THE NOVEMBERS @ MT.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

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静寂と轟音の狭間を行き交いながら、聴き手の心に真っ直ぐ手を伸ばすTHE
NOVEMBERSのロックンロール。それがシンフォニックな音に姿を変えて、かつてなく豊かで濃密なコミュニケーションの輪を築き出した、珠玉のステージだった。5月にPLASTICZOOMS、6月にLillies and Remainsを対バンに迎え、
MT.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREを舞台に開催してきた、THE NOVEMBERSの三ヶ月連続企画「Moiré」。その最終回は、過去2回とは趣向を変えてゲスト・ミュージシャンを迎えてのワンマン・ライブ仕様。楢原英介(VOLA & THE
ORIENTAL MACHINE)、岩城智和(LOSTAGE)、柿沢健司(NATSUMEN/Frisco/ex:Platon)、青月泰山(左ききのゴーシュ/kαin)、加藤雄一郎(NATSUMEN/L.E.D./field.echo/LAKE/MEGALEV)ら個性豊かなゲストとの貴重な共演が見られたとともに、THE NOVEMBERSな
らではの圧倒的な美意識とエモーションが全編にわたって溢れ出た一夜だったのだ。

美しいピアノの客入りSEが流れるホール内に足を踏み入れた瞬間、ギター/ベース/エレキヴァイオリン/セロ/シンセサイザー/2台のドラムセットなどが所狭しと置かれたステージが目に飛び込んでくる。これまでゲストを交えて演奏する機会が少なかった彼らのライブで、こういう光景が見られることは珍しい。故に、これからはじまるライブへの期待が否応なしに高まる。そしてすべての観客が席に着いた頃、ジャケットを羽織ったメンバー4人が登場。“37.2°”でライブをスタートさせると、ステージ後方の白布に、きらめくスノードロップのような映像が映し出される。そのまま甘美なメロディと透明なアルペジオがゆっくりとグラインドするふたつの新曲を披露して、場内を荘厳な光に満ちたユートピアへと誘っていく彼ら。さらに楢原英介をステージに呼び込んで、シンセサイザーの音色が天空へとスピーディーに駆け上る新曲を奏でていくのだった。

まるで絵本をめくっているような感覚、とでも言おうか。ゲストを次々と呼び込みながら、大胆にアレンジを変えた既存曲や新曲が淡々と披露されていくステージには、空想の世界に浸っているときのような快感がある。一方でゲストが加わることにより、バンド本来のポテンシャルが遺憾なく発揮されていたことも面白かった。ストリングスやホーンの音色がキラキラと舞うシンフォニックなサウンドの上で、小林祐介(Vo/G)の高音ヴォイスと、ケンゴマツモト(G)のギター・サウンドが気持ちよく伸びていく。さらに吉木諒祐(Dr)&高松浩史(B)のリズム隊2人によるグルーヴのしなやかさ。THE NOVEMBERSのスロー・チューンには地平のはるか彼方まで飛んでいくような心地よいトリップ感があるが、それを持続させる原動力となっているのは吉木の清冽なビートであり、高松のグルーヴィーなベース・ラインであるということを、この日の演奏は如実に物語っていた。

THE NOVEMBERS @ MT.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
実はこの日のライブは二部構成になっていて、第一部は“Misstopia”の荘厳なサウンドで場内の空気を浄化させて終了。10分ほどの休憩を挟んでスタートした第二部では、ジャケットを脱いでTシャツ一枚になった小林がひとりで現れる。そのまま“melt”の演奏をはじめると、曲の中盤で高松がオン・ステージ。さらに終盤では吉木&第一部では出演の機会がなかった岩城智和のドラマー2人が登場し、次第にダイナミックになっていく轟音で静と動のコントラストを描いていくという展開で第二部の幕開けをドラマティックに飾ってくれた。そしてさらに面白かったのが、マツモトを加えて次に演奏されたニルヴァーナの“STAY AWAY”のカヴァー曲。打ち込みを駆使し、原曲を大胆にアレンジしたアンビエントな音像をゆっくり回遊させたかと思いきや、なんと今度は“STAY AWAY”の完全コピーver.をアグレッシヴに掻き鳴らす。その後も“ニールの灰”“dysphoria”と不協和音すれすれの轟音ナンバーを連打して、座ったままの観客を戦慄させていくのだった。なにしろ今日は岩城を加えたツインドラム体制でプレイされているのだから、その破壊力といったらハンパない。メタリックなギター音と爆発するビートがスリリングにせめぎ合った“彼岸で散る青”は、オール着席の場内の空気ですら一気に燃え上がらせるほどの圧倒的な熱量を持っていた。

本日のゲスト・ミュージシャン全員をステージに招いて本編ラスト“Moiré”に入る前、小林はこんなことを語っていた。いろんな人やモノと関わることで、自分の中に発見があったり、新たな豊かさに繋げようとする意志が生まれたりすることは、本当にステキだということ。それを実践すべく、今回「Moiré」を企画したこと。その一貫として「Moiré.0」という特設サイトで楽曲をフリーダウンロード配信したところ、そのリアクションとして多くの人が自分の絵や写真を投稿してくれてすごく嬉しかったということ。朴訥とした口調ながら、その言葉はTHE NOVEMBERSの音楽の根底にある「あなたと繋がりたい」という想いを力強く代弁していたと思う。そして「Moiré」に賛同し、会場に足を運んでくれた観客への感謝を最後に告げて、曲に突入。「笑顔が見たい」という絶叫と優美なファンファーレがせめぎ合うスロー・テンポの轟音が、場内の隅々まで眩い光を届けて本編終了とした。

アンコールでは、dipのカバー曲“human flow”と“再生の朝”を披露。「今までゲストと一緒に演奏する機会がなかったから、この貴重な現場に立ち会えた皆さんはラッキーですね」という上から目線(?)な発言が飛び出したり、THE NOVEMBERSのメンバー含めゲストの楢原も大好きだというLUNA SEAの物真似を披露したり、終始リラックスしたムードでライブは大団円を迎えた。サディスティックなまでの鋭利さと、狂おしいほどに甘美な匂いを同時に湛えたTHE NOVEMBERSのロックンロール。高い美意識のもとにシリアスなムードで放たれるそのサウンドには、少しでも触れたら崩れてしまいそうな精緻さと同時に、「僕」と「あなた」を繋ぐピュアで強靭な想いが宿っている。それを深く痛感させてくれる、とてつもなくエモーショナルなステージだった。(齋藤美穂)
THE NOVEMBERS @ MT.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

セットリスト

第一部
1.37.2°
2.新曲
3.新曲
4.新曲
5.pilica
6.mer
7.新曲
8.新曲
9.Misstopia

第二部
10.melt
11.STAY AWAY _ NIRVANA COVER
12.STAY AWAY _ NIRVANA COPY
13.ニールの灰
14.dysphoria
15.彼岸で散る青
16.Moiré _ 新曲
アンコール1
17.human flow
18.再生の朝
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