JAPAN CIRCUIT WEST 『山崎死闘編』 @ なんばHatch

1年ぶりの開催となった大阪・なんばHatchでのJAPAN CIRCUIT WEST「山崎死闘編」。今年の出演アーティストは、宇宙まお、The Mirraz、plenty、andymori、BIGMAMAの5組だ。もともとはCOUNTDOWN JAPAN WESTが開催できなかったことをきっかけに2010年に生まれたこのイベントだが、一昨年、昨年と開催を重ねるごとに、COUNTDOWN JAPANとは違う独自のグルーヴが強く出始めた。記念すべき50回目のJAPAN CIRCUIT。ロックの楽しさ、かっこよさ、力強さ、美しさ、すべてがぎゅっと凝縮された、ライヴハウス・イベントならではの濃さを存分に発揮して、今年も腕に覚えのあるアクトが熱い一夜を繰り広げた。

開演時間の午後5時。なんばHatchのステージに、本イベントのプロデューサー、「ROCKIN’ON JAPAN」編集長の山崎洋一郎が登場する。「今回のラインナップすごいでしょ? 最高でしょ? 思った通りのメンツが揃いました」とアーティストのラインナップに絶対の自信を覗かせたあと、出演順を発表。ひとつ名前が読み上げられるごとに歓声と拍手が起きる。そして、最初のアクトとして「素晴らしいロック・シンガー」という言葉とともに呼び込んだのは宇宙まお。彼女にとってこの「山崎死闘編」は、大阪での初ライヴとなる。

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宇宙まお

暗転したステージにスタンバイしたバンドがイントロを奏で始めると、舞台袖からガッツポーズをしながら現われた宇宙まお。本イベントのオフィシャルTシャツを着込んでいる。これほどの大舞台は初めてで、どこか緊張の面持ちながら、力いっぱい最初の楽曲“穴だらけ”を歌い上げる。気取らない彼女の魅力がいきなり炸裂だ。自然とフロアから拍手が巻き起こり、「まおちゃーん!」と名前を呼ぶ声も聞こえる。続いてトレードマークの赤いストラトキャスターを構える。そして鳴らされたのは、デビューミニアルバムの中でもとりわけ爽やかなサウンドが印象的なオープニング・ナンバー“バイバイ”だ。笑顔でギターをかき鳴らす宇宙まお、観ているとこちらも自然と笑顔になっていく。

「大阪に来られてとってもうれしいです!」という初々しいMCに続いて、今度はアコースティックギターに持ち替えて歌う“みじめちゃん”へ。カントリー調の軽やかなリズムが、ホール全体の雰囲気をカラフルに染めていく。宇宙まおのライヴは、ものすごく淡々としていながら、音楽を鳴らす喜びにあふれているのがいい。そこに対する確信が、彼女の堂々としたパフォーマンスにつながっている。一転、“満月の夜”では青白いライトに照らされながらスケールの大きな世界観を描き出し、かと思えば「どうすかみなさん? 宇宙まお、知ってました?」と飄々としたMCで和ませる。

アルバム未収録の新曲“誰も知らない国へ”のドライヴするギターサウンドで盛り上がりのピークを迎えると、最後に演奏されたのは“ロックの神様”。いつも以上の勢いとスケール感を感じさせるパフォーマンスは、イベントの頭からいきなり鮮烈な印象を残すものだった。

JAPAN CIRCUIT WEST 『山崎死闘編』 @ なんばHatch
The Mirraz

転換時のサウンドチェックの段階から歓声が起きていたThe Mirraz。山崎洋一郎に向けてか、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』で歌われた“翼の折れたエンジェル”の替え歌(《山崎アウトエンジェル~》ってやつ)をバックに登場すると、“check it out! check it out! check it out! check it out!”でいきなりアクセルを踏み込む。「どうもミイラズでーす」。興奮渦巻くフロアを前に畠山承平(G・Vo)がつぶやく。

この日のセットリストは代表曲、キラーチューンばかりを集めたような超強力なもの。“ふぁっきゅー”“シスター”とミイラズ印の機関銃ヴォーカル・ソングを連打すると、畠山は「楽しいの?」と客席にドSな言葉を投げる。楽しいに決まってるだろう。“朝、目が覚めたら”を挟んで“僕はスーパーマン”“CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい”を畳み掛ける。ホール全体が揺れるような、ものすごい盛り上がり。クライマックスしかないような内容のライヴに、なんばHatchは熱狂のるつぼと化す。

「今日は山崎死闘編ということで、山崎さんに『何と闘ってるんですか?』って聞いたら『何も闘ってないんだよー』って言われました」と楽屋での山崎との会話を暴露して笑いを取りながら、「音楽業界に闘いを挑む、そういうつもりでやってる」とシリアスな本音をちらり。どこかブルージーなリフが特徴的な新曲“気持ち悪りぃ”から“i want u”へ。最新アルバム『言いたいことはなくなった』に収録されたポップ・ロックンロール・ナンバー。自然に口ずさんでしまう軽やかさは今の彼らならではだ。関口塁(Dr)の叩きだすハネるリズムが再び気分を上げていく。そしてここからは最新版The Mirrazの真骨頂。“ラストナンバー”と“観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは”とシングル曲を続けざまに披露する。“観覧車~”のサビで明るいライトが客席を照らし出すと、そこには歓喜の笑顔がいくつも躍っていた。その勢いのまま“イフタム!ヤー!シムシム!”でさらにギアを上げ、一気にフィニッシュ。息をもつかせぬ展開で、あっという間に終わってしまった。最高!

JAPAN CIRCUIT WEST 『山崎死闘編』 @ なんばHatch
plenty

あれ、plentyってこんなバンドだったっけ?という新鮮な驚きに満ちたステージを、彼らはやってみせた。個人的に久しぶりに観たというのもあるのだが、とにかく、サポートドラマーの中畑大樹を含め、バンドのアンサンブルがタイトで熱い。昨年現在の体制に移行してからのライヴと較べても、この日のplentyはそのポテンシャルを最大限に発揮していたといえるのではないか。

1曲目“待ち合わせの途中”から“砂のよう”に雪崩れ込むと、彼らのロックが本来持っているふつふつと身体の内側で沸き上がるようなエモーションが一気に流れ出す。触ると切れそうな感情が、音の鎧をまとってバシバシと身体にぶつかってくるような、ドラマティックでタフなパフォーマンスだ。ギターのストロークひとつ、江沼の言葉ひとつに、強い力が宿っている。江沼郁弥(Vo・G)の歌がどっしりとした重みを感じさせるものになっているのと同時に、中畑のドラムと新田紀彰(B)がそれを分厚いグルーヴでめいっぱい後押しする。

“枠”で目の前の闇を力づくでこじ開けるような演奏を見せたあと、江沼が口を開く。「ロックの日……別にロックにこだわりはないんですけど……いや、好きですよ、ロックも。……次行きます」。江沼の朴訥としたMCに、くすくすと笑いが起こる。しかし、あえて言うなら、この日のplentyはどこまでも「ロックバンド」だったと思う。江沼がそれを望むかどうかは分からないが、音のもつ力を最大限に引き出し、そこにあらゆるエモーションを渦巻かせる、圧巻のパフォーマンスだった。“スローモーションピクチャー”、“あいという”。か細い声にもうなだれるように弾くギターにも、繊細なアルペジオにも光を放つようなパワフルなストロークにも、明確な意志と命の脈動を感じさせる。

「皆さんはありますか、失いたくないものが。僕にはありません」。そんな言葉とともに歌われた“拝啓。皆さま”。感情の波をそのまま音にしたかのようだ。オーディエンスはその音に込められたひとつひとつの思いを噛み締めるように、じっと耳を澄まし、目を凝らしている。息苦しくなりそうなほど高ぶったところで、最後の曲“蒼き日々”。果てしないスケールを感じさせたplentyのライヴは大きな余韻とともに幕を閉じた。

JAPAN CIRCUIT WEST 『山崎死闘編』 @ なんばHatch
andymori

おなじみのSE“The End Of The World”とともにステージに姿を現した小山田壮平(G・Vo)、藤原寛(B)、岡山健二(Dr)の3人。“andyとrock”でロックとの出会いを叫んでキックオフだ。続いて最新作の表題曲“光”、そして“革命”へ。堰を切ったように溢れだす言葉。ここ2枚のアルバムを象徴する2曲が、今のandymoriの表現の幅広さと奥深さを描き出す。岡山のスネアがひとつ叩かれるたびに、ギターのコードがひとつかき鳴らされるたびに、目の前の景色がどんどん色づいて意味をもっていく。そんなロックンロールへの「思い」が、andymoriを走らせる。

最初のMCでは小山田がなぜかサッカー日本代表の話を切り出す。しかも今の代表の話かと思いきや、話は「ドーハの悲劇」の方向へ。「死闘ですよ、ほんと」。1993年の話を持ちだしたあと、“1984”へ。イントロが鳴った瞬間に歓声が起き、多くの腕が揺れる。サビに合わせて手拍子をするお客さんを照らすオレンジの光が美しい。“ベースマン”では藤原がひときわ輝く。《愛してるなんて まさか言わないぜ 風と共に行くだけさ》というフレーズを、藤原を見ながら歌う小山田。そこから《バンドを組んでいるんだ》と歌う“ユートピア”への流れには、小山田のandymoriに対する想いが透けて見えるようだった。

“FOLLOW ME”と“スーパーマンになりたい”で加速すると、andymoriというバンドの今を象徴する名曲“シンガー”へ。《君が歌ってよ》という小山田の願いに、なんばHatchは「ラララ」の合唱で応える。無数の手が揺れる光景に、ロックの主役は誰なのか、改めて教えられる気がした。“Sunrise&Sunset”の軽やかなリズム、そして“クラブナイト”のアッパーな4つ打ち。岡山のドラムがクライマックスへと誘う。

小山田はライヴ中、大阪でクラブが次々と風営法違反で摘発されていることを挙げ、「絶対反対」と言い切った。音楽を、ロックンロールを、こうしてひとつの場所に集まって鳴らすことの素晴らしさとは何なのか。最後の“投げKISSをあげるよ”まで、andymoriのライヴの主役はこの「場」であり、ここに集まった「人」だった。

JAPAN CIRCUIT WEST 『山崎死闘編』 @ なんばHatch
BIGMAMA

熱演が続いてきた「山崎死闘編」、最後を飾るのはBIGMAMA! “beautiful lie, beautiful smile”で高らかにショウの始まりを告げると、「JAPAN CIRCUITへようこそ! 大阪の皆さん、BIGMAMAです」という口上から“#DIV/0”を投下する。いきなりのクライマックスに、フロアは即沸騰。続いてなだれ込んだ“秘密”では、金井政人(Vo・G)と東出真緒(Strings)のコーラスワークが、アグレッシヴなサウンドに奥行きを与える。「今日が終わるとライヴはしばらくありません。全力出し切って帰ろうと思います」という金井の力強い宣言に大歓声が巻き起こる。その言葉に嘘はなかった。“荒狂曲”シンセカイ””でハンドクラップの大波を起こすと、“Paper-craft”では雷のようなリアド偉武(Dr)のドラムと東出のバイオリンがさらに心を掻き立てる。弦楽器の透き通るような音色と、ギターロックのエネルギーに満ちた音像。BIGMAMAの本質が、どんどんあらわになっていく。“ダイヤモンドリング”では光が降り注ぐような力強い肯定性を、“週末思想”では生きにくいこの世の中に対する凛とした決意を、これ以上ないほどダイレクトに、受け手へと届けていく。

「JAPAN CIRCUIT、50回目だそうですね。めでたいですね」とオーディエンスに拍手を促したあと、「何でも続けていくのは大変」だと、バンドの歩みにその歴史を重ね合わせる。周りのバンドがその歩みを止めてしまうなかで自分たちが続けてこられたのは「僕らがいちばん音楽好きだから」だと、プライドと揺るぎない音楽への愛情を覗かせる金井。前を向いて歩いて行くために過去に縛られる必要はないと、奏でられたのは“I Don’t Need a Time Machine”。アンセミックな信念の歌に、ショウは最高潮を迎える。そこで金井が「ラスト1曲です」と告げると、当然フロア中から「えーっ!」の声。それだけ濃密で眩い時間だったということだろう。本編最後に鳴らされたのは、「約束の歌」である“until the blouse is buttoned up”。いくつものタオルが揺れ、「オーオオー」の大合唱がホールを包む。たくましく己の道を行くBIGMAMAの想いに、なんばHatchに集まったすべての人の想いが重なって巨大なカタルシスを生み出す。一歩一歩前進するような力強いアンセム。金井の「今日いちばんデカい声聞かせてください!」という要求に、喉も裂けよとばかりに声を上げるオーディエンス。音楽の向こう側で未来が開けていくような、眩い光景のうちに、バンドはステージを去っていった。

しかし、それだけでは当然収まらない。いつまで経っても鳴り止まない拍手と合唱に応えて、ステージに帰ってきた5人。スタッフに、他の出演者に、そして集まった観客に感謝の言葉を述べたあと、最後の最後に鳴らされたのは“the cookie crumbles”。初期からの彼らの代表曲は、このイベントのラストを飾るのに相応しい祝祭感と高揚感に満ちていた。

50回目のJAPAN CIRCUIT、3回目の大阪開催は、絶頂のうちにその幕を閉じた。次もこの場所ですばらしいロックに会えることを、楽しみに待ちたい。(小川智宏)
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