【現地レポ】U2最新ツアーの全貌がわかる徹底レポート! なんと、ボノと肩を組み(!)歩いたエピソードやメンバーのコメントも!!

【現地レポ】U2最新ツアーの全貌がわかる徹底レポート! なんと、ボノと肩を組み(!)歩いたエピソードやメンバーのコメントも!! - pic by Ross Stewartpic by Ross Stewart

そしてバンドがステージに戻ってくると、ボノは、“ZOO TV”ツアーのマクフィストに変貌しているではないか! “エクスペリエンス”を積んだ彼らは、ラスベガスでショーをする落ちぶれたロック・スターになっている。権力を手に入れようと金と伝説に貪りついたボノのオルター・エゴは、まるでアメリカン・ドリームの喪失を描いているようだった。それは、今のアメリカを映し出すようでもあり、抜群のタイミングで蘇らせたとも思えた。「真実なんて死んだ。KKKが、今日もシャーロッツビルを歩いているじゃないか。みんなが俺の存在を信じない時にこそ俺は最大の力を発揮するんだ!」とボノは不気味に語った。ここで、『アクトン・ベイビー』からこのツアーまで一度もライブでやったことがない、“アクロバット”が演奏され、ボノは《聴いたことを信じるな/観たものを信じるな/目を閉じれば/敵を感じることができる》と意味深に歌う。さらに、これも2011年から演奏されていなかった“ステアリング・アット・ザ・サン”が、エッジのアコギで始まる。

「政治的な盲点を描いた」というこの曲の開始とともに、スクリーンに映し出されたのは、まさにシャーロッツビルで起きた、ネオナチの若者による白人至上主義者の集会の映像。ボノはアメリカの国旗が描かれたメガホンを持ち、「これはアメリカじゃない!」と連呼している。続いて、それに反発する人々、女性の権利や、マイノリティの権利を訴えて抗議をする若者達の映像が流れると、ボノは「これがアメリカだ!」と叫ぶ。そして“プライド”で、マーティン・ルーサー・キングの映像が流れると、彼はこう語った。「僕らアイルランド人には分かるんだ。分断する方が団結よりもずっと簡単だということを。目をつぶる方が簡単だということを。だけど、アメリカン・ドリームは、目をつぶっていたら見ることができない。だから今夜目を大きく見開いて、その夢を見よう! 目を大きく見開き、それぞれの違いを見つめるんだ。これがアメリカなんだ」と。

【現地レポ】U2最新ツアーの全貌がわかる徹底レポート! なんと、ボノと肩を組み(!)歩いたエピソードやメンバーのコメントも!! - pic by Danny Northpic by Danny North

再び新作からの曲に戻り、“ゲット・アウト・ユア・オウン・ウェイ”で、銃規制や平等を訴えるスローガンがスクリーンに次々に映し出され、“アメリカン・ソウル”では巨大なアメリカの国旗が掲げられ、アメリカという国の理想が重く、そして力強く歌われた。今さら言うまでもないが、U2ほどアメリカの理想のために戦っているバンドもいないのだ。 


“ワン”は、「今後、世界を背負うべき女性達のひとりである」ボノの娘、誕生日を迎えたばかりのジョーダンと、ラスベガスの銃乱射で亡くなった人達の家族に捧げられた。「去年の10月1日にここで家族を失った人達に、この曲を捧げたい。みんなこの国は分断されていると言うけど、でも、最悪の事態に直面した時、あなた達は助け合うことで真のアメリカ人らしさを見せてくれた。それが僕らの知っているアメリカだ。だから僕らはこの曲を祈りに変えたい。だけど、祈りだけでは、足りないんだ!」と。再び最新作から、“ラヴ・イズ・ビガー・ザン・エニシング・イン・イッツ・ウェイ”が披露され、ライブの冒頭同様、「愛こそが、それを遮るすべてのものより偉大なんだ」というメッセージを、アリーナ・ライブならではのアンセムとして鳴り響かせた。

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しかし、ライブはここで終わらなかった。新作の”13(ゼア・イズ・ア・ライト)“で締めくくられたのだが、スクリーンではボノが、生まれ育ったダブリンの家に帰還している。いつの間にか自分より小さくなった家の屋根を開けると、電球がひとつ出てきて”イノセンス〜“ツアーの始まりと全く同じ場所に戻っているのだ。会場は真っ暗で、電球がひとつ揺れているだけ。そこでボノが《簡単には見えないこともあるが/光はあるんだ》と歌った。U2は、このライブを大合唱で終わらせるでもなく、メンバー全員で肩を組んでお辞儀して、華々しく去るでもなかった。真っ暗な中、ボノが、Bステージの階段を歌いながらひとり静かに降りていく。ボノが見えなくなると、暗闇で、揺れ続ける電球だけが残されて、ライブは終わるのだ。なんという終わり方だろうか? アメリカン・ドリームを信じ、愛を掲げたU2は、この混乱の世界で、「光は簡単には見つからない」というその難しさを表現しようとしたのだ。

会場では、暗闇で電球が揺れ続ける中、ボノはそのままバックステージに来て、私の眼の前に立っていた。今2万人の前で歌っていた人が、「遠くから来てくれてありがとう」と言っている。「僕は昨日誕生日で、58歳になったというのに、まだこんなことやってるなんてクレイジーだよね!」と。しかし、ボノはすぐに車で移動しなくてはならなくて、スタッフから声がかかる。するとボノは「一緒に行こう!」と肩を組んで、そこから車まで話を続けてくれた。「『ソングス・オブ・イノセンス』のツアーは簡単だった。でも、“エクスペリエンス〜”ツアーの後半は“経験”を語ったもので、それをライブで表現するのは難しい。経験というのは、あまりに抽象的だから。でも、今アメリカでそれをやることは、すごく大事だと思う」。そして、もう一度「本当に今日は来てくれてありがとう」と言って、笑顔で消えていった。

会った瞬間に、人と人との壁を壊してしまうボノ。あらゆる人を巻き込み、ありきたりの日常をかけがえのない瞬間に変えてしまう―それは、まさにU2そのもののようだった。今回のツアーは、現時点では、11月10日に地元ダブリンで終わる予定だ。恐らく今年は、日本に来ることはないだろう。しかし、ラリーが、「絶対に日本に行きたいと思ってる」と言ってくれた。そもそもメンバーがわざわざ私に会ってくれているのは、日本のファンへのメッセージを送りたいからだ。だから、来年こそ絶対来日を!(祈) (中村明美)

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この日のセットリストは以下。

1. LOVE IS ALL WE HAVE LEFT
2. THE BLACKOUT
3. LIGHTS OF HOME
4. BEAUTIFUL DAY
5. I WILL FOLLOW
6. GLORIA
7. RED FLAG DAY
8. THE OCEAN
9. IRIS (HOLD ME CLOSE)
10. CEDARWOOD ROAD
11. SUNDAY BLOODY SUNDAY
12. RAISED BY WOLVES
13. UNTIL THE END OF THE WORLD
14. ELEVATION
15. VERTIGO
16. DESIRE
17. ACROBAT
18. YOU'RE THE BEST THING ABOUT ME
19. STARING AT THE SUN
20. PRIDE (IN THE NAME OF LOVE)
21. GET OUT OF YOUR OWN WAY
22. AMERICAN SOUL
23. CITY OF BLINDING LIGHTS
[encore]
24. ONE
25. LOVE IS BIGGER THAN ANYTHING IN ITS WAY
26. 13 (THERE IS A LIGHT)
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