特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(18日目)

特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(18日目)

2020年を迎えて早くも初夏に。パンデミックの影響で巣ごもりの時間が長引くなか、音楽を心の拠りどころにする人も多いことでしょう。そこで、ロッキング・オンが選んだ「2010年代のベスト・アルバム 究極の100枚(rockin’on 2020年3月号掲載)」の中から、さらに厳選した20枚を毎日1作品ずつ紹介していきます。

10年間の「究極の100枚」に選ばれた作品はこちら!


2013年
『ランダム・アクセス・メモリーズ』
ダフト・パンク


特別企画! ロッキング・オンが選んだ「2010年代 究極の100枚」からTOP20を発表!(18日目)

レトロ・モダンな極上ポップス

正直な話をすると、ダフト・パンクのビザールでトリッキーなフレンチ・エレクトロ的文脈にこだわりがあった私は、当初本作の良さがわからなかった。そのレイドバックしたレトロ・ポップなディスコ・ファンクは、当時の私の耳には鋭さや斬新さや刺激が欠如したユルいものに聴こえた。

テクノのようなエレクトロニックなダンス・ミュージックには、もっとカッティング・エッジで斬新で実験的なものを期待していたのだ。

だが本作をシカゴ・ハウスやフレンチ・テクノというよりも、70〜80年代AORやディスコ/ファンク、フュージョンからの流れの中に位置づけることで、すんなり理解できるようになった。本作がリリースされた2013年当時、シカゴ発のジューク/フットワークや、欧米以外の世界各地から次々と登場するエキゾティックでトライバルなグローカル・ビーツの荒々しい野性味に押され、ヨーロッパのテクノやダンス・ミュージックが行き詰まっていたのは明らかだった。

ダフト・パンクはそんな飽和状態だったエレクトロニカの隘路から抜けだし、シンプルでソウルフルなダンス・ミュージックの原点に戻って、いち早くメロウ&ファンキー&ソウルフルなシティ・ポップスへ転進を図ったのである。

ナイル・ロジャース、ジョルジオ・モロダー、ポール・ウィリアムスといったレジェンド、さらにはネイザン・イーストやポール・ジャクソンJr.、オマー・ハキムといった70年代ディスコ/ファンクやAOR、ジャズ/フュージョンを支えたレジェンドや腕利きたちを惜しげもなく起用し、フェイクやただのノスタルジーではないホンモノのファンク・グルーヴを創出。

さらにファレル・ウィリアムスパンダ・ベアジュリアン・カサブランカス、トッド・エドワーズなどジャンルを超えた多彩なゲスト・ボーカルを迎えて、エレガントでコンテンポラリーな歌ものポップスとしても見事に完成された作品を送り出した。前3作以上の世界的なヒットを記録し、グラミー5部門を受賞するなど一大センセーションを巻き起こしたのは当然だった。

多幸感とメランコリーが同居するような、華やかなミラーボールの煌めきと孤独感が同居するような色彩感や温度感は、本作の持つ得がたい魅力である。本作がきっかけとなって世界的なAOR再評価の波が訪れたのも納得なのだった。(小野島大)
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