桑田佳祐の「ひとり紅白歌合戦」、感動のフィナーレを観て思うこと

桑田佳祐の「ひとり紅白歌合戦」、感動のフィナーレを観て思うこと
ライブ会場にいた人はもちろん、ライブビューイングで観ていたすべての人がこの深く強いメッセージを完全に共有していたはずだ。
「Act Against AIDS」と「日本の大衆音楽の素晴らしさを再認識する」というメッセージ自体はどちらもシリアスなものだが、
それを他のどこにもないほどのエンターテインメントとして、粋に洒脱にクリアに楽しませてしまうさまは、さすがとしか言えなかった。
音楽人として、表現者として、ひとりの歌い手としての、桑田佳祐という人の凄さに頭が下がる思いだった。

戦後間もない時代から、高度成長期、昭和、平成。そして、平成が終わろうとしている「今」の今まで。
「受け継がれていくべきもの」を背負うという、大げさに言うならば、使命感のような強い気持ちと深い愛が通奏低音にあったライブだった。

自らの身と声を通すことで、すべての大衆文化の魅力を再び輝かせ、再び花開かせ、「今」のリスナーの「今」の記憶に刻み込んでいくこと。
それは、まさにこの40年間、大衆の欲望に真正面から向き合い、リングから降りずに、真っ向から肯定し続けてきた桑田佳祐にしかできない、凄まじい芸だった。
サザンの革新性も、あるいは、サザンのポピュラーさも、ともに生まれてきた源を明かしていくような、愛情深くて、誠実な選曲も文句なしに素晴らしかった。
生きてきたすべてをかけて、文化を歌い、風俗を描き、大衆に向き合い、国民を鼓舞してきた桑田佳祐の凄みにーーというか、ここまでの覚悟を持たざるを得なかった「桑田佳祐」という生き方を思うと、ただただ畏敬の念を覚える。

この夜は確かに「ひとり紅白」の大団円だったが、同時に、日本の歌謡曲の歴史におけるひとつの大団円でもあった。その物語はこれからも永劫に綴られていく。
来年はいよいよサザンの40周年ツアーも待っている。しかと見届けたいとあらためて思う。
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