最狂映画の最狂サントラ

最狂映画の最狂サントラ

中島哲也監督の新作『告白』が『セックス・アンド・ザ・シティ2』などを差し置いて、週末の興行成績1位に輝いた。素晴らしい。
原作がミリオンセラーというのも大きいんだろうけど、子供たちの殺し合いという極めて不穏な題材(めちゃくちゃ単純化しているけど)を扱い、R15を食らったというこの映画がこれだけの成績を上げたのは本当にすごいと思うし、映画の未来をすごく感じさせる結果である。
これからも、とことんエンタテインしつつも、大衆に迎合しないこの手の映画がどんどん増えれば面白いと思う。

さらに。
キャスティング(ほとんどが無名の中学生)から編集まで、すべてが斬新でまったく予定調和なところのないこの映画、サントラも本当にビックリ仰天ものである。
なにしろ劇中でもっとも使われているのは、ストーナー・ロックからアンビエントまで自由自在に自分たちのものにしてしまうBorisなのである。
自分は長年このバンドをフォローしていて、去年公開されたジム・ジャームッシュの『リミット・オブ・コントロール』にその楽曲が使われた際、より広いオーディエンスに彼らの音楽が紹介されたことに喜んだが、まさかこんなメインストリームの舞台で使われるとは夢にも思っていなかった。それだけに本当に彼らの音楽の起用は衝撃的だったが、美しさと狂気が紙一重のところで同居した彼らの音楽は、恐ろしいほどこの映画にハマル。
どうやら中島哲也は映画のBGMを探しているときに初めて彼らの音楽に出会い、すぐピンと来たらしいんだけど、正直、大好きだと公言しているジャームッシュより使い方は上手いです。
本当にこれで彼らの認知度がより増えてくれることを祈ります(ライヴのチケットが取りにくくなるから、ちょっと複雑であるけど)。

しかし恐ろしいのは、サントラの衝撃はBorisの起用に留まらないこと。これはかなり話題になっていたけど、まずレディオヘッドが曲を提供しているのだ。日本映画でこれは初だし、その曲がまたアルバムなどには収録されてない“幻の名曲”こと“ラスト・フラワーズ”だったりするから嬉しい(しかも、これまた劇中で絶妙な使われ方をしている)。
さらにサントラ盤にはThe xxややくしまるえつこ&永井聖一(相対性理論)など、粋なアーティストの楽曲が収録されているんだけど、ビックリするのは、これまた劇中で最高の登場の仕方をするAKB48のトラックも入ってたりするのだ。しかも、これまたBorisの楽曲の間に収録されていたりして、めちゃくちゃ倒錯した流れを編み出してたりするのである。本当にいかす。

と、先ほど『告白』1位というのを確認して、ついつい長く書いてしまったけど、映画、サントラ、そしてCUT6月号にみっちりフィーチャーしている『告白』特集を、とにかくチェックしてください。(内田亮)
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