【考察】宇多田ヒカル“あなた”と椎名林檎“人生は夢だらけ”は、どちらも「生きていく」私たちの背中を力強く押す名曲

同じレコード会社から同じ1998年にデビュー、昨年は宇多田ヒカルのアルバム『Fantôme』収録の“二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎”でのデュエットも話題を呼んだ宇多田ヒカルと椎名林檎。


そんなふたりの今、話題を呼んでいるこの2曲(“人生は夢だらけ”はCM曲のセルフカバーなので改めての話題だが)が、それぞれの人生に息づく強い信念をありのまま歌い上げた超名曲になっている。
ふたりがある意味、真逆の方向から、愛するという本能を解放しながら、痛みや苦しみも背負って自分の人生の旅を美しい色に染めて生きていくことを今、力強く宣言しているように僕には思えるのである。


《あなたのいない世界じゃ どんな願いも叶わないから 燃え盛る業火の谷間が待ってようと 守りたいのはあなた》宇多田ヒカル“あなた”


《それは人生 私の人生 誰の物でもない 奪われるものか 私は自由 この人生は夢だらけ》椎名林檎“人生は夢だらけ”

宇多田ヒカル“あなた”はジェイミー・ジェームズ・メディーナ監督が、椎名林檎“人生は夢だらけ”は児玉裕一監督が、それぞれの歌う姿そのものを大切にしたMVを作り上げていて、映像の手触りは全く違っているのに、月と太陽、または海と空のように、対になりながら宇宙の真理の半分ずつを描いているように感じられるのも面白い。

“あなた”には《戦争の始まりを知らせる放送も アクティヴィストの足音も届かない この部屋にいたい もう少し》というフレーズがあり、“人生は夢だらけ”には《こんな時代じゃあそりゃあ新しかろう良かろうだろうが古いものは尊い》というフレーズがある。
同じ時代に若くして日本を代表するシンガーとなったふたりは、それぞれの人生を歩んでそれぞれに大人になり、そして今という時代における表現者としての使命感をそれぞれに注ぎ込んで“あなた”と“人生は夢だらけ”は生まれた。
その2曲が、相互作用をしながらこれからを「生きていく」私たちの両肩を力強く押してくれるように感じられるのは、きっと偶然ではないはずだ。(古河晋)
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