「俺たちが、日本人のバンドマンが誇れる、数少ない日のひとつが『京都大作戦』だと思うんで!」と約2万人がひしめくフィールドに向けて高らかに叫んだのは10-FEETーーではなく、10-FEET・TAKUMAいわく「ある意味、もう『京都大作戦男』みたいなやつ」ことDragon Ash・Kj。10-FEETが地元・京都を舞台に開催し、今年で6回目を数えるロック・フェス『京都大作戦』が、単なる「地元発信のアーティスト主催フェス」の枠を超えて、「最高の音楽の鳴り響く中でアーティスト同士が、アーティストとオーディエンスが、強い絆を結び合う場所」としての磁場を育んできていることは、最近の『京都大作戦』に参加した人は誰でも知っていると思うが、まさにその「絆」を毎年積み重ねながら、情熱と爆音の吹き荒れる理想郷を作ってきた10-FEETの意志が、冒頭のKjのMCをはじめ随所で感じられる、至上の1日だった。
広大なフィールドに設けられたメイン・ステージ「源氏ノ舞台」1日8アクト、サブ・ステージ「牛若ノ舞台」7アクト、さらにストリートボール・チーム「大阪籠球会」のエキシビジョン・マッチなどが行われるインドアの「鞍馬ノ間」、という3ステージ構成で開催されている『京都大作戦2013』。「源氏ノ舞台」では開演前から、BGMでELLEGARDEN“Make A Wish”がかかった瞬間にフィールドに巨大なサークルが生まれたり、マキシマム ザ ホルモン“恋のメガラバ”であたり一面ヘドバン大会になったり……とアクトが始まる前から沸騰寸前だったオーディエンスのテンションは、MOBSTYLES・田原氏のMCから開演カウントダウン、そしてビジョンに「開幕」の文字が浮かんだ瞬間にあっさりピークを超えていった。
「今年もやっちゃおうぜ!」というJOJI(B・Vo)のコールから1曲目“Hurdle Race”で「源氏ノ舞台」にいくつもでっかいサークルを描き出し、速射砲ビートと目映いメロディを“Try My Luck”やリリース間もない新作アルバム『Care Package』の“Riot”“Stil Believing”でぶっ放したのはトップバッター=dustbox。4月のツアー終了とともに解散したはずが「『京都大作戦』にどうしても出たいがために」この日限定復活を果たした花団は、“ラーメンチョップ”で一面に煮玉子(拳)を突き上げさせ、さらに“俺のブーメラン”で「MINMI姐さんの前にタオル回す練習しとこ!」と塚原一繁(Vo)がタオル回しを煽ったところにMINMI本人が登場!というマジックも呼び起こしていた。いきなり“涙がこぼれそう”“Buddy”とアンセム連打で、初出演となる『京都大作戦』へパワフルな音の号砲をぶち上げていたThe Birthday、鋭利なロックンロール・サウンドとともにびりびりと絶唱を響かせつつ「お昼ご飯食った?」と軽やかに呼びかけるチバのあの声が、この祝祭空間に新たな色合いを与えていた。
オオカミ顔に赤い和傘を掲げながら登場したMAN WITH A MISSION、“Emotions”などでがっつりフィールドを揺らしつつ、「ジャパンニ来テカラ3年半、究極ノ生命体ハ5体ダト思ッテオリマシタガ、トアルトコロデ出会ッテシマイマシタ!」(Jean-Ken Johnny)と呼び込んだオオカミ・マスクの生命体(実はKj!)とともにニルヴァーナ“Smells Like Teen Spirit”を炸裂させて、むせ返るような熱気あふれる「源氏ノ舞台」をさらなる熱狂へと導いていた。「MINMIでございま~す!」と『サザエさん』調のSEとともに入場したのは、出産を経て2年ぶり『京都大作戦』出演のMINMI。「今日は『京都大作戦』最高の日、いや自分史上最高の日にしようと思って来ました!」と“シャナナ☆”でタオル風力発電所状態を巻き起こし、新曲“ポジティブ音頭~D.P.P~”ではさっきのお返し(?)に登場した花団とともにフィールドを煮玉子ガッツポーズで埋め尽くす。「すごいな、今日初めて会うてんで!(笑)。でもサンボマスターも、初めてここで会って、今年曲作ったからね!」とこの場所へのリスペクトを口にしていたMINMI、最後は“さくら~永遠~”で渾身の力で「今」を輝かせるような真摯な歌を聴かせていた。一方、S.M.N./KiM/四星球/MOTORS/SECRET 7 LINE/NUBO/BUZZ THE BEARSといった顔ぶれが集結した「牛若ノ舞台」も、入場規制の大入りとなった四星球をはじめ、エネルギッシュな熱演が入り乱れていた。ちなみに、MWAM・ジョニーも「3年連続デ出サシテモラッテマス!」と言っていたが、『京都大作戦』初出演(2011年)はまさにこの「牛若ノ舞台」、究極の生命体と『京都大作戦』の絆の原点である。
陽が傾き始めた「源氏ノ舞台」には、実に6年ぶりアルバム『ALL FOR THIS!』をリリースしたばかりの復活KEMURIが登場。「ぶっ壊れるまで楽しんで、ぶっ壊れるまで踊って帰ってください!」と晴れやかな笑顔で語りかける伊藤ふみお、スカパンクのダイナミズムの結晶のような“Rules”のサウンドでフィールドを揺さぶったところで「最高だ!」とその笑顔はさらに輝きを増していく。「6年ぶりにアルバムを出しまして。ボロ雑巾のように見えるかもしれないけど、闘う準備はできてるんで」という力強い決意表明から新作曲“Standing in the rain”を披露し、“Ato-ichinen”ではTAKUMA&HEY-SMITH猪狩も参加して魂の爆演! さらに、トリ前にはDragon Ashが登場。“Run to the Sun”のアンサンブルと「この日を死ぬほど楽しみにしてたやつ! 手を挙げろ! 飛び跳ねろ!」のKjの絶叫が、「源氏ノ舞台」を拳とジャンプの大草原へと塗り替えていく。「宇治川調子どうだ?」と歌詞をアレンジした“La Bamba”で無数のタオルの渦を描き出し、10-FEET“SHOES”のカバーを披露したところにTAKUMAが走り込んできてダンサーチームのお立ち台で乱舞し、と1曲・一瞬ごとにオーディエンスの情熱をさらに高めていく。解散前のKEMURIと共演した時「ロクにしゃべったことないのに号泣しちゃて」と話していたKj。「続けてれば、同じところに立つこともあるんだなって。願わくばみんなも、ずっとロックを好きでいてください!」の言葉に沸き上がった拍手喝采を「ミクスチャー・ロックは好きですか!」のシャウトから“Fantasista”の狂騒のガソリンに変えて、10-FEETに最高のバトンを渡していた。
そしてラスト・10-FEET! 2日目の出演もあるので曲目については割愛させていただくが、僕らが生きる意味を全身全霊傾けて今この瞬間に焼きつけようとするような、熾烈にしてエモーショナルなステージだった。舞台に登場したTAKUMA/NAOKI/KOUICHIの3人が拳を突き合わせた後、「振り落とされんなよ!」という叫びに続けて最初の一音が鳴った瞬間から、観客1人1人の心とステージから鳴り響くサウンドが音を立ててギアを合わせたような一体感が生まれ、空気がいっそう熱を増していくのがわかる。「鞍馬ノ間」を沸かせていた大阪籠球会がダンスを繰り広げたり、ついさっき10-FEETのカバーを聴かせたばかりのKjが宇治の山をケータイキャンドルで彩り「これがロックンロールの力だ!」と熱い歓声を沸き上がらせ……といった場面の数々が、改めて『京都大作戦』を通してこの場所に集まった全員の絆の強さを感じさせる。本編終了間際に降り出した雨さえもその舞台装置に変えてしまうような、気迫の名演。アンコールでは「でっかい輪っか作ろか!」(TAKUMA)と怒濤の特大サークルを生み出していた10-FEET。「明日からぶっ飛ばせ! 気持ちひとつで、世界は変わるぞ!」の絶叫が、胸に熱く響いた。
最後はMC・田原氏と10-FEETの3人とともに会場全員で一本締め。『京都大作戦2013』2日目も、ここ京都からレポートします。(高橋智樹)
京都大作戦2013 ~天の川 今年も宇治で 見上げな祭~(1日目) @ 京都府立山城運動公園
2013.07.06