アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST

アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST - ANTHRAX pics by YUKI KUROYANAGIANTHRAX pics by YUKI KUROYANAGI
アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST
言わずと知れたスラッシュ・メタルBIG 4の一角:アンスラックス、そしてUSメタル/ヘヴィ・ロックのドリーム・チーム=ヘルイェーのカップリング・ツアー、ついに実現! 「ついに」というのは、このツアーが「当初は去年5月開催の予定が震災の影響で公演延期」→「改めて12月開催のはずがANTHRAXメンバーの家族の病気のためツアーそのものが中止」という紆余曲折を経て再度実現した、まさに「三度目の正直」的な公演だからであって、東名阪ツアー全4公演のうち3本目=渋谷O-EAST公演に集まったファンの間に渦巻く期待(とルサンチマン)は尋常でないものがあった。が、鼓膜どころか全身を震わせる重金属の軋みのようなヘルイェーのヘヴィ・サウンドが、そして“Earth On Hell”一発でリフと2バスとシャウトが弾け飛ぶメタル魔境へO-EAST丸ごと叩き込むアンスラックスのアンサンブルが、O-EASTのフロアを轟々と熱気渦巻く重轟音理想郷へとあっさり変えていった。

[※以下、セットリストはじめ内容に関する記載があります。ネタバレ回避希望の方は、ツアー最終日=4月6日・渋谷O-EAST公演終了後にご覧いただければ幸いです。]





■HELLYEAH(19:02開演)
01.Hellyeah
02.Matter Of Time
03.Stampede
04.Goddamn
05.Hell Of A Time
06.Nausea
07.You Wouldn’t Know
08.Alcohaulin' Ass
09.Cowboy Way

アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST - HELLYEAH pics by YOSHIKA HORITAHELLYEAH pics by YOSHIKA HORITA
アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST
どう考えても渋谷のライブハウスで鳴る音としてはMAXに違いない、ステージ上手のマーシャル6段積み(これはグレッグ・トリベット側)&下手の4段積み(トム・マックスウェル側)&中央のベース・アンプ4段積みのボブ・ジラの爆音を、最大キャパ1300人のライブハウスで浴びる至福! そして、その爆音を貫いてダイレクトにオーディエンスの心臓に届いてくる、ヴィニー・ポールのパワフルなドラム&チャド・グレイのささくれまくった咆哮! 全9曲のうち2nd『Stampede』(2010年)からは“Stampede”“Hell Of A Time”“Cowboy Way”の3曲、あとは1st『Hellyeah』(2007年)からの選曲、というセットリストで、何度もフロアに熱烈な「ヘルイェー!」コールを巻き起こしながら、45分ほどのアクトを暴走超特急のように駆け抜けていく。

“Matter Of Time”の途中で曲を止めたり「トキオ! You wanna sing with me!」と呼びかけたり「回れ!」とフロアに大きく円を描いてみせたりして、歌というよりはアジテーションそのもののようなヴォーカリゼーションをぶん回すチャド。鋭利なリフからボトルネック奏法のコード・スライドまで駆使して楽曲に無上の切れ味を与えるグレッグ。そのテンガロン・ハットかぶった見た目以上にサザン・ロック的なタフネスとドライブ感を醸し出すトム。ヴィニーとともに今やすっかりリズムの要となったボブの極太ベース・ライン。そして、曲間ごとにドラムセットに立ち上がっては会場全体の高揚感を全身で謳歌していたヴィニー……ヴィニー&ボブのダメージ・プラン組、チャド&グレッグのマッドヴェイン組、そして元ナッシングフェイスのトム、という猛者を擁するスーパーグループながら、個人技よりは5人トータルでの破壊力を追求し、黒に黒を塗り重ねるようなシビアな楽曲世界を展開した結果、漆黒の音が漆黒のまま目映く光り出すような化学変化を生み出してしまったヘルイェー。最後に披露した“Cowboy Way”の閃光の如き衝撃が、その稀代のヘヴィ・ロック・エクスプローラーぶりを証明していた。

■ANTHRAX(20:18開演)
01.Earth On Hell
02.Fight 'Em Til You Can't
03.Caught In A Mosh
04.Antisocial
05.The Devil You Know
06.Indians
07.In The End
08.Deathrider
09.Medusa
10.Among The Living
[Encore]
11.Efilnikufesin(N.F.L.)
12.Madhouse
13.Metal Thrashing Mad
14.I'm The Man
15.I Am The Law

アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST
アンスラックス×ヘルイェー @ 渋谷O-EAST
そして後攻:アンスラックス! 一昨年再々加入したばかりのジョーイが歌い上げる“Earth On Hell”の朗々たるロングトーンに象徴的だが、スラッシュ・メタル四天王の中でも、いやそれ以外のメタル・レジェンドと比べても、アンスラックスの「ハイパーでハイブリッドな妖術」ぶりは半端ないものがある。溌剌とステージを駆け回りながら驚愕必至のハイトーン・シャウトをキメるジョーイの佇まいといい、メタル・ギターの華であるソロをロブ・カッジアーノに譲りながらも鋼鉄のリフの切れ味と打撃力で聴く者を圧倒するスコット・イアンのリフ・マジシャンぶりといい、波動のようなツーバスさばきで空気を震わせながら変幻自在のビートを操るチャーリー・ベナンテのドラムといい、轟音を裂いて舞うロブの超絶ソロ・プレイといい、フランク・ベロの勇猛果敢なボトム支えっぷりといい、別に黒魔術や呪術をテーマにしているわけでなくても5つのパートのすべてにありったけの妖気がプログラミングされている。しかも、それを最終的に「誰もがシンガロング可能な歌」と「誰もが震撼必至のメタル・サウンドの輝度と強度」という形で提示することに成功してしまっているばかりか、2012年の今でもその重金属サウンドは古びるばかりか今なおその剛性を増しつつある。もうすぐデビュー30周年を迎えようとするバンドが、だ。

割れんばかりのシンガロングとクラウド・サーフの嵐を巻き起こした、昨年リリースの最新アルバム『Warship Music』の“Fight 'Em Til You Can't”。「ファッキン・ウォー・ダンス!」というジョーイのコールとともにフロアが大きな渦とカオスを描き出した“Indians”。怒濤のスラッシュ・メタル爆走ぶりでオーディエンス丸ごと狂喜乱舞させた1stアルバム『Fistful of Metal』(1984年!)の“Deathrider”……アンコールまで含め約1時間半、全曲が決定的瞬間のようなアクト。「サンキュー・フォー……ソー・ロング・ウェイティング・フォー・アス!」と「三度目の正直」を待ち詫びたファンに呼びかけていたのはスコット。いや、本当に待った甲斐があった。マーシャル6段積みのスコットのギターが冴えまくった本編最後の“Among The Living”、フロア中が拳を突き上げ「N.F.L.!」コールでメタル・レジェンドを迎撃した“Efilnikufesin(N.F.L.)”……すべての音が鳴り止んだ後、充実感に満ちた顔で一礼する5人の姿も、去り際に「明日まで待っててくれよ!」と呼びかけるスコットの声も、すべてが最高の場面だった――と心から言えるステージだった。その「明日」=ジャパン・ツアー最終公演:渋谷O-EAST公演2日目は当日券も若干販売されるようなので、詳しくは招聘元:クリエイティブマンの公式HPをご参照のほど。2度の延期&中止で二の足を踏んでいる方も、ぜひとも観ておいたほうがいい。(高橋智樹)
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