TOMOOのNHKホールワンマンは、すべての感情に寄り添う温かく優しいライブだった

「昨年8月のメジャーデビューからわずか1年弱で東阪NHKホールワンマンソールドアウト」と聞くと異例のスピードのように感じるけれど、TOMOOが音楽活動を本格的にスタートさせたのは今から約10年前の2014年のこと。昨夜のライブでは「14歳のときに友人からもらった手紙の返事として書いた曲」など「懐かしいレアキャラ」がセットリストの随所に差し込まれていて、TOMOOが歌とピアノで自分の気持を表現しはじめ、それが多くの心に届くようになるまでの着実な歩みを確かに感じた。

ツアータイトル「Walk on the Keys」の由来について、「私の心の中の旅は陰日向を繰り返していて、いつも光と、光に寄り添った影のことを歌ってきた」と語っていた。ライブの幕開けを飾った“オセロ”では、出会いと別れの狭間に浮かぶ白黒つけられない感情のグラデーションを。キーボード幡宮航太との連弾で新たな輝きを放った“ベーコンエピ”では、共感の嬉しさと分かりあえないことの歯がゆさを。ストリングスが加わった贅沢なバンドサウンドが胸を打った“17”では、子どもから大人に変わるときのセンチメンタルな揺らぎを――。TOMOOはいつも「光と影」のような相反するものを、ひとつの楽曲の中で、そして2時間のライブの中で表現していて、だからこそ私たちの日常にある些細な感情の揺れに優しく寄り添ってくれるのだと思った。

ライブ後には待望のメジャー1stアルバムのリリースと、そのアルバムを引っ提げた全8公演の全国ツアーの開催が発表! このアルバムとツアーを通して、TOMOOの陰日向を巡る心の旅路は、より多くの人の心を辿ってゆくのだろう。(畑雄介)
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