Mr.Children『SOUNDTRACKS』を聴いて「アルバムを聴く」とは何かを思い出した

Mr.Children『SOUNDTRACKS』を聴いて「アルバムを聴く」とは何かを思い出した - 『SOUNDTRACKS』12月2日発売『SOUNDTRACKS』12月2日発売
「アルバムを聴こう」という気持ちでアルバムを聴くことが少なくなった。
もちろんアルバムにはそのアーティストの本質や進化やメッセージが詰まっているし、ライブと並んで重要な表現の形であることは変わらないし、今でも好きなアーティストの新しいアルバムを聴くのは最もワクワクする瞬間のひとつだ。
でも、やはりアルバムをアルバムとして聴く回数は減った。
今はアルバムとして楽しむ以外の音楽の楽しみ方が広がっていることも事実で、楽曲というものが聴き手の日常に自由自在に溶け込んでいるのをポジティブなこととしても感じている。
音楽がリスナーの生活のサウンドトラックとして機能しているなと思う。

Mr.Childrenのニューアルバム『SOUNDTRACKS』は、純粋にアルバムとして聴くべきアルバムである。
どうしようもなく「アルバムを聴く」ということに僕たちを没頭させる力を持つ作品と言ってもいいだろう。
10曲を聴く約45分の間、そのアルバムと自分だけの世界がそこに生まれる。
このアルバムの世界を自分だけのものにできる感覚もあるし、自分だけの世界をこのアルバムが映し出してくれる感覚もある。
それは自分だけのプレイリストを作ったり、自分のイメージを音楽で彩ってシェアしたりする自由自在な感覚とは対極のものだ。
でもこのアルバムを聴いている間、誰も自分の感覚を邪魔するものはない。
どれだけたくさんの人とネット上で繋がっている人よりも孤独じゃないと思える、そんな時間を何度も味わうことができる。
本当の意味で聴く人それぞれの人生のサウンドトラックになり得るのは、こんなパーソナルなのに普遍的な物語を持つアルバムなのだと思った。
Mr.Childrenは今の時代だからこそ、そんな「アルバム」であることを極めたアルバムを作り、世に放ったのではないだろうか。(古河晋)
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