CHABOの恩返し YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市 @ Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

CHABOの恩返し YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市 @ Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
仲井戸“CHABO”麗市の還暦祝いに伴うリスペクト・アルバム『OK!!! C’MON CHABO!!!』のリリースや、その参加者が一同に会したトリビュート・ライブの豪華開催は記憶に新しいところだが、それらへの恩返しを目的としたライブ・シリーズとなるのがその名も『CHABOの恩返し』だ。トリビュート参加者を一組ずつ迎えたライブで、第1回にはさだまさよし(岡本定義 from COIL+山崎まさよし)、第2回にはトリビュート企画の音頭を取った寺岡呼人、第3回にはLeyonaが招かれていた。今回レポートをお届けする第4回のゲストは、YO-KINGである。扇子をひらひらとはためかせてステージに登場したCHABO、「あ、YO-KINGファンの皆さま、仲井戸麗市と申します。高いところからすみません。仲井戸ファンの皆さま、俺だよ!」と挨拶して、まずはそれぞれにパフォーマンスを務めるステージにYO-KINGを呼び込む。「YOと言えば!?」「KING!」と観客席との咄嗟のコール&レスポンスが見事に決まって、CHABOは姿を現したYO-KINGとハイタッチを交わすのであった。

CHABOの恩返し YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市 @ Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
「良かった、言ってくれて。先日『いいとも!』に出演したんですけど、竹中直人さんが友達紹介を受けたとき、YOと言えば!?ってやったらシーンとなっちゃって。電話に出るのが辛かったんですけど、今日は気持ちよくライブを始められます」。と弾き語りのパフォーマンスがスタートである。“バランス”そして“数字”と、ソロ・キャリアの中からYO-KINGならではの、肩肘張らない、しかし圧倒的なボーカルを見せつけるポジティブなバイブレーションを放ってゆく。決してお気楽極楽なわけではない、沸騰したエモーションが気化して一息に吹き抜けてしまうような、確かな「ポジティブ」を掴み取ってしまうYO-KINGの歌が、ブルース・ハープを交えて届けられる。「CHABOさんは、メールもくれるんですけど直筆の手紙もよくくれます。いいでしょ? 直筆なのに、絵文字が入ってるんです。ヨロシク!って言ってるようなCHABOさんの顔とか。さすが、早いですよね。イノベーターです。さっきは、後で会えるかもね、ってメールが来て。会うでしょ、そりゃあ。素敵な方です。恩返しと言いながら歌わされてますけど」。それにしても、ロック・シーンきっての新し物好きとして知られるYO-KINGをして「早い」と言わしめてしまうのは確かに凄い。

“いつも笑顔で”をプレイするときにハーモニカをセットするのを忘れ、「ハーモニカ、付けたからって安心しちゃ駄目なんですよ。この前、逆さまに付けちゃって、ピーッ!て高い音が出ちゃって」と慌てずに仕切り直す余裕ぶりだ。この後には、学校の教科書にも採用されたフォーク歌謡“若者たち”、そして『OK!!! C’MON CHABO!!!』のラストを締めくくっていたCHABOの“慕情”と名曲のカバーを立て続けに繰り出す。「皆さんご存知だと思うんですけど、僕のギター・テクニックからすると、難しいです。あのギターを弾こうとすると、凄くゆっくりになります。頑張れ俺の左手!」と言い訳しながらも見事な熱演。終盤は彼の憎めない不敵さがだだ漏れになる“たまたま”から「じゃあアンコールを」と底なしの愛情を振りまく“泣かないけどね”で美しく締めくくってくれた。

CHABOの恩返し YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市 @ Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
そして恩返しのホストであるCHABOが再び登場し、まずは柔らかいサーフ・サウンド風のギターを披露しながら“Holiday”を、そしてトラッド風の深いサウンドとともにブルージーにドライブする名曲“カビ”を聴かせてくれる。「なんかサーファーたちの中には、こんなときだから敢えて波に乗ろうよ、って言ってる人もいるらしくて。また独特の夏だけどね」と、そこから潮騒の効果音が心地よく響く中に“特別な夏”へと繋げてゆく。運命を正面から受け止め、謳歌する。そんなCHABO、60歳の姿が印象的だ。さきほどまでのYO-KINGのボーカリストとしての力量を手放しで絶賛していたかと思えば、「彼はあのとおりの男で、中学のときはバスケ部のキャプテンだったんだって。もう、ロッカーとしては失格だね! えせロッカー! あのタイプは勉強も出来ただろうし。そういうのに反発してギターを手に取るわけでしょう!? リハーサルのスタジオに自転車で来たんだけど、ロッカーが電動自転車はダメでしょう!」と、妙に生き生きと悪態を吐きまくっている。これでは恩返しというよりも公開処刑である。そんな語りから“サイクリング”へと持ち込んでしまうのが面白い。今度は自転車の鈴の音が聞こえる中での、風を感じるような豊かなプレイだ。

“慕情”をカバーした仕返しに、とYO-KINGの“夜”を大きな抑揚のギターのうねりの中で披露し、そして今年、吉田建/村上秀一とともに結成した新ユニット=3G(「グレートな3人」というつもりが「3人のジジイ」だと思われる、という嘆きも)のために作られた新曲“My Home Townの夜”も届けられる。ディープなトラッド/フォーク風のメロディで時代のリアルを憂いた、今のCHABOの歌だ。そして「YO-KINGは“若者たち”を歌っていたけど、いい選曲だよね。普遍的で」とこちらもタイムレスな、夏にずっぱまりの唱歌“ふるさと”をブギー風の大胆なロック・アレンジでプレイし、オーディエンスに歌詞を預ける。「俺の故郷の川は新宿の人の流れで、山は伊勢丹とか三越でした。夏が終わりに近づくと憂鬱でね。休みが明けても結局学校には行かないんだけど、紀伊国屋のところの、昔は楽器とかも置いていた帝都無線っていうお店が俺の隠れ家で、そこであるときこの歌が流れてきたんだよね」とビートルズの“Girl”のメロディを爪弾き始めるのだった。口ではコーラス部分だけを控え目に歌ったり、あの印象的なブレスを再現したりするだけなのだが、CHABOの主旋律をなぞるギターはまるで歌のように雄弁だ。終盤は“エピローグ”から“カルピス”でフィニッシュ。氷の浮かべられたカルピスがカランカラン、と奏でる効果音は、暑く苦しい夏と向き合うロッカー=CHABOが教える最高の戦い方であった。

CHABOの恩返し YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市 @ Mt. RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
それぞれのソロ・パフォーマンスを堪能したあとは、ピース・マークがプリントされたオフィシャルTシャツを揃って身につけたCHABOとYO-KINGが再登場してセッションへ。昨年、名古屋で行われたYO-KINGの企画『王様のアイディア』にCHABOと早川岳晴が参加したときに共作したと言う“I THANK YOU”からの演奏開始だ。ブルージーな曲調でひたすら互いに感謝し合うというユニークな曲で、曲名はサム&デイヴから頂戴したそうだ。今夏フジ・ロックにも登場して歓喜のパフォーマンスを見せてくれたメンフィス・ソウルの大御所=サム&デイヴのサム・ムーアは、かつてRCサクセションと共演したこともある。続けてこちらも共作曲“心に太陽”だ。ウェットで翳りのある曲調の6月の雨の歌を、ポジティブな歌詞で歌い上げるYO-KING。それにしても、この2人の共作曲としてケミストリーが爆発しまくっている。CHABOが送りつけてきたMDのデモを聴く手段に困ったというYO-KINGだが、「両A面シングルで出そうかっつってた」という話は冗談にしておくにはもったいない。そしてYO-KINGが意気込んで希望するCHABO曲“ティーンエイジャー”を歌い、またもやCHABOの夏仕様サーフ・サウンド・ギターが風を運んだ後は、忌野清志郎との最後の共作曲となった“毎日がブランニューデイ”。ラストにYO-KINGが「最高の恩返しでした! ありがとうございました!」と告げてKinki Kidsに提供した名ポップ・ナンバー“Hey!みんな元気かい?”がプレイされる。「世界中に、良い日がたくさんありますように!」とCHABOが語り、スタッフの名前も順にコールされて約3時間の恩返しは幕を閉じた。人生のありとあらゆる影と闇を踏み越えて突き進むYO-KINGの歌と、CHABOの今を美しく生きる夏のグッド・バイブレーションが混じり合って、大きなエネルギーをもたらしてくれる素晴らしいショウであった。

なお今後『CHABOの恩返し』は、9/16に今回と同じ東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで、9/18には大阪・umeda AKASOで、和田唱(TRICERATOPS)を招く形でシリーズが続く。更にその後は曽我部恵一が登場するということもCHABOの口から告知されていた。世代を越えてリスペクト精神と愛情が分かち合われるこのステージを、ぜひとも多くの方にチェックして頂きたい。(小池宏和)


YO-KING
1:バランス
2:数字
3:きれいな水
4:カラカラ
5:いつも笑顔で
6:若者たち
7:慕情
8:世界の元
9:たまたま
10:なかないけどね

仲井戸“CHABO”麗市
1:Holiday
2:カビ
3:特別な夏
4:サイクリング
5:夜
6:My Home Townの夜
7:ふるさと
8:Girl
9:エピローグ
10:カルピス

YO-KING with 仲井戸“CHABO”麗市
1:I THANK YOU
2:心に太陽
3:ティーンエイジャー
4:毎日がブランニューデイ
5:Hey!みんな元気かい?
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする