10-FEET @ 新木場スタジオコースト

ニュー・シングル『その向こうへ』のリリース・ツアー。ゲストはdustbox。あと22日の静岡・清水arkと24日&25日のファイナル・京都KBSホール(これ発表になった時、ちょっとびっくりした。イスありますよね、あそこ)が残っているのでネタバレできませんが、10-FEET側的に「ここまではOKです」と確認をとった範囲で、以下、箇条書きにしていきます。

・ゲストのdustbox、もうまさに「駆け抜ける」「走り抜ける」「最短距離を一直線」みたいな痛快なステージ。始まったあたりはちょっとまだ固かったフロアも、終わる頃にはもう、dustboxメインのライヴ、みたいなことになっていました。こういう音楽性のバンドとしてはちょっとめずらしい、SUGA(vo&g)のどこまでものびるきれいなハイトーンって強いなあ、即効性あるなあ、と、聴いていると改めて思う。

・で、10-FEET。始まって5,6曲あたりから終わるまで、もう、「スモーク焚かなくても照明がきれいに映えます」状態でした。フロアから湧き上がる湯気というか人間蒸気というか、それがもうハンパなくて、スタジオコーストの中、大変な高温多湿熱帯雨林気候。私、2Fで観ていたんですが、手すりを触ると手がべちゃっと濡れる、みたいな按配でした。小さなライヴハウスではよくあるけど、スタジオコーストの規模ってそうなってる画って、なかなか、すごいものがあった。

・セットリストは、詳しくは書かないでおきますが、ざっくり言うと「フェスか!」みたいな、超うれしい曲たちの連発。いわゆる代表曲が2/3から3/4くらい、そうじゃないのが1/3から1/4、くらいでしょうか。なので、母は泣いた曲も、いつかいつか土に還る曲も、さくら舞うさくらが咲く曲も、ほかのそれらに並ぶアンセムたちも、いっぱいやってくれました。あと、「へえー」って思ったのが、それらの曲のそれぞれの置き位置、つまり「この曲を何曲目にやるか」ということ。どれも気が効いてた。「あ、ここでくる?」とか、「そうか、ここか!」とか、観ながら何度も驚きました。
あ、『その向こうへ』のリリース・ツアーなので、もちろんその曲もやりました。これもまた、実にいいタイミングでやってくれた。

・前にも何度も書いたが、10-FEETって、アルバムを作るたびに、自分たちができることをやる、のではなく、自分たちがまだできていないことをやろうとする、まだ手が届いていないところまで手をのばそうとする、そういうバンドである。というか、そうすること自体が、新しいアルバムを作る動機付けになっているフシもある。
それ、精神的な意味でも、演奏とか楽器技術的な意味でもそうなので、アルバムを出してツアーを回ると、レコーディングでできたことに、ライヴの場における肉体性が追いつかなくて、最初のうちはすごく苦労している。が、ツアーが終わる頃には、ものにしている。という繰り返しで、ここまで進んできている。って、本人たちがどう言うかはわからないけど、少なくとも、そういうバンドだと僕は思っている。
っていうところでいうと、このツアーは、わりと余裕あるはずなのだ。シングルのリリース・ツアーだから、新しい曲は一部だし、大半はライヴでやり慣れたおなじみのアンセムたちだし、お客さんは超ウェルカムだし、「楽しい!」「発散!」みたいなムードに、ステージが包まれてもおかしくない。現に、フェスなんかでの10-FEETは、そういう「楽しい!」オーラ全開でステージに立っていること、よくある。
なのに、何か、そういうライヴじゃなかった。どの曲も、まるで初めてライヴでやるような、この1曲終わったら解散するような、あるいは実は全曲ライヴ・レコーディングしていて、終わったらそのままアルバムとしてリリースします、あとからの修正は一切なしです、ということが、裏で決まっているような。そんな、なんというか、せっぱつまった、鬼気迫る、てんぱったテンションで演奏され、歌われていた、どの曲も。

と感じたのは、僕だけかもしれません。フロアはとにかく、楽しく、幸せに、ハイテンションに、はじけまくってたし。で、それ、すごくいい光景だったし。ただ、僕にとっては、そういう尋常じゃない何かを感じたライヴだった。

で、正直、ちょっと心配になってしまった。
10-FEETって、自分たちの音楽を愛するファンに対して、とことん正面から向き合うし、あくまで期待に応えようとするし、その愛や期待から生まれる重圧みたいなものも、すべて背負おうとするバンドだ。とにかく、逃げない。「関係ない」とか言わない。むしろ、進んで引き受ける。その上で、「でも、音楽とかライヴとかっていう楽しい時間は夢のようなもんであって、現実とはまた別であって」というようなことにも、しない。あくまで現実で通そうとする。だから、TAKUMAは、歌詞でもMCでも、クサいことや恥ずかしいこともいっぱい言うけど、嘘と気休めは言わない。
という10-FEETの姿勢、正しいし、すばらしいし、だからすごく感動したライヴだったんだけど、あんまり正面から背負うと、いつか耐えられなくなるかもしれない。そうなると困るなあ、と思ったのでした。特に、今年はこういう年だったので、このバンドのそういう側面に拍車がかかっている、というところもあるのかもしれないが。

ただ、10-FEETが今、そういう状態になっているとしたら……「としたら」って、僕がそう感じているだけですが、でも、だとしたら、次のアルバム、もう不可避的に、相当すごいことになると思う。って、いつ出るのかとか、制作状況はどうなのかとか、全然知らないんですが。楽しみです。ちょっと怖さすら感じるくらい。

蛇足。全部書き終わって、今読み直してから気づいた。上で僕が「10-FEETってこういうバンドである」って書いたことって、このツアーのタイトルになっている最新シングルそのままなんですね。「その向こうへ」。いや、だから書いたわけじゃありません。前から何度も書いていることだし(これとか。http://ro69.jp/live/detail/27551 )。以上、言い訳でした。(兵庫慎司)
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