最終日に出演する洋楽バンドのピースは、2009年にコイザー兄弟を中心に結成された4人組だ。ハリソン(Vo・G)が右腕をかざして「元気?」と軽く挨拶すると、サイケデリック&グルーヴィーなギター・サウンドを力強くうねらせながら、デビュー・シングル“Follow Baby”を切り出すオープニングである。若い苛立ちを感じさせるハリソンの歌声をハーモニーが彩り、続いて新曲“Money”へ。一転して音の隙間にグルーヴを宿らせ、《金。それって本当に必要なの? 腹が減ったらそれを食べるの? それって美味しい?》と疑念を投げ掛けるナンバーだ。“Bloodshake”辺りからはいよいよ、物憂いムードを漂わせつつ勢い良く跳ね上がるライヴ・バンドとしての本領を発揮というところで、昨年のサマーソニック(ザ・ロイヤル・コンセプトと同日同ステージだった)や本国でのレディングやリーズといった大型フェス出演も経験し、メキメキと成長を遂げる実力を見せつけていった。
じっくりと歌心でオーディエンスを呑み込む“Float Forever”も、以前よりヴォーカル・ワークの説得力が加味されていて素晴らしい。沸き上がるような喝采を浴び、《僕はバカのままでいいし、ただ君と恋の病に落ちていたいだけさ》と狂おしいフレーズを目一杯キャッチーに吐き出す“Lovesick”へと繋ぐのだった。豊かなハーモニーの彩りと力強いバンド・グルーヴは、ピースのデビュー当時からメディアの高い評価を得る大きな要因だった。けれども、“California Daze”に触れれば、60年代アメリカや80~90年代イギリスのサイケ・ロックの影響がどうのこうのというよりも、2010年代を生きる若者の視界を描き出すために、自由に音楽の魅力を選んで使いこなしているといった姿が頼もしく目に映る。オーディエンスのクラップを巻いてエモーショナルに転がる“Wraith”を経て“Waste of Paint”のクライマックスに至るまで、完璧に自分たちのペースで、若い憂鬱と苛立ちを、そして等身大の恋心を、率直に伝え続けるステージであった。(小池宏和)
3日間の熱演を「ROCKIN’ON JAPAN 7月号(5/30発売)」にてレポートします。お楽しみに!