60年代、70年代のロック黄金時代において、あるいは90年代、00年代前半のオルタナ・ロック時代/ロック・リバイバル時代において、ギターは何より重要な楽器であり、ギタリストは、時にはボーカリストよりも重要な存在だった。ザ・ローリング・ストーンズのキース・リチャーズは言うまでもなくミック・ジャガーと並ぶメイン・キャラクターであり、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジはロバート・プラント以上に重要視された。
あるいはオアシスのノエルとリアム、レディオヘッドにおいてもトム・ヨークに次ぐのはやはりジョニー・グリーンウッドの存在だ。曲の方向性――その曲がパンクになるのかメタルになるのかグランジになるのかフォークになるのかは、ギターによって決まる。ディストーションをかけてスリー・コードで刻めばパンクになり、アコースティックでアルペジオを奏でればフォークになり、16のリズムでカッティングすればファンクになる。ギタリストは、それを決めるプロデューサーであり、そして同時にレコーディングやライブにおいてはそれを体現する「音の化身」となる。
ギタリストは、ある意味ボーカリスト以上に、大きな役割を担っていたのだ。
そして、00年代後半から2020年代の今の音楽シーンにおいて、ギターはもはや数多くある楽器のひとつであり、ギタリストはそれをプレイする人であり、かつてほどの特別な存在ではなくなっている。大隆盛を誇るヒップホップやR&B、EDM、エレクトロにおいてだけではなく、今は例えばバンドにおいてすら、ギタリストは、その重要性においてドラマーやベーシストと大きくは変わらない。
それは、曲の方向性をプロデュースする役割が、ギタリストからコンピューター・ソフトのGarageBandに変わったからだ。バンド・サウンドも、もうPCの中であらかた出来てしまうのだ。
さて、そんな時代にあえてのロック・ギタリスト特集である。今だからこそ、ロックにおけるギターの真価と可能性と役割をしっかりと再認識しておきたいからだ。何のために? 来たるべき、ギターの復権に向けて、である。
80年代にエレ・ポップとヒップホップとテクノの洪水が押し寄せてメタル以外のロック・ギターが激減した時、その後の90年代のグランジ、オルタナ、ミクスチャー、メロコア、ブリットポップでロック・ギターは新たな形で完全に蘇った。そして、それは革命であり、有効だった。またそういうことが必ず起きる。何の根拠もないが、この特集を作って確信的にそう思えたし、読んでいただければそれを共有してもらえるのではないかと思う。(編集長 山崎洋一郎)
「究極のロック・ギタリスト50」の巻頭特集には、以下のコンテンツが掲載されている。
★究極の50人にフォーカスした徹底レビュー(以下、掲載順):ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、ピート・タウンゼント(ザ・フー)、ジョン・フルシアンテ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)、ジェフ・ベック、ジ・エッジ(U2)、ブライアン・メイ(クイーン)、スラッシュ(ガンズ・アンド・ローゼズ)、ジミ・ヘンドリックス、キース・リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ) など
★ジミ・ヘンドリックス、いかにして「生ける伝説」になったかを物語る決定版インタビュー
★邦楽シーンをリードする両雄ギタリストによる徹底討論「僕らを形作った至高のギタリストたち」:生形真一(Nothing’s Carved In Stone,/ELLEGARDEN)、小笹大輔(Official髭男dism)
「究極のロック・ギタリスト50」は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。