サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu

サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu - All pics by KAZUMICHI KOKEIAll pics by KAZUMICHI KOKEI
昨年のフジ・ロック・フェスティヴァルでの初来日と、フジに合わせて行われた原宿アストロホールでの初単独公演で、ライヴ・バンドとしての桁外れの実力を見せつけたのがこのサヴェージズだ。特にフジ・ロックでのステージは、容赦ない豪雨に見舞われ、大荒れとなったホワイト・ステージに伝説を刻むとんでもない内容だった。なよなよしたお耽美ニューウェイヴとは一線も二線も画すサヴェージズの本質は、ライヴでこそ露わになるものなのだ。

サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu
約半年ぶりの再来日となったのがこの日の公演。前回単独のアストロホールから会場は一回り大きくなって恵比寿リキッドルームへ、そこに全身モノトーンで統一した4人が登場し、1曲目その名も“I Am Here”が始まる。ヴォーカルのジェニー・べスはこの日は白のタイトなシャツをすっきりと着ていて、相変わらず凄まじくハンサム・ウーマンだ。ギターのディレイがゆったり広がっていく“I Am Here”のミニマムなオープニング、そこに“City's Full”で横揺れのグルーヴが加わり、3曲目の“Shut Up”でパンキッシュなビートが重く腹を抉りながら縦に刻まれバーストしていく。

サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu
目のくらみそうな逆光ライトが激しく点滅する中で横・縦自在に揺さぶりをかけつつも、演奏の軸がどっしりしっかりステージに根を下ろしている安定感が凄い。全員キレッキレの演奏能力の持ち主揃いなのだが、特にドラムスのフェイ・ミルトンのスーパー・ヘヴィ級のドラミングがバンドのこの安定感を支えている。観ているとブレイクのたびに一旦椅子から腰を浮かせ、全体重を乗せてブチ叩くことで女性ドラマーの肉体的ハンデをカヴァーしているのが分かる。

サヴェージズの曲は基本的にポスト・パンク~ニューウェイヴと呼ばれるミニマムでアーティなビート・パンクだが、ミニマムだからこそ一音一音の確かさ、強度が試されるし、サヴェージズはまさにその一音一音の説得力という意味で圧倒的に勝っているバンドだ。アルバムはデビュー作『サイレンス・ユアセルフ』(2013)のみでライヴのレパートリーも限られている彼女たちだけに、サヴェージズのライヴはミニマムなサウンド&ミニマムな曲数のさらに唯一の答えを探すストイックな内容になる。

サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu
“I Need Something New”はジェニーのポエトリー・リーディング調のアカペラで始まり、アブストラクトなギターのレイヤーが幾重にも重ねられて揺らめいていたと思ったら、後半でいっきに猛烈タイトな締め付けに突入するという、コントラストが劇的なナンバーだ。サヴェージズのライヴで「コントラスト」と言えば、素晴らしいのがステージの照明だ。完全な暗がりの中で歌われる瞬間もあれば、逆にステージ全体が光体になったかのような瞬間もあり、その他にも逆光、斜光、様々なアングルから効果的に加えられるライティングが、白と黒だけで構成されたサヴェージズのステージに奥行きを与えていく。
スーサイドのカヴァー“Dream Baby Dream”も良かったのだが、他の『サイレンス・ユアセルフ』の曲があまりにも完成度を高めきっているため、むしろこの曲がショウ全体の中でほっと息を抜くタイミングみたいになっていたのが面白かった。アルペジオが美しく、客席からは手拍子もおこる。そういう意味では続く“Another War”も新機軸だったと言えるかもしれない。メロディアスでポジティヴ、サヴェージズの白黒の世界に初めて別の「色」が添えられたように感じたナンバーだ。

サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu
“She Will”以降は必殺のアンセムを畳みかけていく容赦ない展開で、サーフ・ロックをさらに高速回転させたかのような“Hit Me”の弾丸リフにどよめく会場、そして定番のフィナーレ・ナンバー“Husbands”に大歓声が沸く。グルーヴとジェニーの「Husbands!」のシャウトが加速減速自在にぶん回されていくカタルシス。昨年フジで“Husbands”を初めて体験した時は、豪雨というドラマティックなシチュエーション込みで生まれたカタルシスだと思っていたのだが、今回のステージを観てそれは環境とはまったく無関係な、彼女たちの肉体のみに宿った力だということが理解できた。ステージを降りてフロアのファンに手を伸ばすジェニー。目線の高さが近くなって気づくことは、ジェニー・ベスはステージの気迫漂う佇まいと裏腹に細身で華奢で、そしてもの凄く美しい人だということだ。

「あともう1曲やりたいんだけど、それは今日私たちがめちゃくちゃハッピーだからなの。本当にありがとう」とジェニーが言ってアンコールは“Fuckers”。緩やかなディレイで始まったサヴェージズのライヴはこの曲のサイケデリックな大轟音で幕を閉じた。約1時間10分というコンパクトなショウだったが、これ以上の長さもかたちもありえない、そう言い切れるほど完璧なショウだった。(粉川しの)
サヴェージズ @ LIQUIDROOM ebisu
セットリスト
I Am Here
City's Full
Shut Up
I Need Something New
Strife
Waiting for a Sign
Dream Baby Dream
Another War
She Will
No Face
Hit Me
Husbands
(encore)
Fuckers
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