きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO

きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO - all pics by by Daisuke Miyashitaall pics by by Daisuke Miyashita
「満員のクアトロってすごいなって。よくライブハウスで『お目当てのバンドは?』『きのこ帝国を観に来ました』みたいなのあるじゃないですか。今日はきのこ帝国をお目当てに来た人がこんなにいて……すごく嬉しいです」とあーちゃん(G)が照れくさそうに語る言葉に、ぎっちり超満員のフロアから熱い拍手が沸き上がる。昨年12月にリリースされたきのこ帝国の1st EP『ロンググッドバイ』のリリース・ツアーとして行われた東名阪ワンマン・ツアー『花束を持ってきみに会いに行こう』(全公演ソールドアウト!)の最終日:東京・渋谷CLUB QUATTRO。全身痺れるようなギターの音響と高純度なメロディの向こうから、爽快な風と光が差し込んでくるような、珠玉の音楽体験がそこにはあった。

きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO
ライブ・タイトル通り、手に手に花束を持って登場した4人が最初に響かせたのは、轟音越しの涼やかなポップ・ナンバー“ロンググッドバイ”。“FLOWER GIRL”“海と花束”などEP『ロンググッドバイ』の楽曲はもちろん、2012年5月のデビュー・ミニ・アルバム『渦になる』からの“退屈しのぎ”“Girl meets NUMBER GIRL”“夜が明けたら”、2013年の1stフルアルバム『eureka』収録の“ユーリカ”“夜鷹”“風化する教室”などこれまでの軌跡を丁寧に織り重ねて構成した本編は14曲・約80分。クアトロのワンマン・ライブとしては短めの尺ではあるが、19:41開演だったこの日のライブをアンコールまで観終わった時に時計を見て「まだ21:22?」と驚くくらいの悠久のタイム感とスケール感が、その楽曲とサウンドスケープの中には確かに流れていた。

きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO
きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO
時に赤黒くクアトロに渦を巻き、時にあたり一面を真っ白に染め上げるかの如くにスパークする、佐藤(Vo・G)&あーちゃんのギター・オーケストレーションはそれ自体が最高のアートフォームとしての構築美に満ちたものだったし、谷口滋昭(B)&西村"コン"(Dr)のリズム隊がそんな音響の渦にくっきりとした輪郭を刻んでいたのも痛快だった。きのこ帝国の音楽はオルタナ/ポスト・ロック/シューゲイザーという属性の中で語られることが多いし、この日集まった満場のオーディエンスも、そんなきのこ帝国のステージを凝視しながら、その音楽世界を身体と心いっぱいに浴びまくっていた。が、この日のアクトで何より際立っていたのは、4人が鳴らすバンド・サウンドの音圧を貫いて聴く者の胸に迫る、佐藤のシンガーとして/表現者としての覚醒ぶりだった。

きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO
“パラノイドパレード”で彼女が伸びやかに歌い上げたメロディの、神秘的なまでに麗しいヴォーカリゼーション。ギターの音量によってではなく、その熱唱の陶酔必至の美しさに身体が震えた“夜が明けたら”。Tシャツ姿にテレキャスを構えた至ってシンプルな出で立ちで、ほとんどMCらしいMCもなく1曲1曲彼女が放つその歌は、しかし目映いくらいの輝度とスピリチュアルな神秘性に満ちていた。そして、そんな彼女の歌/あーちゃんの緻密で大胆なギター・プレイ/谷口の質実剛健ベース/西村のタイトなドラミングとがっちりギアを合わせて、白昼夢的世界からドラマチックな絶頂へと昇り詰めた“ミュージシャン”には、太陽風の如き熱量と、絶対零度の冷徹なるブリザードに同時に曝されるようなスリルと高揚感が満ちあふれていた。

きのこ帝国 @ 渋谷CLUB QUATTRO
『ロンググッドバイ』の“海と花束”の雄大な音風景から『渦になる』の“WHIRLPOOL”を経て、『eureka』のラスト・ナンバー“明日にはすべてが終わるとして”へ……という流れに自身の足跡を凝縮してみせた、本編ラスト3曲の圧巻の音世界。アンコールで披露した新曲“東京”の、無防備なまでにストレートな歌声で《あなたに出会えたこの街の名は東京》と歌い上げる佐藤のヴォーカルとともにエモーショナルに燃え上がるバンド・アンサンブル。ラストの“国道スロープ”のアグレッシブなビートとサウンドがひときわ鮮烈な輝きを放って――終了。あーちゃんはMCで「1万人……いや3000人ぐらいのところでライブができるようになったら、『もっと(MCで)話していいですか?』『いいよー!』『わーい』みたいなのを、何年後かにやりたいと思ってます。だから、私はきのこ帝国のギターとして頑張ります!」と話していた。終演後に花束をフロアに投げ込んだり記念撮影にいそしんだりする4人の姿を見ながら、3000人や1万人規模のキャパシティの中で響き渡るきのこ帝国の音をこの後すぐにでも聴いてみたい、と心から思った、充実のステージだった。(高橋智樹)

セットリスト
01.ロンググッドバイ
02.畦道で
03.退屈しのぎ
04.ユーリカ
05.夜鷹
06.FLOWER GIRL
07.Girl meets NUMBER GIRL
08.風化する教室
09.パラノイドパレード
10.ミュージシャン
11.夜が明けたら
12.海と花束
13.WHIRLPOOL
14.明日にはすべてが終わるとして
encore
15.新曲
16.国道スロープ

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