9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo

9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo - all pics by 橋本塁( SOUND SHOOTER)all pics by 橋本塁( SOUND SHOOTER)
「とても10月第2週目とは思えない天候が続いておりますが、この秋、『Breaking The Dawn Tour 2013』後半が始まりまして、今日は3日目です! みんなよく来たね!」「昨日の余熱がかなりあると思うから(笑)、ガンガンガンガン、どんどんどんどん、ジュウジュウジュウジュウ、熱くしてください!」と序盤のMCで菅原卓郎(Vo・G)が意気揚々とオーディエンスに呼びかける頃には、ただでさえ季節外れの陽気に見舞われたZepp Tokyoの満場のフロアはすでに灼熱の熱気に包まれている。6月26日にリリースしたアルバム『Dawning』を引っ提げて、7月9日・横浜club Lizard公演を皮切りに日本各地をサーキット中の9mm Parabellum Bullet全国ツアー「Breaking The Dawn Tour 2013」。7月~8月に開催された前半に続き、10月4日の大阪・Zepp Namba公演からスタートしたツアー後半戦。その3本目にしてZepp Tokyo 2Daysの2日目となるこの日のライブ。轟音SEの余韻の中から滝善充(G)のメロウなアルペジオが浮かび上がり、うおおおっ!と感極まった雄叫びのような歓声が沸き上がった瞬間から、4人がステージを去り最後のフィードバック・ノイズが消える瞬間まで、観る者すべてをエモーションのメーター振り切れっ放しの絶頂へと導いてみせた、実に堂々としたロック・アクトだった。

9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo
というわけで、まだまだツアー続行中ではあるが、9mmは各日程ごとにまったく異なるセットリストで臨んでいるので(現にこの日のセットリストは前日のZepp Tokyo公演1日目とも全然違うものだった)、以下セットリストにも触れつつレポートしていくことにしたい。ちなみに、この日の1曲目は“黒い森の旅人”。ストレートな楽曲の中に9mmの技も爆発力も歌心もすべてが詰まった、アルバム『Dawning』を象徴するドラマチックでエモーショナルな楽曲であり、それだけにこのツアーの中でもどちらかと言えば中盤以降に演奏されることの多いこの曲が、冒頭からいきなり鳴り響いたことの驚きと感激は、Zeppのフロア狭しと拳を突き上げさせ高らかなシンガロングに導くに十分すぎるものだった。そこから“Cold Edge”、“Black Market Blues”とライブ・アンセムを惜しみなく叩きつけて、さらに『Dawning』からかみじょうちひろ(Dr)詞曲の爆走ダンス・ナンバー“Zero Gravity”へ!

“The Lightning”の爽快なまでのカオス、ラテンな情熱が妖しく燃え上がる“Scarlet Shoes”、そしてロシア民謡的なフレーズとリズムの果てにサビで晴れやかな風景を描き出す“シベリアンバード ~涙の渡り鳥~”……と『Dawning』の楽曲を全曲盛り込んだ上に、“Living Dying Message”などの過去曲までもが9mmの「今」の圧倒的なエネルギーでもって炸裂していたこの日のアクト。それこそ、くじ引きで無作為に曲順を決めたとしても最強のセットリストにしてしまうに違いない今の4人のサウンドが、必殺ナンバーだらけの超合金合体のような展開でもって息つく間もなく押し寄せてくる。Zepp Tokyoが1曲また1曲と無上の狂騒空間へ昇り詰めていったことは言うまでもない。痺れるような轟音と超絶プレイを連射しつつ、あたかも全身から音を放射しているようなアグレッシヴなアクションを見せる滝善充。髪を立てた佇まいもサウンドもスクリームも含め、ゴリゴリのパンク・ベーシストのような存在感を放っている中村和彦(B)。手数もリズム・パターンも常人離れしたドラミングを、恐るべき安定感でもって叩き出すかみじょうちひろ。ここ最近の歌の艶と妖気に加えて、ロック・シンガーとしてのパワーと訴求力を格段に増していることを感じさせる菅原卓郎。4人の自らの持てる音楽的な武器すべてを、迷いなく聴く者すべてのハートのど真ん中めがけて最強の形でぶっ放す――ということに対する確信が、その1音1音から伝わってくる。

9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo
そして。その真っ向勝負なモードは演奏だけでなく、普段はやや天然っぽさも滲ませる卓郎の、いつになく直球で熱いMCからも伝わってきた。「あのさ、サークル(サークルモッシュ)とかあるだろ? 俺がテレビに出てまで批判した、みたいなことを言われてるみたいだけど(笑)。俺は別にさ、『やんな』っつってるわけじゃないんだよ」と語りかける卓郎。「『どんな方法で楽しもう?』っていう前に、音楽にもっと心を向けてくれよ! どんな場所に行ってもさ、どんなフェスに行ってもさ、俺たちだけじゃなくいろんなバンドが出てるのに、みんな盛り上がり方がモッシュとダイブとサークルだけだったら、なんかおかしいと思うだろ? みんなの、今ここで起きてる心の動きを、エネルギーを発しましょうよ!」。そんな卓郎の言葉に、ひときわ力強い歓声で応えていくオーディエンスの熱量が、Zeppの空気をさらに激しく震わせていく。インスト・ナンバー“Wild West Mustang”にフロアがでっかく揺れ、“どうにもとまらない”から流れ込んだ“Termination”で湧き起こった轟々たるシンガロング! さらに中村和彦曲“Caution!!”の巨大な銃弾のようなヘヴィ&硬質なサウンドスケープ! “Starlight”を経てメロウに響かせた“コスモス”、ひときわ美しく熾烈に鳴り渡ったハード・バラード“カモメ”……名場面だらけのアクトが、あっという間に終幕へ近づいていく。

9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo
「俺が『Dawning』っていうタイトルを9mmのみんなにプレゼンテーションした時に思ってたのは――音楽の力っていうものはある。音楽を聴いて元気になる。でも、それだけじゃなくて、音楽を聴いた人間がパワーを出してんだよ、と」――終盤のMCで、アルバム・タイトル『Dawning』の由来について卓郎はそう語っていた。「Dawnっていうのは夜明けでしょ? 陽が昇るみたいにエネルギーが湧いてくるような、そんなアルバムってことなんだ、『Dawning』ってのは。だからみんなも、俺たちの演奏を聴いて『なんか湧いてきたな』って思ったら、今やろうと思ったことをとりあえず横に置いて、湧いてきたものをバッと表したらいいんじゃないかと思いますよ!」。そんなメッセージでオーディエンス1人1人との情熱のギアをさらに深く噛み合わせたところで、ただでさえレッドゾーン超えの熱狂空間は“ハートに火をつけて”から一気にクライマックスへ! シングル曲“Answer And Answer”のみならず“Grasshopper”など『Dawning』の楽曲もがすでに鉄壁の9mmアンセムと化していることを、フロアから抑え難く巻き起こる割れんばかりの歌声がリアルに物語っている。

9mm Parabellum Bullet @ Zepp Tokyo
そして、“Talking Machine”で会場丸ごと大ジャンプに導いた後、熱気をかき混ぜるように響く“The Silence”イントロのアルペジオ……9mm史を代表する、凄絶なくらいにダイナミックで、悲壮なくらいにドラマチックで、どこまでも獰猛な生命力に満ちた名曲“The Silence”。アルバム『Dawning』で聴いた時、また「ROCK IN JAPAN FES.」の巨大ステージでの演奏を観た時には、“The Silence”という曲は9mmが『Dawning』で刻んだ大きな「到達点」だと思っていた。が、この日の演奏ではその“The Silence”までもが完全に血肉化されて、ともすれば今この瞬間にもさらにその先へと駆け出して行くんじゃないか?と思わせるほどの爆発力とスケール感を備えてしまっていた。最高だ。

「俺たち9周年ですよ、今年! で、ついこないだ発表された武道館が、10周年のプレミアムな一発目ですよ! 『一発目』っつって、二発あるけどね、2Daysなんで(笑)」と、来年2月7日・8日に開催が発表された日本武道館ワンマン2Days公演『10th Anniversary Live「O」「E」』について触れつつ、「今日より楽しくしねえとな。でも、まずは今日楽しくしねえとな!」と汗と熱気と歓喜まみれのオーディエンスに語りかけていた卓郎。ツアーの公演1本1本を日々完全燃焼させながら「その先」へと情熱を奮い立たせていることが、その逞しい佇まいからも伝わってきて、思わず嬉しくなった。そしてツアーは次回公演:10月12日(土)新潟LOTSへと続く!(高橋智樹)

[SET LIST]
01.黒い森の旅人
02.Cold Edge
03.Black Market Blues
04.Zero Gravity
05.The Lightning
06.Living Dying Message
07.Scarlet Shoes
08.シベリアンバード ~涙の渡り鳥~
09.Wild West Mustang
10.どうにもとまらない
11.Termination
12.Caution!!
13.Starlight
14.コスモス
15.カモメ
16.ハートに火をつけて
17.Grasshopper
18.Answer And Answer
19.Talking Machine
20.The Silence
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