キム・ゴードンの回想記『Girl in a Band: A Memoir』を読み終わった。面白かった。キム・ゴードンと言えば、インディ・ロック・シーンで最もクールなイメージがあるけど、クールな理由が実証されるような内容だった。
実は発売された翌日に出張の予定があったので、これは飛行機で読むのにぴったりと思ってNYの本屋さんを3軒はしごしたんだけど、全部売り切れだったのだ。「あ、今最後の1冊が売れちゃったわ」と言う店員のお姉さんも嬉しそうだったりした。
NYが誇るキム・ゴードンの本が売り切れというのは、ニューヨーカーとしても何か嬉しい。とりわけ、ビョークじゃないけど、サーストン・ムーアと離婚したばかりだし、女子としては応援したくなるという気持ちも混じっていたような気がする。
回想記のセンセーショナルな部分については、以下のようにニュースで色々と取り上げられている。
クエストラヴがレビューを書いていたり。
http://ro69.jp/news/detail/120358
ニール・ヤングについて語っていたり。
http://ro69.jp/news/detail/120085
ラナ・デル・レイを批判したり。
http://ro69.jp/news/detail/119155
コートニー・ラヴとビリー・コーガンを批判したり。
http://ro69.jp/news/detail/118188
個人的には、まずぐっときたのは、クエストラヴも書いてるけど、最初にバンドの最後のライブについて書いていて、その時にステージで「人生でこんなに孤独を感じたことはこれまでなかった」という部分。あまりに辛くて、思わず線を引いて一端本を閉じてしまったくらい。
しかし上に書かれている批判の部分にしても、全体的にすごくさらっとしてて冷静に書かれているのだ。常にある種の距離感があって、そこがキム・ゴードンぽいとも思った。
個人的に一番びっくりしたのは、彼女がアートシーンの一員とは分かっていたけど、ここまでか、というくらい、今の世界の現代アートで重要な人達はすべてってくらい、彼らが有名になる前から友達なこと。
そもそも最初のボーイフレンドがダニー・エルフマン(ティム・バートン映画の音楽を手がけている)というし、ダン・グラハムと付き合っていたし、ラリー・ガゴシアンがLAの道ばたでまだポスターを売ってた時に、ポスターを印刷するバイトをしていたというし、NYに来て最初に泊まったアパートがシンディ・シャーマンのアパートだったというし。マイク・ケリーとも友達だし、働いていたギャラリーに、まだ無名のリチャード・プリンスが作品を見せにやって来てそれ以来友達というし、当然ジャケ写で使われているリヒターとの出会いも書かれているし。ジェフ・クーンズも出て来るし、とにかく全員が無名時代から友達なのだ。スゴい。NYにいればこういうことになるわけではない。本当にキム・ゴードンがカッコ良かったからこういう人達が集まってきたんだろうなあと思えた。それも、またさらっと書いていてカッコ良いのだ。
サーストンについて書かれた部分は、当然他の章よりさらっとしてなくて、読むのは辛いけど、それでも彼を守ろうとしているところもあって、複雑な心境が伝わってくる。最後にそれでも許せないと書いてあるのは、かなりビシッとしていたけど。
もちろんカート・コバーンについて書いてる部分もエモーショナルな部分のひとつだった。ただ、サーストンと同じで、彼女自身も書いているけど、どこかカートを守ろうとしているところがあってすべてを語っていないように思える箇所でもある。「若くして死んでしまった人については、それに対する心の区切りというのはつけられなくて、私の中でカートは生き続けているし、その音楽で、外の世界でも生き続けていると思う」と書いているところはじーんと来てしまった。
若い時は頭が良くて家族の注目を集めていた兄。その後精神を病んだ彼が、彼女の性格にどのような影響を与えるのかという部分も印象的で、キム・ゴードンのクールさ、冷静さ、闇、秘めた怒り、アート性のすべてがこの本ではちゃんと説明されているのだ。
キム・ゴードンと言えば、NYで取材させてもらった時に、メンバーが揃うのを待っている間に時間があって、サーストンとキムと一緒にブルックリンの洋服屋さんで服を買った思い出がある。サーストンのシャツを2枚選んで、「こういう時に買わないと、ぜんぜん気にしないのよね」と言っていたのが懐かしい。サーストンは、その時道ばたで売っていたカセットテープを買っていた。
年取ってもカッコいいままの夫婦だと思っていたので、別れてしまって本当にショックだった。やっぱ人生ってこんなものだ、と。でも本の最後にキム・ゴードンには新しいボーイフレンドが見付かって終わっているのが良かった。
英語が難しくなくて、そういう意味ではすごく読みやすい本だった。買ってくれる人がいるなら翻訳したいくらいだ。
皆さんもいつか読む機会があればいいのだけど。