ASPARAGUS @ 渋谷公会堂

『ASPARAGUS 10th ANNIVERSARY TOUR "PARACHUTE TOUR"』

大歓声のなか一等最初に放たれたのは、記念すべき1stアルバム『Tiger Style』のオープニングを飾る、始まりの予感に満ちた「APPROACH ME」! そう、奇しくもちょうど10年前の2002年11月11日、この記念すべきデビュー作が世に放たれ、以降、多くのフォロワーを生み出すことになる稀代のライブバンド・ASPARAGUSのストーリーが幕を開けたのだった。その10周年のアニバーサリーを祝する渋谷公会堂ワンマンには、大勢のオーディエンスのみならずthe band apart、COMEBACK MY DAUGTHERSの面々など多くの盟友バンドマンも駆けつけ、全編にわたって盛大なワッショイ!が繰り広げられることになった。

冒頭では公演タイトルと堂々“10 years”の文字を刻んだバックドロップが掲げられ、先述の「APPROACH ME」からいきなり場内総立ちに。いかんせんシブコーは椅子席なもんでモッシュやクラウドサーフこそないものの、誰もが喜びを抑え切れないと言ったように飛んだり跳ねたり、とにかく好き放題に盛り上がる。シノッピも半袖/短パン姿でアグレッシヴなステージングを見せ、立て続けに「Analog Signal Processing」→「KNOCK ME OUT」とアッパーに攻め立て、続く「MEND OUR MINDS」では横乗りグルーヴが別種の快楽性でフロアをシェイク。そして再び直線的な「BEAT UP」で一気呵成に沸点へ!と、さすがはシーン随一の床上手。巧みなテクニックとステージ運びで面白いように観る者をオルガスムへと導いていくのだった。いやぁ、マジ気持ちイイ! と、1階21列21番席でひとり興奮を抑えきれない筆者である。

10周年の記念公演だからして、MCではこれまでを振り返っての回顧的なお話も――。
シノッピ「この10年間、一生懸命耐え抜いてやってきました!……って言いたいんだけど、そうじゃないのよね(笑)。いや、頑張ってやってきたんだけど、そこまでガチガチなわけじゃなくて」
ナオウ「イメージ的には、ふざけたバンドだし」
シノッピ「そう(笑)。始めた時はこんな10年もやるなんて思ってなかったし、それこそシブ&コー(渋公)で演るなんて思ってもなくて」
イチセ「大きいとこで演ってみたいっていうのはあったけど、元々そんな野心はなかったから」
シノッピ「知らないうちに野心が出てきちゃってね! だから人間って怖いんだよモ~~!!(爆)」

シノッピはたびたびエレキとアコギを持ち替えて、最新作とアスパラ・クラシックを交えながら矢継ぎ早にステージは進行。後半の「BY MY SIDE」では美しくも豊かな3声のコーラスで聴き手を魅了し、続く「JERK」では、おもむろにバックドロップが引き上げられ、代わってバンド名をかたどった巨大な電飾が登場! リズムとシンクロして明滅するそれは場内の高揚とラスベガス感(?)を煽り、「今日いちばんの盛り上がり」(シノッピ)を生み出したのだった。ちなみにこの電飾、前回の『MONT BLANC』ツアーで使用したもので、今日まで大事にしまっておいたそう。どこに置いても邪魔になると処分に困っておられました(笑)。

「ホントに時間というのは残酷な天使のテーゼということで……」(シノッピ)との言葉通り、アッという間に本編を駆け抜け、アンコール、そしてWアンコールにまで応えたアスパラガス。そのWアンコールではシノッピに連れられて前任ベーシストの“ジュンくん”こと山下潤一郎が登場。ひと言、「とんだモンスターになったね」と3人を褒め称え、最後に「JUST GO ON」で今一度クライマックスへ!
締めて全30曲の、文句ナシの大熱演だった。なかなか景気のいい話の聞こえてこない音楽業界だけれど、こうして才気と意志あるバンドが楽しくも堅実に活動を続けていてくれることは、大げさじゃなくひとつの希望だと思う。「10周年とか言ってるけど、こっから先は無限なのよ。20年はやるよね!?」という心強いシノッピの言葉を真に受けて、ロマンスグレー(あるいは無毛?笑)のアスパラに出会えることを老後の楽しみにしようと誓った次第。ともかくは10周年おめでとうございまッス!!(奥村明裕)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする