ドリーム・シアター @ SHIBUYA-AX

ドリーム・シアター @ SHIBUYA-AX
ドリーム・シアター @ SHIBUYA-AX
「また戻ってこれて嬉しいよ! 2年前にフェスで来た(2010年のサマーソニック出演)けど、今夜は俺たちのショウだ!」とジェイムズ・ラブリエ(Vo)が序盤のMCで呼びかける頃には、SHIBUYA-AXのフロアにはとりわけ男性率高めのオーディエンスの歓喜の雄叫びが轟々と渦巻く熱狂空間に!……昨年リリースした新作『ア・ドラマティック・ターン・オブ・イベンツ』を引っ提げ、USプログレッシブ・メタルの雄=ドリーム・シアター、『A DRAMATIC TOURS OF EVENTS JAPAN』と銘打った待望のジャパン・ツアーが実現! 4月23日:大阪オリックス劇場(旧・大阪厚生年金会館)/26日:福岡市民会館/28日:愛知芸術劇場/30日:横浜アリーナ、と全席指定ホール&アリーナ公演の同ジャパン・ツアーにおいて唯一、1Fオール・スタンディング形式(+2F指定)で行われたこの追加公演:SHIBUYA-AX公演は、それこそニトログリセリンで描いた細密画のようなドリームシアター・ワールドの構築美と爆発力をキャパ1500のライブハウスで体感してしまうという、まさに奇跡的な音楽体験。そして、その圧倒的なサウンドと、「単独来日4年ぶり(地方公演に至っては6年ぶり)!」というオーディエンスの熱気とが、あたかもお互いを高め合うようにして歓喜の絶頂へと至っていく、どこまでも壮絶かつ祝祭的なアクトだった。曲名も含めて具体的に書いていきたい。

今回のジャパン・ツアー全公演でサポート・アクトを務めるのは、超絶アコースティック・ギタリストとして名を馳せる異才=アンディ・マッキー。ゆっくり歩いてステージ中央に歩いてきてアコギを構え、アンディの手が動いた……と思った瞬間、あり得ないパーカッション・サウンドが彼のギターから鳴り響く。よく「アコギのボディをパーカッションのように叩きながら弾く」というアコギ・テクニシャンは他にもいるが、違う。完全にコンガの音が、どう見ても普通のアコギから鳴っている。で、小気味よくボディの、人間にたとえると肩にあたる部分でカンコンとリズムを刻みながら、緻密なタッピングを駆使したり、ハーモニクス奏法でコードを響かせたりというテクニックを、息をするように自然に混ぜ込んでみせる。誰もが舌を巻くその技術が、いつしか自然にAX一丸のクラップを巻き起こしていく……というプレイ風景から一転、「どもありがと! こんばんは。私はアンディ・マッキーです。日本語少しわかります」という朴訥としたMCが、さらに会場の温度を上げていく。そして、アコギともう1本ステージにセットされていた特殊なハープ・ギター(6本の弦が張ってあるネックと別に、ベース弦を張ったハープ部分のパーツがにょきっと生えている)の、見た目にはガトリング砲のような巨大なボディを、アンディが抱えた瞬間、思わず「おおーっ」と歓声が湧く。そして、アンディの指が超低音からたおやかな旋律まで次々に弾き出してAXの熱気の中へ解き放っていく。アコースティック・ギターに眠る可能性を極限まで掘り下げていった結果、楽曲とアンサンブルをギター1本のプレイアビリティの中に収めたどころか、ひとつの音宇宙をそこに作ってしまった……とでも言いたくなるくらいの、テクニックとか技法とかの次元を越えた名演だった。

アンディが去った後、転換作業でステージを覆っていた黒幕が下ろされ、ジョン・ペトルーシのギター・アンプが、ジョーダン・ルーデスのキーボードが、さらにリズムの王宮の如き新加入:マイク・マンジーニのドラム・セット(というより巨大なブース)が現れた瞬間、普通のライブならメンバー登場時でもおかしくないくらいの轟々たる歓声が巻き起こる。ちょうどサマソニ来日直後の時期に、世界トップレベルのドラム・アイコンにしてオリジナル・ドラマー=マイク・ポートノイが脱退、新たに「世界最速の男」(1分間に1247連打!)ことマイク・マンジーニを迎えての初めてのアルバム『ア・ドラマティック・ターン・オブ・イベンツ』リリース、さらに新ラインナップで初めての来日……ということで、いやがおうにも新ドラマーに注目が集まるところではあるが、櫓状に組まれた骨組の頭上にまでシンバルやキャノンタムが所狭しと組まれた4バス(!)セットの、そこにあるだけで強烈なエネルギーを発しているような無骨な佇まいだけでも、その凄味を誰もが感じ取ったに違いない。

そして19:45、いよいよドリーム・シアターの登場! ジョン・ペトルーシの7弦ギター&ジョン・マイアングの6弦ベースが響き合う熾烈なサウンドが、マイク・マンジーニの強靭なビートとともに巨大なうねりを巻き起こし……AXはいきなり10分越えの“ブリッジズ・イン・ザ・スカイ”の世界へと突入していく。ジェイムズ・ラブリエが不死鳥のようなメロディを歌い上げる壮大なサビで会場丸ごと高らかなシンガロングへ導いたかと思うと、ジョン・ペトルーシのギター・ソロとジョーダン・ルーデスのアクロバチックな鍵盤フレーズが競い合うように駆け出すインスト・パートへ雪崩れ込み、マイアング&マンジーニのリズム隊がBPM/拍子/アンサンブルの色合いを目まぐるしく変え、聴く者を次々と未知の冒険世界のさらにその奥へと誘い込む! “6:00”“ビルド・ミー・アップ、ブレイク・ミー・ダウン”とロック・スペクタクルのカタマリのような楽曲を畳み掛けていくその手腕には、一点の曇りも危うさもない。89年のデビュー当初には今や死語となった「ネオ・プログレ」にカテゴライズされ、メタル・シーンでもプログレ・シーンでも異端視されていたのはもはや遥か遠い昔のこと。コンセプチュアルな構築性を追求するプログレッシブ・ロックの世界観と、常に最強のサウンドと最も鋭利に研ぎ澄まされたテクニックを自らに課すヘヴィ・メタルの美学を両手に抱え続けた彼らが、幾度ものメンバー・チェンジを経て2012年の「今」に鳴らす音は、プログレ/メタルの領域を越えロック・シーン全体を震撼させる異形の威厳と存在感を放つに至っている。

ドリーム・シアター @ SHIBUYA-AX
ドリーム・シアター @ SHIBUYA-AX
ファンタジックなシンセのアルペジオとピアノが響き合うバラード調のイントロから、目の眩むようなポジティビティを噴き上げるクライマックスへと到達する“サラウンデッド”(92年『イメージズ・アンド・ワーズ』)。ヘヴィで熾烈なサウンドと競い合うようにジェイムズがブルータルな歌い回しを披露するAメロ(?)から、めくるめくクラシカルな音像が織り上げられる“ザ・ルート・オブ・イーヴル”(05年『オクタヴァリウム』)……“アウトクライ”“オン・ザ・バックス・オヴ・エンジェルズ”など最新作『ア・ドラマティック・ターン・オブ・イベンツ』の楽曲のみならず、新旧楽曲を織り交ぜながら至高のセットリストを組み立てていく5人。そして、どの曲でもイントロが鳴った瞬間にうおおおおおおっと怒号にも似た歓声を上げていくオーディエンス。マンジーニの爆裂ドラム・ソロや、曲中でここぞとばかりに炸裂するタム回しに熱を増すファンの表情が、新ドラマーへの歓迎と承認の何よりのメッセージだろう。

ヘヴィ&ダイナミックなサウンドやミステリアスな展開を前面に出して語られることの多いドリーム・シアターではあるし、現に“ウォー・インサイド・マイ・ヘッド”はじめそういう曲も多いのだが、この日のステージで印象的だったのは、中盤にジョーダンのピアノをフィーチャーしたアコースティック・セット的な場面で優しく歌い上げた“ウェイト・フォー・スリープ”や、本編終盤で神々しいほどのハイトーン・ヴォイスを天高く突き上げた“ザ・スピリット・キャリーズ・オン”で聴かせたジェイムズのスピリチュアルな側面であり、「燃える球体(太陽)の周りを地球が回っていることには意味があるはずだ」と人間と宇宙の存在意義を想う哲学性だ。どこまでも真摯なドリーム・シアターとしてのマインドと、フロアを大きなハンドウェーブで包み込むほどの音楽としての純度の高さが、最高の形で提示されたステージだった。割れんばかりのアンコールの声に応えて、この日最後に演奏したのは“アズ・アイ・アム”。5人のヘヴィメタリックな轟音の中、この最高の瞬間の終わりを惜しむように炸裂する「オイ! オイ!」の大歓声とシンガロング! 今なおその表現世界を深化させ更新し続けるドリーム・シアターが次に訪れるのは26日・福岡市民会館。当日券も若干出るようなので詳しくは招聘元:クリエイティブマンのサイトをご参照のこと。そしてジャパン・ツアーのファイナルは30日・横浜アリーナ!(高橋智樹)

[INTRO]
1. BRIDGES IN THE SKY
2. 6:00
3. BUILD ME UP, BREAK ME DOWN
4. SURROUNDED
5. THE ROOT OF ALL EVIL
6. DRUM SOLO
7. A FORTUNE IN LIES
8. OUTCRY
9. WAIT FOR SLEEP (acoustic)
10. FAR FROM HEAVEN (acoustic)
11. ON THE BACKS OF ANGELS
12. WAR INSIDE MY HEAD
13. THE TEST THAT STUMPED THEM ALL
14. THE SPIRIT CARRIES ON
15. BREAKING ALL ILLUSIONS
Encore
16. AS I AM
[OUTRO]
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