MIYAVI @ SHIBUYA-AX

MIYAVI @ SHIBUYA-AX - all pics by Yosuke Toriiall pics by Yosuke Torii
「ここ東京から世界中に俺たちの声を響かせようぜ!」「俺は世界で音楽をノックアウトさせる気持ちでやっているから」――こういう台詞を、この日MIYAVIは何度口にしただろうか。そしてその度に沸き起こる歓声が、会場のSHIBUYA-AXを何度震わせたことだろうか。世界デビュー第1弾アルバムとして、海外に先駆けて日本先行発売されたアルバム『MIYAVI』のリリース・ツアー「MIYAVI "SLAP THE BEAT" TOUR 2013」のファイナル公演。と同時に、この後に控えた世界デビュー&ワールド・ツアーの壮行会的な意味合いも持った、年内最後のワンマン公演。その舞台であるSHIBUYA-AXには、ギター1本で世界に立ち向かうサムライ・ギタリスト=MIYAVIの覚悟と、その思いを称賛し援護すべく全身で歌い踊り歓声を送るオーディエンスの熱気とが、かつてない形で一体となっていた。

MIYAVI @ SHIBUYA-AX
2010年に再デビューアルバム『WHAT’S MY NAME?』をリリースし、日本のロック・シーンに衝撃を与えたMIYAVI。超速スラッピング/爆音コード/極太リフなどを駆使した変幻自在なギター・プレイを、凄腕ドラマー=BOBOとの「たった二人」の壮絶な打ち合いで魅せていくステージは瞬く間に大きな支持を獲得し、3ピース以上のバンド・サウンドを凌駕するほどの熱狂を生み出してきた。そして亀田誠治/細美武士(the HIATUS)/KREVA/上妻宏光/坂本美雨ら、ジャンルを越えたアーティストたちとのセッション・アルバム『SAMURAI SESIONS vol.1』を経て、満を持してリリースされたのが今回の『MIYAVI』である。「俺の名前は何だ?」とケンカ腰に投げかけていたMIYAVIが、自らの名を堂々と冠したアルバムをリリースするに至ったのは、こうして数多くのリスナーやミュージシャンと真っ向から向き合い真剣勝負を挑んできた軌跡があってこそ。そこで得た自信と確信を胸に更なる広い世界に打って出ようとする強い決意が、最新アルバムの曲が惜しみなく披露されたこの日のライヴでは、強靭な音となって鳴っていた。

MIYAVI @ SHIBUYA-AX
MIYAVI @ SHIBUYA-AX
ステージ前方の幕が切って落とされた瞬間、バリバリと唸りを上げた1曲目“DAY 1”の勇壮なギター・リフ。女性ファンの黄色い歓声と男性ファンの野太い雄叫びが入り乱れるフロアを無尽蔵に揺さぶった、“Chase It”のハードエッジなグルーヴ。本作ではEDMなど最先端のクラブミュージックを取り入れたサウンド・プロダクトも注目すべき点だが、それが単に新機軸を打ち出す飛び道具としてだけでなく、MIYAVIサウンド本来の強みを浮き彫りにするものとして機能していることが驚きだった。淡々としたエレクトロ・ビートで攻め立てる“Justice”にしろ、ブラック・ミュージックばりのファンキー・チューン“Secret”にしろ、シンプル&タイトなサウンドで世の真理を射抜くようなMIYAVIサウンドの殺傷力が、EDMも視野に入れたビートによって更に強まっている感じ。ビートとリフ押しのストロング・スタイルなサウンドからメロディが立ったサウンドに移行したことにより、歌のメッセージ性が際立っていたことも面白い。中盤のMCでは、「(このアルバムは)日本人として日本人の音楽が当たり前に世界で鳴り響く景色をイメージして作りました。国籍も、言語も、肌の色の違いも関係ない。世界中の人々が同じ景色を共有できることをイメージしたアルバムです」とMIYAVI。その言葉通り、「日本人である自分にしかできない音楽」をストイックに突き詰めながら、「世界中に届く音楽」としてのスケール感やダイナミズムを備えたパフォーマンスの連続に、圧倒されるばかりであった。

MIYAVI @ SHIBUYA-AX
すでに一部メディアで報道されている通り、アンジェリーナ・ジョリーの監督作『アンブロークン』への出演が決定しているMIYAVI。今月末からその撮影に入るため、年内に予定されていた海外デビューが来年にずれ込むことになったそうで、「最初は本業であるギタリストの仕事を差し置いて、この作品に出演していいのかすごく悩みました。でもアンジーの口から作品に込めたメッセージを直接聞いたとき、俺と同じ熱いものが彼女の中にも流れていることが分かって。単なる音楽家としてだけでなく、いち表現者として学べるものがあるのではないかと思い、今回の出演を決意しました」と熱く語るMIYAVIに、温かな拍手が送られる。そして7年前の曲“SELFISH LOVE”を披露して、「7年前は英語も喋れなかったし、ハリウッド・スターになるなんて夢にも思わなかったけど(笑)。世界にこの音を響かせたいと思ってずっとやってきたし、それに共鳴してくれるたくさんの人に支えられて、ここまで来れたと思っています。本当にありがとう」と挨拶。そこから“君に願いを”“Guard You”という新旧バラードの連打で「変わりゆくもの」と「変わらぬもの」を同時に表現したシーンも、最高にエモーショナルな一幕だったと思う。

MIYAVI @ SHIBUYA-AX
“Cry Like This”“No One Knows My Name”で再びEDMエッセンスを炸裂させた後は、“GANRYU”“SURVIVE”“FUTURISTIC LOVE”のキラー・チューン連打でフロアは強烈なリフとノイズが渦巻く狂騒空間に。「日出づる国」である日本から全世界へ熱風を送り込むような“Horizon”の特大シンガロングで本編を締め括った後、アンコールではMIYAVIひとりがオン・ステージ。台風18号の影響で会場へ向かう交通網がストップし、2時間押しの開演となった初日の大阪公演ほか、本ツアーの思い出を語っていく。さらに2日前の名古屋公演でBOBOに風邪をうつされたらしく、点滴を打ってこのステージに臨んでいるという衝撃の告白も! その後、BOBOをステージに呼び込み、体調不良をモノともしない熱量で鳴らされた“Ahead Of The Light”“WHAT’S MY NAME?”の爆音が、フロアの拳を力強く突き上げさせたのは言うまでもない。最後は「また大きくなって帰ってきます!」という力強い宣誓を残してステージを去ったMIYAVI。世界各地のライヴハウスを震わせ、さらに大きくなったMIYAVIが描く次なる景色は、一体どんなものなのか。今から楽しみで仕方ない。(齋藤美穂)

セットリスト
1. Day 1
2. STRONG
3. Chase It
4. Hell No
5. Justice
6. Secret
7. CHILLIN’ CHILLIN’MONEY BLUE$
8. SELFISH LOVE
9. 君に願いを
10. Guard You
11. Cry Like This
12. No One Knows My Name
13. GANRYU
14. SURVIVE
15. FUTURISTIC LOVE
16. Horizon
アンコール
17. Ahead Of The Light
18. WHAT’S MY NAME?
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする