クリープハイプワンマン
2011.10.11 07:33
ツアー「待ちくたびれてクリープハイプがくる」のファイナル公演@渋谷クアトロ。
すごくよかった。
クリープハイプの音が、強く、自由に鳴っていた。
そう感じたのは今、このタイミングでクリープハイプというバンドの在り方が確固たるものになり、その音楽により強い説得力とポピュラリティが宿ったからだろう。
ステージ上でドラムを囲んで円陣を組んでから、超満員の会場に向き合って1曲目を鳴らした4人は、いたって冷静。だけど音は、喜びや興奮を抑えきれないように跳ね回っていた。その躍動感が、今日のライヴがどんなものになるのかを早くも予感させた。
これまでにも何回か彼らのライヴを観ているが、とにかく今日は演奏が図抜けてよかった。
ボトムを支えながらもアンサンブルに色気を添える長谷川カオナシのベースと安定感抜群な小泉拓のドラム、そしてツインギターを存分に生かしたアレンジの上で、各々の色を混ぜ合わせていく小川幸慈と尾崎世界観のギター。
より緻密に組み立てられたアンサンブルは、楽曲を前に押し出す力を手に入れていて、楽曲をポップに輝かせていた。
そこに乗る尾崎のハイトーンヴォーカルは、心にグッサリと深く突き刺さることもあれば、たとえば赤ん坊が何かを訴えて泣きわめく時のようなほっとけないいとおしさがあったり、はたまた、ろくでもない自分を投げやりに嘆くように聞こえたりして、気持ちを容赦なく揺さぶって仕方がなかった。
ミニアルバム『待ちくたびれて朝がくる』の楽曲はもちろんのこと、クリープハイプが尾崎のソロユニットだった頃の"蜂蜜と風呂場"とか"NE-TAXI"の盛り上がりも凄かった。
バンドの形態が変わりながらも、楽曲が変わりなく支持されるのは、彼らの楽曲に、誰もが覚えのある人間の情けなさを明け透けに歌う、泥臭い普遍性があるからだろう。
新曲も数曲披露したが、そのどれもがまるで違う顔をしていてびっくりした。かつ、全ての新曲で「聴いたことのないクリープハイプ」が鳴っている。それだけ猛烈なスピードでバンドが進化しているということだ。
一方MCでは、尾崎が小川に公開ダメ出しをしたり客席にさらっと悪態をついたり、いつも通り。
ただ、ライヴ終盤に、今こうして音楽をやれていること、そして自分たちの音楽が誰かのためになってほしいという内容を話している時の尾崎は、俄然歯切れが悪かった。つくづく、不器用な男だと思った。(中村)