一貫してポップ・ミュージックを変革し続ける巨人——決定的インタビュー集と完全ディスコグラフィーで、ボブ・ディランの全てを解明する!

一貫してポップ・ミュージックを変革し続ける巨人——決定的インタビュー集と完全ディスコグラフィーで、ボブ・ディランの全てを解明する!  - 『rockin'on』2020年7月号より『rockin'on』2020年7月号より

一旦(曲の)構造がピシッと確認できたら、そこから先はどんな形でも、果てしなく色んな解釈が可能になる。それがライブ・ショウを続ける上での要になってるんだよ……適当にやっつけたり、ぐしゃぐしゃ崩したりもしない、やたらと絶叫を入れてごまかしたりもしないんだ

まったくどうなっているんだと言いたくなるのは、新型コロナウイルスの災禍はもちろんなのだが、何よりもこのところのボブ・ディランの圧倒的な存在感だ。何の予告もなく突然、楽曲“最も卑劣な殺人”、さらに“アイ・コンテイン・マルチチュード”、“偽預言者”と立て続けにリリース、そして8年ぶりのオリジナル楽曲アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』と、世界中が身も心も経済も縮こまってい
るなか、この闘いに奮い立てと言わんばかりにアクティブな発信を続けている。

何がディランをかき立てるのか。

その背景を浮かび上がらせるのが、この総力特集だ。ノーベル文学賞受賞者というのが、一般社会ではもっともポピュラリティを持つ呼称だろうが、ロック的には、先人からの歴史を受け継ぐ現代最高のソングライターであり、同時に常に変革の先頭に立ち、ポップ・ミュージック全体の歴史を動かしてきた人である。

ただ、今となれば、多くの名盤はそそり立つ巨大な壁のようだし、聴くべき曲はあまりに多く、厄介に感じるかもしれない。最初から順番に、と挑むと地味な弾き語りだったりするし、それでは最近の作品をというとスタンダード曲集だったりするので、ああ自分には縁がないんだと感じてしまっても不思議じゃない。そうならないためには、おもしろそうなところからピックアップして聴き込むのが正解だし、そうすると不思議なほど、多くの扉が見えてくる。

そして、それはまさしく10代のディラン自身が、多くの音楽に出会い、夢中になって探求を続けた光景と重なっていくのである。近年のスタンダード曲への取り組み、その延長線上に自分たち世代にとっての大きな傷であるケネディ暗殺事件を真っ正面に見据えたディランは、新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』でさらにどこへ踏み出そうとするのか。

世界中の全ての音楽ファンが、そして全てのアーティストたちまでが固唾を呑んで見守っているのがこのアルバムだ。まるでSF映画や小説を目の当たりにしたような光景が広がり、アメリカでは死者がベトナム戦争の戦死者をはるかに超えて10万人の規模に達したウイルス禍の世界に、ディランはどう立ち向かうのか。

先月号に掲載された70年代のインタビューでディランは、「俺は関心の照準を政治に合わせてるわけじゃない。俺の関心は民衆にあるんだ」と語っている。まさにその姿勢は今も変わることなく彼の根底にある。だからこそ、こんなにも音楽や歌、芸術が必要とされる時に、特別なものを出してくれるのに違いない。この特集を通じてディランの巨大な世界に遊ぶ手掛かりを見つければ、待望のオリジナル新作も、そしてライブ盤やブートレッグ・シリーズを含む全作品も、より深く味わえるはずである。 (大鷹俊一)


また、ボブ・ディランの巻頭特集には、以下のコンテンツが掲載されている。

★90年代、自身の楽曲構造の秘密を語った超稀少インタビュー
★『ボブ・ディラン インタビュー大全』からセレクトした決定的発言集
★徹底論考 : 変革と伝承を併せ持った巨人
★最新スタジオ作品『ラフ&ロウディ・ウェイズ』先行予測レビュー
★ライブ盤&ブートレッグ・シリーズまでを含む完全ディスコグラフィー


ボブ・ディランの関連記事は現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。

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一貫してポップ・ミュージックを変革し続ける巨人——決定的インタビュー集と完全ディスコグラフィーで、ボブ・ディランの全てを解明する!  - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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