JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - ART-SCHOOLART-SCHOOL
昨年6月9日(ロックの日)以来の開催となった大阪・なんばHatchでのJAPAN CIRCUIT「山崎死闘編」。もともとはCOUNTDOWN WESTが開催できなくなった2010年に、それでも関西のロックシーンとつながり、盛り上げたいという思いから始まった本イベントだが、開催を重ねるたびに、そのバリエーション豊かなラインナップやどこか親しみやすい空気感が独自の楽しさを生み、関西のロックリスナーに支持されるようになった。この日のロースターは、出演順に宇宙まお、tricot、赤い公園、ねごと、SCANDAL、ART-SCHOOLの6組。どうですか? 新進気鋭のガールズバンド/アーティスト5組(tricotのドラム、komaki♂を除いてですが)に、押しも押されもせぬベテラン、ART-SCHOOL。まさに「異種格闘技戦」さながらのラインナップ。そして、この6組は、6通りの方法論とロック観がガチンコでぶつかり合う、熱く忘れがたい1夜を演出してくれた。

午後16時20分。なんばHatchのステージに、本イベントのプロデューサー、『ROCKIN'ON JAPAN』編集長の山崎洋一郎が登場する。「山崎死闘編」の成り立ちを説明したあと、「これからもこのイベントはずっと続けていきたいと思っています!」と宣言。そして、呼び込まれた一組目のアーティストは宇宙まお。昨年も同じくトップバッターを飾ってくれた彼女はこの1年間、どんな成長を果たしているのか。そして、どんなステージを見せてくれるのか。

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - 宇宙まお宇宙まお
■宇宙まお
SEのサイケデリックなメロディに乗って、バンドに続き、宇宙まおが両手を高く掲げてステージに登場する。真っ赤なワンピースが眩しい。トレードマークの赤いストラトを肩にかけ、“ロックの神様”からライヴはスタート。ゆったりとしたイントロから徐々にテンションを上げていくビートに、お客さんも心地よさそうに体を揺らし始める。伸びやかで飾り気のない歌声が広がり、会場全体がいいようのないハッピーな気持ちで満たされていく。これが宇宙まおの魅力だ。去年はどこか緊張しているように見えたけれど、今年はバッチリ。なにせ宇宙まお本人が心底楽しんでいることが伝わってくる。「トトトトトン」という遊び心あふれる擬音がサビの冒頭を飾る新曲“つま先”に続き、「楽しい曲をやります!」というMCから鳴らされたのは”自転車”。この夏のROCK IN JAPAN FES.2013ではなんと実際自転車に乗って(ステージ上で!)披露されたこの曲だが、この日は自転車はなし。そのかわりといわんばかりに、まお本人がステージ上をあっちこっちに動いてお客さんとコミュニケーションを重ねていく。タンバリンを叩くまおの笑顔にお客さんも自然と笑顔に。宇宙まお、やっぱり大きく成長している! 「楽しいことも哀しいことも大切な人と分け合えますように」。そんな静かなMCから始まったのは、珠玉のバラード”哀しみの帆”だ。まお自身がアコギを爪弾き、ひとつひとつのメロディを歌いあげていくナンバーだが、いつ聴いても、聴き手としての大事な心象風景が引き出される感覚に襲われる。この日も、ぐっと落ち着いた歌声に、オーディエンスはみなじっくりと聴き入っていた。ラストは、「みなさん、楽しんでますか? でも、宇宙まおはこのままでは帰りません!」と会場を煽りながら、代表曲“あの子がすき”を繰り出す。「あの子がすき~」「あの子が好き~」のリフレインを完璧に歌ってみせるお客さんたちはもう笑顔笑顔だ。そして、ステージ上には宇宙まおの楽しそうな姿。まるで少年のような歌声と朴訥としてたたずまいでシーンに登場した宇宙まおだが、この日見事に大きく増した存在感とともに見せてくれたのは、ポジティヴなエネルギーを伝播させていくような、まっすぐで力強いパフォーマンスだった。宇宙まお、最高のスタートをありがとう!

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - tricottricot
■tricot
完璧にあたたまったフロアに大音量で鳴り響く、「ヤ~マザキイチバン~」のフレーズ(笑)。しっかりとネタを仕込んで、tricotの4人の登場だ。会場も大爆笑、拍手が巻き起こる。SEのメロディに合わせ、行進風の振る舞いで登場した彼らは、それぞれの立ち位置につき、いつもの爆音をかき鳴らす。1曲目は、“おもてなし”。キレッキレのアンサンブルが鋭いキメを繰り出しまくる。中嶋イッキュウ(Vo・G)が「大阪、まだまだこんなもんじゃないよな!?」と煽り、会場はさらなる爆裂ナンバー“夢見がちな少女、舞い上がる、空へ” “POOL”でテンションの絶頂へ。さすが関西出身のバンドだけあって、なんばHatchを完全にホーム状態にしている。MCでちょっとでも噛めばすかさず「がんばれ」とツッコミが入り、そんなやり取りのひとつひとつが会場を一体感で満たしていく。「じゃあ、アホみたいな曲やります」と言って始まったのは、“おちゃんせんすうす”。不思議な曲だ。変拍子、変幻自在のフレージングが一筋縄ではいかないビートを生み出す楽曲でありながら、これほど直情的にアガる曲もない。スリルと中毒性あるサウンドをあくまでキャッチーに聴かせるtricot。その真骨頂のような最高のナンバーだ。「ヤマ!」「サキ!」なんていうコール&レスポンスを挟んで“爆裂パニエさん”“99.974℃”という代表曲を連発。ホール全体が揺れる揺れる。イッキュウは「かかってこいやあ!」とシャウトで応える。最後のMCでは「まだまだバンドが出てくるけど、関西の底力見せ付けてやってくださいね」と語り、ラストの楽曲“おやすみ”に雪崩れ込む。難解なサウンドプロダクションの最上層を流麗なメロとハーモニーが滑らかに滑っていく新たな代表曲の投下にフロアも最高潮の盛り上がりを記録。いやあ、しかし、すごいステージだった。

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - 赤い公園赤い公園
■赤い公園
会場の電気が落ち、ドラムの歌川菜穂がひとり舞台にあがる。タムを8分で刻む。すると、ひとり、またひとりメンバーがステージに現れる。真っ白い衣装とも相俟って赤い公園のライヴはどこか神妙な雰囲気で立ち上がる。しかし、楽曲が始まってしまえば話は別だ。“今更”で会場の空気を一気につかむと、佐藤千明(Vo)は「新しい踊りを赤い公園と一緒に踊りましょう! かかってこいやあ!」とtricotからの勢いにさらなるガソリンを注ぎ込む。続いて“のぞき穴”“娘”“透明”“くい”と、歌謡曲の匂いを残したメロディとサイケデリックな展開感が美しい対比構造を形作っていく代表曲を連射。この日、佐藤は乗っていた。少女のような無垢な歌声からドスの効いたパンチ力のあるヴォーカリゼーションまでを自在に操るその歌が冴えまくり、会場をぐいぐい引っ張っていく。振り返れば、佐藤の歌声に聴き入っていたら、あっという間に終わってしまった、という印象を持っている人も多いんじゃないか。“塊”“カウンター”と色っぽく、艶っぽく、それでいてどこか怪しげでもある赤い公園の世界観を存分に描き、ライヴはクライマックスへ突入。「赤い公園、次が最後の曲です」というMCに、会場からは割れんばかりの「えー!?」の声。そんなオーディエンスに向けて、最後に鳴らされたのは“ふやける”。轟音とヘビー級の歌声が炸裂するこの楽曲にフロアは麻痺状態――というか、それぞれが思い思いに拳を突き上げながらもどこか恍惚とした表情を浮かべているように見えた。メンバーが去り、フィードバックノイズが鳴らされたステージにはしばらくの間、残響のような余韻が漂っていた。

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - ねごとねごと
■ねごと
ガールズバンドが続く今年の「山崎死闘編」、続いての刺客はねごと。SEに乗って登場した4人、えらく気合が入っている。この夏、さまざまなフェスやイベントへの出演を経て、ひとまわりもふたまわりもタフにしなやかになったねごとだが、この日のステージングはまさに最高の仕上がりだったのではないだろうか。4カウントからいつも以上に疾走感をもってかき鳴らされた“sharp#”、その前のめりなテンションのままに衝動的に突っ走る“Re:myend!”“メイドミー…”。そして、イントロのキックに合わせ、フロアから手拍子が沸き起こった“メルシールー”。ねごとの4人はMCもそこそこに矢継ぎ早に楽曲を繰り出していく。すごい。タフでしなやかで、でもやっぱりキュートなねごとのライヴはこんなにも楽しく、かっこいい。でも、MCをしたらしたで、「9月29日ということで、苦肉の日ですけども!(笑)。実はねごとが初めてCDを出してから3年が経ちました!」(澤村小夜子、D)なんてユーモアと飾らないキャラクターで会場を沸かせてみせるのだからたまらない。11月に発売されるニューシングル“シンクロマニカ”に続いて放たれたのは、“nameless”“ループ”という必殺のナンバー。“ループ”では蒼山幸子(Vo・Key)に導かれ、オーディエンスは両手を挙げ、左右に揺らす揺らす。ラストはもちろん、“カロン”。お客さんも「待ってました!」といわんばかりに大歓声で迎え撃つ。キラッキラのシンセ、まるで糸を引くようにすっーと美しく伸びていく幸子の高音。ぐっとボトムの安定したリズムセクション、眩しいくらいの彩りを加えるギターアルペジオ。ねごとの最新モードは、これほどまでにポジティヴなグルーヴを放っている。オーディエンスの笑顔がその事実をしっかりと証明していたんじゃないか。

JAPAN CIRCUIT vol.52 WEST~山崎死闘編~ @なんばHatch - SCANDALSCANDAL
■SCANDAL
いつも通り、ビートルズの“Tomorrow Never Knows”に乗ってステージに上がった4人は、4人が横一列に並行に並ぶスタイルでそれぞれの立ち位置につく。ライヴは“太陽スキャンダラス”からスタート。SCANDALのライヴでも終盤の重要なシーンで演奏されることが多いこの楽曲の即効性はすごい。超キャッチーなリフレインが炸裂し、ファンはもちろん、この日初めての出会いとなったオーディエンスも一発で盛り上げてしまう。そして、4人が纏っている「華がある」としか言いようのない空気。それはやはり、ありとあらゆる音楽ファンに届く、SCANDAL最大の魅力だ。これまた痛快なロックナンバー“Rising Star”、そして「うちらも結成は大阪のバンドだから。すごい楽しいです!」というHARUNA(Vo・G)の言葉を挟んで、代表曲“サティスファクション”でオーディエンスは大合唱。そして、大喝采を浴びながら、HARUNAは語り出す。「今日は日曜日だから。みんな明日から仕事だろう。学校がある人もいるだろう。だからさ、今日楽しまないでどうすんの!?」。そこからの流れは完璧。中田ヤスタカ初のバンドプロデュースとしても話題となった最新シングル曲“OVER DRIVE”に続き、“下弦の月”“会わないつもりの、元気でね”と直近のシングル曲を連続でプレイ。さらに、ラストは「EVERYBODY SAY!」「YEAH!」という鉄板のコール&レスポンスが炸裂する定番曲“EVERYBODY SAY YEAH!”で締め。そもそも大阪をホームにしているバンドであるということ、そして、デビュー当初から、歌番組やファッションイベント、そしてロック・フェスまで、何度も何度も異種格闘技戦を繰り広げてきては勝ち続けてきた経験。そのパフォーマンスにはまさに百戦錬磨の歩みによって磨き抜かれた強靭なエンタメ性があった。ファンの心底楽しみきった表情と、おそらくこの日が初めての出会いとなったと思しきオーディエンスたちの圧倒された表情が印象的だった。

■ART-SCHOOL
個性溢れる女性アーティストたちが百花繚乱の熱演を繰り広げてきた「山崎死闘編」。ラストに登場するのはART-SCHOOL。木下理樹(Vo・G)、戸高賢史(G)に、中尾憲太郎(B)、藤田勇(D)という名うてのサポートメンバーを加えた4人はステージに上がるや、それぞれのストローク一発であの鋭く貫くようなノイズを生み出し、一瞬で会場の空気を一変させる。“BABY ACID BABY”“real love / slow dawn”“夜の子供たち”“車輪の下”と容赦のないビートを浴びせ、フロアはひんやりとした余韻で包まれていく。その一方で、身体は熱く燃え滾っている。ART-SCHOOLの真髄たる醒めた熱が受け手を支配し始める。そして、MC。「大体こういう感じの流れになるだろうなって怖かったんですけど。だって僕たち男だし。まあでも、最後までちゃんと残ってくれて本当にありがとうございます」という理樹の言葉を大拍手で迎える観客――。大袈裟な話だと思われるかもしれないけれど、この瞬間、ガールズロックのリスナーとオルタナティヴロックのリスナーがこの夜を通して、見事に交じり合ったんだなと思った。前半からの流れを受けたSCANDALがガンガン盛り上げたときに生まれた歓声と、この時、木下理樹に向けれらた歓声は同じオーディエンスの、同じエモーションに根差したものとして発されていたように感じた。それくらい、本当にあたたかい声援だったのだ。

そして、ライヴは中盤戦に入り、“プールサイド”“水の中のナイフ”でさらにボルテージを上げていく。続く、“BOY MEETS GIRL”“スカーレット”“ロリータ キルズ ミー”というART-SCHOOL屈指の人気曲は間髪入れずに、しかもいつにもない性急さで一気に畳み掛ける。分厚いアンサンブルがまさしく音塊となって獰猛に襲い掛かってくる。もちろんフロアは沸騰。曲が終わるたびに巻き起こる大歓声。本編ラストは“FADE TO BLACK”。突き抜けてポップなメロディに拮抗するように衝動的なディストーションギターが鳴らされる。そのスリリングな美しさたるや。完璧だ。年輪を刻むように徐々に蓄積されてきたからこそ、このギターノイズはこれほどまでに美しい。楽曲が終わり、この日最高の声援と拍手で応えるオーディエンス。4人はすべてを出し切ったように、無言でステージを去っていく。

そして、すぐにアンコールがかかる。そりゃそうだろう。ここにいるありとあらゆるリスナーがもっともっとこの甘美なロックに酔いしれていたいのだ。熱い拍手に迎えられ、ステージに戻ってきた4人。理樹は、会場を照らす客電を見上げ、「……ちょっと明るいですね……ちょっと暗くしてください」と照れくさそうに言い、じっくりと語りだす。「アンコールありがとうございました。残ってくれたお客さんと、呼んでくれたジャパンの編集長に感謝します。いやあ……正直、みんなが残ってると思わなかったよ(笑)。どうもありがとう。実はどうせアンコールないだろうなと思ったから、帰るつもりだったんですよ(笑)。でも、やります。ありがとう」。披露されたのは押しも押されもせぬ名曲“あと10秒で”。怒涛の勢いで会場を高揚させる4人のサウンド。理樹が繰り返す「何もねぇ」というリフレイン。そして、拳で応える会場のオーディエンスたち。こうして、これぞART-SCHOOLという説得力とどこかインモラルな快感に満たされた時間は幕を閉じた。

絶頂のうちに終演を迎えた4度目の「山崎死闘編」。異種格闘技戦ならではの、乱反射するようなたくさんの魅力と、だからこその息もつかせぬ楽しさ。これぞイベントの醍醐味だろう。次もまた、この場所で、最高のロックに出会いたい。そう願っている。(小栁大輔)
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