【知りたい】リンキン・パーク、そしてチェスターの闇から光に僕らを導いた闘争の歴史

【知りたい】リンキン・パーク、そしてチェスターの闇から光に僕らを導いた闘争の歴史

世界中を震撼させたボーカリスト=チェスター・ベニントンの訃報を、誰よりも衝撃をもって受け止めたであろうリンキン・パークのメンバーたちから、ようやくバンド名でチェスターへ向けたメッセージが発表された。

その中にあった、「今僕らが思っているのは、君を僕らから奪ってしまった悪魔は、最初から込みだったということ。なぜなら、君がその悪魔についていかにして歌ったのかが、みんなが君を大好きになってしまった元々の理由でもあったわけだから。君はそれをまるで恐れることなく表現してくれた。そしてそうすることで、僕らを団結させてくれたし、いかにしてより人間らしくなれるのかを教えてくれたんだ」(https://rockinon.com/blog/nakamura/164283 より一部抜粋)という一節が、あまりにもリンキンにおけるチェスターの在り方を正確に言い当てていて、改めて胸が熱く騒いで仕方がなくなってしまった。

ラップ・ロック/ニュー・メタル/ミクスチャーなど彼らに投げかけられた呼称やレッテルはさまざまだが、リンキン・パークというバンドが2000年のデビューアルバム『ハイブリッド・セオリー』以降、世界におけるモダンロックの象徴的存在であることに意を唱える人はいないだろう。トラックメイキング的な視点と音色、ヘヴィロックのダイナミズム、聴く者を捉えて離さないメロディワーク……といった要素は、まさしく新時代の「ハイブリッド・セオリー」そのものだった。

しかし、彼らのそんな新機軸な表現は、時代を高揚させるためのアンセミックなものでもなければ、社会の欺瞞や矛盾をしたり顔で糾弾して盛り上がるためのフラストレーション爆破装置でもなかった。むしろ、時代や社会の闇や憂鬱に自分自身の苦悩と重ね合わせて重力崩壊させるようなサイバーグランジ的なカタルシスにこそ、リンキンの凄味とスリルは宿っていた。
“One Step Closer”にしろ“In The End”にしろ“Breaking The Habit”にしろ“Somewhere I Belong”にしろ“Numb”にしろ、彼らの楽曲はサウンド以上に、そのマインドにおいて抗い難いヘヴィネスを放射しているのだ。


その存在感を決定付けた2nd『メテオラ』、政治性を強めた3rd『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』から核戦争をテーマにしたコンセプトアルバム=4th『ア・サウザンド・サンズ』へ……と作品ごとに色合いを変えながらも、チェスターの歌はいつも拭いきれない憂いに満ちていた。そんな彼が一転、ソロプロジェクト=デッド・バイ・サンライズではリンキンとはまるで異なる快活な表情を見せていたのが印象的だった。
おそらくあの空間は彼にとって、己の闇に形を与えることでリンキン・パークがシーンを代表する巨大なバンドへ至ったという事実からの「解放区」だったのだろう。


EDMとヘヴィサウンドの正面衝突の如き音像とともに、再び人間そのものへとフォーカスを合わせていった5th『リヴィング・シングス』。衝動炸裂感あふれる音像越しに彼らにとって最も「ロックバンド的な」肉体性を焼き付けてみせた前作6th『ザ・ハンティング・パーティー』。

そして――彼らが初めて歌詞から先に作ったという最新7thアルバム『ワン・モア・ライト』。その言葉のひとつひとつから滲む苦悩を、彼らは研ぎ澄まされた闇のサウンドではなく、眩いポップの光に託した。『ワン・モア・ライト』リリース後、『Kerrang!』誌でチェスターが「『金儲けするために、こういう曲を作ることにしたんだと思う』なんて言う奴がいたら、『外に出ろ、俺がその口をぶん殴ってやる』と言ってやりたい。それは絶対にあり得ないから」といつになく感情的に発言していたのは取りも直さず、最新作のこのサウンドこそが「時代への/自他への『救い』」という最大の闘いの手段だったからに他ならない。

「なぜすべてが辛いのだろう?」(“Heavy”)という絶望の極みのような言葉を、淀みなきサウンドスケープの中に配置せずにいられなかった切実さが、今はよりいっそうくっきりと像を結んで胸に迫ってくる。


親友:クリス・コーネルが今年5月に世を去ったことが、その「闘い」から降りる動機になったのかどうかはわからない。クリスが亡くなった際にチェスターは「あなたが存在しない世界なんか想像できない」とコメントを寄せていたが、今月27日からスタートする予定だったリンキンの北米ツアーはキャンセル、その後のビジョンは現時点では不明という状況の中で、僕らは「あなた(=チェスター)が存在しない世界」の有り様をまだ見出せていない。
「肉体は滅ぶが音楽は永遠」などというもっともらしいお題目からではなく、今はただ、音源に遺された彼の歌声を一瞬でも多く受け止めていたい。それしかない。(高橋智樹)

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