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フィールドを焦がしていた真夏の太陽もやっと傾きはじめ、涼やかな風が感じられるようになったグラス・ステージ。だが、客席の温度が下がる気配は、微塵もない。そりゃそうだ、このラインナップで温度が下がるなんてあり得ない。スタンディング・ゾーンは後方通路ギリギリまで人で埋め尽くされ、みんなあの人の登場を今か今かと待っている。――そう、奥田民生。本フェスの守護神、というかむしろ、この国のロックの守護神だ。
予定より6分押しの15時06分、バックバンドと共に悠々と、奥田民生、登場。「よろしくお願いします」と一言ペコリ、そして“俺は知ってるぜ”スタート! 「あーーーーー!!」。いきなり民生の咆哮が轟く。さあ、痛快極まりないロックンロール・ショウの開幕だ! 続いては“MILLEN BOX”。ギッチリ埋まったフィールドが、民生が放つリズムにシンクロしてホップする。民生、腰を落として「ジャパーーーン!」と本日すでに何度目かの咆哮。すっごい気合いが入ってる。ギター・ソロでも、弦を押さえる指の先からなんか出てんじゃないかってくらい、熱く野太いグルーヴをガンガン繰り出してくる。
今年は民生にとってソロデビュー10周年という節目の年。これを記念して4月から2ヵ月おきにシングルを連続リリースしたり、また10月には待望の広島市民球場でのライヴが控えていたりと、今年の民生は非常に燃えているのだ。その闘争モードが、このステージでもここぞとばかりに炸裂している。
「今日は時間の都合があって流れるような美しいトークができないんですけど。曲をさくさくやっていかないと。俺のかっちょいいトークを期待してた人は、また今度ということで、よろしく!」という笑いを誘うMCの後、その10周年にあたる今年に生まれた曲たちを連打! まずはツアーではすでにやっている最新曲“ライオンはトラより美しい”、そして今月発売予定の“何と言う”に、6月にドロップされた“スカイウォーカー”。どれもアッパーなビートと民生節全開なメロディが絡み合いが心地好く伸びていく、実に民生らしいロックンロール・ナンバーだ。
「おかげさまで10周年を迎えまして。それで10周年を記念する曲をやってまして、それをジャパンでもぜひ!と言われましたので」といって始まったのが、ファンの間では話題沸騰中の“人ばっか”! この曲、本当にすごい。要はこれまでのヒット曲のメドレーなのだが、単なるメドレーじゃなくて、それぞれの曲の1フレーズ、もしくは2フレーズをどんどん繋げて1曲にしちゃってるのだ! 引用している曲は ユニコーン時代の名曲“働く男”から、“愛する人よ”、“花になる”、“愛のために”、“息子”、“月を超えろ”、“ありがとう”などなどなどなど。しかも単にツギハギしただけじゃなくて、全部の歌詞がちゃんと繋がってる。すっごい高度なサンプリングだ。たぶんキーも原曲のまんま繋げてるっぽいし、こんなことできるなんて、ほとんど神業。思わぬところで奥田民生の天才ぶりを見せつけられ、興奮に震えてしまった。
セットはそのまま“イージュー★ライダー”へ。湧き上がる手拍子。誰かが飛ばしたしゃぼん玉が、このどこまでも自由に、まっすぐに伸びていく究極のアンセムに乗って、天へと飛んでいく。ここからはもうラストまで、フィールドは休む間もない歓喜のロックンロール・パーティ状態。“サウンド・オブ・ミュージック”、“御免ライダー”、“まんをじして”と矢継ぎ早に放たれるナンバーに、みんなすべてをまかせてノリまくってる。そして最後は“トロフィー”。このとてつもない開放感と幸福感、そして楽曲に押されるようにして心の奥から湧き上がってくる、明日への希望。これがあるから、民生のライヴは最高なのだ。奥田民生、今年もやっぱり圧勝のステージだった。(有泉智子)




1. 俺は知ってるぜ
2. MILLEN BOX
3. ライオンはトラより美しい
4. 何と言う
5. スカイウォーカー
6. 人ばっか
7. イージュー★ライダー
8. サウンド・オブ・ミュージック
9. 御免ライダー
10. まんをじして
11. トロフィー