だ。(高橋智樹)


[SET LIST]
01.moonlight magic
02.脱コミュニケーション
03.悲しみの果て
04.彼女は買い物の帰り道
05.歩く男
06.定め
07.九月の雨
08.旅
09.いつか見た夢を
10.ハロー人生!!
11.珍奇男
12.ジョニーの彷徨
13.明日への記憶
14.普通の日々
15.赤き空よ!
16.夜の道
17.幸せよ、この指にとまれ
18.朝
19.悪魔メフィスト

EC1-1.極楽大将生活賛歌
EC1-2.習わぬ経を読む男
EC1-3.DJ in my life
EC1-4.俺の道
EC1-5.ファイティングマン

EC2-1.東京ジェラシィ
EC2-2.俺たちの明日
EC2-3.ガストロンジャー

EC3-1.待つ男
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