映画『ブルックリン』を観て考えた、シアーシャ・ローナンの本当のすごさ。

映画『ブルックリン』を観て考えた、シアーシャ・ローナンの本当のすごさ。
今日は『ブルックリン』の試写を観てきました。


今年のアカデミー作品賞レースに絡んだ作品の中では、もっとも遅い日本公開となった映画です。ちょっと地味そうだな、という先入観もあったけど、とても良かった。


主演は、アカデミーの主演女優賞で惜しくも『ルーム』のブリー・ラーソンに敗れたけれども、その演技としては大評判になっていたシアーシャ・ローナン。


時代背景は第2次大戦後の1950年台のこと。彼女が扮するアイルランド人のエイリシュが故郷を離れ、移民としてニューヨークのブルックリンで成長し、恋をして、また故郷に戻ってくる。故郷には残してきた家族と、新しい恋人候補が出現して、最終的な彼女の決断は……というのが、ざっくり言えばストーリーです。


で、シアーシャ・ローナンが前評判以上に、そりゃあいい演技でした。
ハリウッドには、もちろん恐ろしいほどの演技力を誇る役者がたくさんいますが、彼女が体現しているようなピュアネスには、なかなかお目にかかれないと思います。
アイルランド人の田舎っぽい少女が、都会でだんだん自信をつけて、化粧も立ち居振る舞いも少しずつ変わって……でも決して別人になるわけではない。でも、まるで別人みたいに変わっていく。


こんな難役に挑戦した!とか、美人女優なのにヨゴレ役を演じきった!とか、そういう煽り文句はよく見るし、実際そういう意味で度肝を抜かれる映画も多いですが、すべての名女優がこうやって引き算して引き算して……ピュアになりきれるかといえば、そうでもないと僕は思います。


そしてシアーシャ・ローナンはまだ22歳ですが、すでに女優としてのキャリアは長い。
『つぐない』で13歳の時にすでにアカデミー助演女優賞にノミネートされて、その後も『ラブリー・ボーン』とか『ハンナ』とか、一筋縄ではいかない主演作もある。
ということは、映画業界のあれやこれや、もういろんなものを知ってしまった上で、もう何周も回ってこのピュアさを演じられるのだなあ、と思います。それは本当にすごい。


映画自体は、移民の歴史ものにありがちな苦難の描写はなくて、とても善良な人たちがたくさん出てくる。それはある種のファンタジーかもしれないんだけど、主人公の心の曇りのなさとひとつになって、優しい後味を残してくれました。公開は7月1日から。
トレイラー観たことない人は、これです。(松村)


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