ザ・クロマニヨンズ @ 新木場STUDIO COAST

ザ・クロマニヨンズ @ 新木場STUDIO COAST - All pics by 柴田恵理All pics by 柴田恵理
「ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012」。今年1月18日にリリースした6thアルバム『ACE ROCKER』を引っ提げ、2月9日の鹿児島CAPARVOホール公演から足掛け4ヶ月強を かけて行ってきたこのツアーも、今日の新木場スタジオコースト公演でセミ・ファイナルを迎える。ちなみに今日はツアー56本目。他のバンドであればツアーふたつ分と言っても可笑しくない驚きの数字だが、このクロマニヨンズに至ってはなんら驚くことではない。毎年コンスタントにアルバムを発表し、そのたびに地方の小さなライブハウスを含む長期スケジュールのツアーをこなしている彼ら。何があっても転がり続けるロックンロールの精神そのもので、全国にくまなく音を届けていくことこそが彼らの日常なのだ。まずは、その姿勢に最大の賛辞を贈りたい。
ザ・クロマニヨンズ @ 新木場STUDIO COAST
開演時刻の18時ジャスト。彼らのライブではお馴染みの前説のお兄さんが登場すると、早くもオイ・コールと怒号のような歓声が沸き起こる。そして「俺たちのロックンロール、俺たちのエースロッカーの登場だ!」というお兄さんの煽り文句に続いて、ステージを覆っていたオレンジの幕がオープン。アルバム『ACE ROCKER』のジャケットにも登場している、角と頭 部の特大オブジェが後方にデーンと構えたステージが露になる。さらにその背後では黒幕とともに「ACE ROCKER」のロゴをかたどった電飾がせり上がり、アルバムのアートワークを 再現。トライバルな太鼓のSEに乗って割れんばかりの歓声が会場全体を覆い尽くしたところで、揃いのツアーTシャツを着た4人がステージに現れた。

「ロックンロール!」というヒロトの一声を合図に突入したオープニング・チューンは、“他には何も”。ハイ・スピードで疾走するソリッドなサウンドが爆音で炸裂し、フロアではのっけからダイブが勃発する。《やらずにいられない 事をやるだけなんだ/ただ それだけ》というシンプルながら圧倒的な力を持った歌が、早くも興奮を抑えきれないといった様相で拳を振り上げるオーディエンスの闘志に更なるガソリンを注いでいく。その後も、桐田が打ち鳴らすジャングルビートに乗って他のメンバー3人がダンスするパフォーマンスで場内を沸かせた“欲望ジャック”、軽快な四つ打ちでイントロからフロアを激震させた“ゴー ゲバ ゴー”など、最新アルバムの収録曲をノンストップで 連打。ヒロトのボーカルとマーシーのコーラスが美しく絡み合った“シャイニング”、《お星様 お星様/逃げません 僕はもう》という決意の歌が届けられた“ハル”など、聴き手の心にじんわりと沁みわたるような楽曲も次々と放たれていく。さらにマーシーが奏でるギターラインが青白い光を放って場内を駆け巡った“ライオンとサンシャイン”をブチかまし、「ACE ROCKER」というとん でもなく強気なタイトルを冠したアルバムの重厚な世界観を堂々と見せつけていくのだった。
ザ・クロマニヨンズ @ 新木場STUDIO COAST
「みんな、胸に『東京』って書いたステッカーを貼っといてください。そうじゃないとココが東京だってわからないから。もう東京に来たんだな。やあ東京!」。そう告げたヒロトがTシャツを脱ぎ捨て贅肉の一切ない上半身を剥き出しにしたところで、ライブは中盤戦へ。“ワハハ”を皮切りに、ここからは過去のアルバムからの楽曲が次々と披露されていく。“連結器よ永遠に”では股間を押さえたりマイクをしごいたり腰を揺らしてみせたり、“伝書鳩”では物哀しいブルースハープの音色を吹き鳴らしたり、かと思えばMCでは「東京は何があったっけな? スカイツリー か。俺、今からでも江戸タワーに名前を変えた方がいいと思うんだよね。石原慎太郎さんに会ったら言っておいてください!」と言ってみたり……と、間髪入れずにパフォーマンスを繰り出してオーディエンスの目を釘付けにしていくヒロト。一方で、ビリビリと場内を震わせるスリリングな音塊が火を噴いた“自転車リンリンリン”、うねるベースラインと清冽なギター・リフが焦燥感たっぷりに疾走した“グリセリン・クイーン"など、ブレイヤー3人による骨太なサウンドも見逃せない。なかでも腹にズシンと響きまくる桐田のドラミングは、限りなくタイトなアンサンブルに破格のダイナミズムを与える原動力として大きな存在感を放っているように感じた。フロア上に吊るされた照明がビカビカと点滅する中、弾けるビートがオーディエンスの腰を無尽蔵に揺らした“底なしブルー”の爆発力は、特にすごかった。

「このまんま最後まで行くぞ、ロックンロールだ!」のシャウトで終盤に突入すると、“ひらきっぱなし”“紙飛行機”“エイトビート”などライブ定番曲を連打。本編ラストは最新アルバムのシングル2曲“雷雨決行”“ナンバーワン野郎!”をブチかまして完全燃焼! アンコールでは、Tシャツを「履いた」ヒロト(腕を通す袖口から足を出 して腰にTシャツを巻きつけている格好です)を筆頭に、桐田以外は上半身裸になった4人が再登場。フロア上の巨大なミラーボールが回り出し、ステージ後方の黒幕が開いて露になった白壁にイエロー・ピンク・ブルーのカラフルな照明が映し出される中、まずは最新アルバムのラスト・ナンバー“メキシコの星”が陽気に奏でられる。そして再び黒幕が閉じられると、「新しいヤツをやります」として5月23日にリリースされたばかりの最新シングル“突撃ロック”へ。さらに“ギリギリガガンガン”“弾丸ロック”の必殺チューンの連打で最後の絶頂を極めたところで、全24曲を僅か90分で駆け抜けた疾風怒濤のステージは幕を閉じた。
ザ・クロマニヨンズ @ 新木場STUDIO COAST
アンコールの最後、ヒロトは「ありがとう、また絶対やろうなー! ロッケンロール!」叫び、マーシーは「またねー」と告げてステージを去った。そして、野太い歓声と爆音の拍手がいつまでも鳴り止まない場内。ロックンロールの名の下に、強い信頼関係で結ばれたバンドとオーディエンスが新たな約束を交わした瞬間だった。6月30日の沖縄ナムラホール公演をもって、このツアーは終了。しかしそう遠くない未来に、彼らは必ずや新たな曲を携えて我々の元に戻ってきてくれる。そう疑いなく信じられることが何よりも嬉しい、最高のフィナーレだった。「ロックンロールを鳴らし続ける」という姿勢そのものを見せつけることで、多くのリスナーの魂を震わせてきたザ・クロマニヨンズ。改めて、本当に偉大で頼もしいバンドだと思う。(齋藤美穂)
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