LIVE NEXUS presents 岡村ちゃんとかまってちゃん@新木場スタジオコースト

岡村靖幸と神聖かまってちゃんが相見えるという、「ちゃん」繋がりでサラッとタイトルが付けられている割にはやたらに濃いアーティスト性の衝突を受け止めさせる企画『LIVE NEXUS presents 岡村ちゃんとかまってちゃん』。筆者は、勝手にちょっと波乱含みなところにまで想像を膨らませてしまったりしたのだが、これは完全な取り越し苦労に終わった。両者ともに全力のパフォーマンスを見せてオーディエンスはそれを見事にサポートし、巨大な歓喜に包まれたまま終演を迎えるという、これ以上は望めないというぐらいの素晴らしい一夜であった。

先攻は神聖かまってちゃん。因縁のスタジオコースト(昨年末の同会場ライヴのレポートはこちら→http://ro69.jp/live/detail/61498)に立つ。波乱を心配してしまったのはまずそのときのことが脳裏から離れなかったからなのだけど、肩車されて鼻ティッシュ状態で登場したの子(Vo./G.)はご機嫌そのもの。「おまえらが主役だかんな! おまえらが盛り上がって、おれが盛り上がって、相乗効果でグワーッといこう! うるせー! 喋ってると曲が始まんねえ! ライヴ終わったら飲みに行こう!」と、いやに前向きかつ健全な姿勢でパフォーマンスに向かうのであった。の子にしては、の話だが。

サポート・ヴァイオリニストにビビさんこと柴由佳子を迎え、“ねこラジ”からスタート。monoのキーボードとビビさんに楽曲のメロディを預けることで、自由に暴れ回ることが出来るの子のフリーキーなヴォーカルとギターがいきなり凄い。そして早々に爆走モードの“あるてぃめっとレイザー!”で早くもフロアに飛び込むの子。「今年もがんばるんで!(mono)」「イエーッ!!(みさこ)」と“ロックンロールは鳴り止まないっ”に繋ぐ。「かまってちゃんのファンでも岡村さんのファンでも関係ねえ!」というの子の煽り文句を待たずして、フロアはばんばか波打っている。スタンドのマイクを、振り回したギターでみさこ方向に飛ばしてしまうの子だが、それでも健全なヒート・アップであることは表情からしっかり読み取れる。

「預金が9千円になっちゃって、バイトでもしようかなって」「そんなmonoくんの気持ちともリンクする曲です」と披露されたのは、ライヴ初公開の“2年”だ。脱臼グルーヴで軽やかにブルースを転がす、ハーモニーが映えるナンバー。の子は「おれ、この曲大っ嫌いだったんだけど、ライヴでやったら結構いいよ。ありがとうございます」と告げていた。一転して豪快なグルーヴで叩き付ける“天使じゃ地上じゃちっそく死”の後には「すげえな、フジロック1回目のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな熱気だ(の子)」「そんなもん越えてるよ!(オーディエンス)」「甘えんなー! まだだー!!(の子)」と熱いやり取りを交わし、“花ちゃんはリスかっ!”では「おまえらこれ歌え。ザクっていってるやつらは歌えよ。心がザクっていってるやつも」と更に強くオーディエンスを繋ぎ止めてみせる。

再びダイヴをかましたの子のフードに前線のファンが一本まるまるの羊羹をプレゼントしていたらしく、「こんなもん入れてんじゃねえよ!!」と爆笑に包まれる場内である。グッジョブだけど、なんだこのいいムード。そして“自分らしく”ではmonoがパッドを打ち鳴らすダンス・ビートの中、きっちりとオーディエンスの間の手も絡めて盛り上がる。これ、岡村ちゃんワールドともリンクするようなナイス選曲だ。そして終盤は“いかれたNEET”と“ぺんてる”の中毒性の高いリフレイン2連発に巻き込んでフィニッシュ。完璧だ。が、さすがの子、他の3人がステージを離れても、「この一人になれる時間がいいんだよ」と勝手に弾き語りを始めてしまう。マネージャー・劔氏が止めに入り、最後にはギターを取り上げられて3度目のダイヴを敢行、「また今度ね」とようやく笑顔で去って行った。やれやれ。

さて、後攻は岡村靖幸。幕の向こうでイントロが沸々と熱を帯び、岡村ちゃんのシルエットが浮かび上がって大歓声が上がる。フロア一面のハンド・クラップで迎え撃つオーディエンスである。眼鏡にスーツ姿でキレまくるステップと歌を披露する岡村ちゃん。復活後、一時は、喉の調子がいまいちなのかな、というときもあったけれど、今回はクソファンキーな節回しが冴える絶好調ぶりだ。やった。強力な同期サウンド+パーカッションに負けじとラップが繰り出される“ア・チ・チ・チ”。「あのねー、皆さんに伝えたいことがあります。あのねー、そんなことよりも重要なことが……Let’s go!!!!!」とブレイクを乗りこなして踊りまくり、ぶーしゃかスキャットも決めてくれる。

ファスト・ファンクが転げるほどに狂おしさが増す”いじわる“、ディープで湿度が高く官能的なグルーヴをこねくり回す“聖書(バイブル)”、至高の切なメロを伸びやかに聴かせる“カルアミルク”と、めくるめく岡村ちゃんワールドが展開。残念ながら演奏曲のすべてを明かすことは出来ないが、復活後に幾つかのステージをこなして余裕が出てきたからなのか、オーディエンスのシンガロングを抱き止めるような、より大きな包容力を感じさせる岡村ちゃんなのである。

頼れる相棒にして人気者、マニピュレーターの白石元久によるMCでは、「岡村ちゃんとかまってちゃん、かつてこんな組み合わせがあったでしょうか? アジアで、いや、環太平洋地域でもっとも振り幅の大きいツーマンへようこそ! かまってちゃんもリハから拝見してましたが、すごいですよ、リハからあのテンションのままで」という舞台裏話が披露される。そしてバンド・メンバーを紹介しつつ改めて岡村ちゃんを迎え入れ、ステージ本編はクライマックスへと向かっていった。

昨年9月にこのスタジオコーストで岡村ちゃんのライヴ現場復活を見届けたとき、多くの楽曲は音源のオリジナル・アレンジに近い形で披露されていて、『エチケット』リリース後であっただけにちょっと意外な気がしたのだけれど、あれはつまり復活を待ち侘びていたファンに対する姿勢の表れだったのではないかと思う。空白期間を埋め合わせる作業として、完全復活を遂げた岡村靖幸をしっかり見せるための方法として、オリジナルに近いアレンジが採用されていたのではないか。なのだがその後、強力な同期サウンドを交えてリアレンジされた楽曲が披露されるようになった。真に『エチケット』後の岡村ちゃんが姿を現した。これはどういうことか。もう容赦しない、ということなのだと思う。2010年代の岡村靖幸に必死でついて来い、ということなのだろう。

アンコールで再び幕が開くと、ステージに加わった2名の女性ダンサーと並んで阿修羅像の如き姿で立っていた岡村ちゃん。熱狂的なダンス・モードがさらに加速してゆく。最後には「自分しだいだぜ……わかってるでしょ!?」と熱い呼び掛けの言葉が胸に余韻を残す。復活のトピックにはいつまでもぶら下がっていられない、そんな心意気を受け止めさせる、下手すると本編よりも濃厚なアンコールのパフォーマンスであった。かまってちゃんの面々はバルコニーからステージを見つめていたのだが、終演直後にの子は柵を乗り越えようとして、またもや押さえつけられていた。

歌やダンスの技術だけではない、シャイで純情な、悶々としたリビドーの「Let’s go!!!!!」という爆発こそが重要な岡村ちゃん。それと同じように、際立ったメロディだけではない、社会の隅っこに、インターネットの向こう側に息づく青い闇を徹底的に曝け出すことがキモであるかまってちゃん。この両者の共演は世代もスタイルも越えて、自己表現の衝動の在処を浮き彫りにしていた。素晴らしい企画だった。同じようにウジウジと、或いは殺伐とした気分を抱えてしまうことが多い今日だけれど、少なくとも今の時代は、岡村ちゃんとかまってちゃんがいる時代なのだ。(小池宏和)
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