マイケル・ジャクソンの2人の少年への性的虐待を描いたドキュメンタリーが上映。 アメリカに衝撃が走る。

マイケル・ジャクソンの2人の少年への性的虐待を描いたドキュメンタリーが上映。 アメリカに衝撃が走る。

現在ユタ州でサンダンス映画祭が開催されているが、その幕開けの1月25日に、マイケル・ジャクソンの2人の少年に対する性的虐待を描いたドキュメンタリー映画『Leaving Neverland』が初上映され、アメリカに大衝撃が走っている。


「この映画を観た後では、2度とマイケル・ジャクソンの音楽をこれまでとは同じように聴けないだろう。またはもう2度と聴きたくないかもしれない」と「Playlisit」は伝えている。また、ガーディアン紙は、「映画が始まって2分で、マイケル・ジャクソンのレガシーは、これで完全に変わってしまうことが分かる」と書いている。ローリング・ストーンは、「観客が大衝撃を受ける爆弾が落とされた」と書いている。

これに対してマイケルの財団はすでに声明文を発表している。「『Leaving Neverland』は、ドキュメンタリーではない。マイケル・ジャクソンがその生涯を通して、そして死んだ今も苦しむ、タブロイド的な名誉毀損である」と。そして、金儲けが目的であると指摘している。

私は映画を観ていないので、可能な限りの記事を読んだが、それを元にすると、この映画はこれまでのセレブリティの問題を描いたセンセーショナルな非公式のドキュメンタリー映画とは何か違うということが分かる。

どのメディアも、この映画で性的虐待を打ち明ける2人の告白があまりに具体的で、嘘だと思うのはかなり難しいと書いているのだ。「LAタイムズ」のインタビューに答えた監督Dan Reedも、2人には一体何が起きたのかを可能な限りシンプルに、正直に、具体的に語るようにとお願いしたそうだ。そうすることで真実が伝わるはずだからと。

この映画は、計4時間で、前半では、この2人が7歳くらいから14歳くらいまでの間にマイケル・ジャクソンに受けた性的虐待が事細かに語られている。それだけでもかなりヘビーだが、さらに、多くのメディアが目を覆いたくなった瞬間は、ネバーランドにいかに秘密の空間が存在し、外部者に見つからないような構造になっていたのかということ。その写真なども紹介されたようだ。

この映画でインタビューに答えているのは、Wade RobsonとJames Safechuck。Wadeは、子供の頃からマイケル・ジャクソンの大ファンで、優勝するとマイケルに会えるというダンスコンテストに応募。5歳で優勝し、マイケルに会えたばかりか、コンサートでステージに上げてもらい一緒にダンス。それ以来、マイケルと友達になる。彼とは「秘密の結婚式」も行ったそうで、高価な指輪も受け取っている。

彼はその後ダンサーとしての才能を開花し、ブリトニー・スピアーズや、インシンクの振り付け師となっている。彼が上映後のQ&A
で印象的なことを語っている。「これを信じたくないというファンに何と言いますか?」と訊かれ、

「僕にも信じられないというファンの皆さんの気持ちが理解できる。なぜなら、ある意味、少し前まで、僕だって同じ気持ちだったから。僕自身がそれを体験していたにも関わらず、僕だって信じられなかったんだ。

数年前まで、マイケルがやったことが悪いことだと思えなかった。だから、信じられない人の気持ちは分かる。いつかそれを受け入れてくれる日がくるかもしれない。または、永遠に受け入れてもらえないかもしれない。でもそれは彼ら次第だから」と声を詰まらせながら語っている。
https://youtu.be/dVQUCWJlJ_w

そしてもう1人のJames Safechuckは、ペプシのコマーシャルに出演。
https://www.youtube.com/watch?v=2RnwEklPC8Y&feature=youtu.be

その後、彼と世界中を旅している。その時の写真や映像が多く紹介されているそうで、これまで見たこともないようなリラックスしたマイケルの姿が見られるという。

2人とも、マイケルのようなスーパースターに自分は特別な存在なんだと思わされたことが嬉しく、完全に彼に魅了されていたという。マイケルには、「これは絶対に2人だけの秘密で、もし誰かに言ったら2人とも刑務所に行く」と言われていたそう。だから、誰にも言えなかったと。さらに、自分達が少年ではなくなった時に自分達が忘れられ、マイケルがマコーレー・カルキンなどと友達になった時には嫉妬すら感じたという。

映画の後半は、1993年に13歳のJordan Chandlerが起こした性的虐待の訴訟について。ここで2人はマイケルを擁護する証言をするように要請されたが、Jamesは親に、「マイケルは良い人ではない」と告白。なので、証言はしていない。

しかし、Wadeはマイケルを擁護する証言をしている。これが論議の対象となる部分だろう。彼の理由としては、自分の未来を考えた時に、ここで証言しないとキャリアが脅かされると思ったからだそう。それを聞いて、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラや、映画『スポットライト 世紀のスクープ』などを思い出した。

マイケルが2009 年に亡くなった後、2人とも結婚し家族を持っている。しかし、その傷は癒されるどころか深くなるばかりで、「秘密は人間を蝕む」と語っているそう。ここですべてを打ち明けたことで、何かしらの許しと癒しが彼らと家族に訪れるのかもしれない。また、彼らと同じような体験をした人を助けるきっかけになればとも語っている。

マイケルの財団は、この映画は「嘘」であり、この2人の証言を完全に真実として全て作られている。そして、マイケル側には意図的に反論する機会は全く与えられずに、彼らの証言を裏付ける家族以外の人々の証言をまったく取っていない。つまりあまりに一方的な作品である、ということを指摘。とりわけWadeに関しては、過去20年間マイケルに対する感謝しか語ってこなかったし、マイケルの性的虐待についても否定し続けてきたのに、マイケル・ジャクソンをテーマにしたシルク・ドゥ・ソレイユのプロダクションに起用されなかった途端にこの発言をするというのはあまりに都合が良すぎる、と。

「金ではないと言っているが、結局いつだって金なのだ。2013年に、同じ弁護士事務所を雇うRobsonとSafechuckは、マイケル・ジャクソンの財団を相手取り訴訟を行おうとした。しかし、それは失敗に終わった。マイケルがもうここにはいない今、彼自身が自分を弁護できないのに、RobsonとSafechuckと弁護士は、彼が存命中すでに無実と証明された申し立てを持ち出し、彼の悪名を広め、金儲けをしようとしている」と。
https://www.rollingstone.com/music/music-news/michael-jackson-estate-leaving-neverland-tabloid-character-assassination-784968/

このドキュメンタリーは、アメリカのHBOとイギリスのチャンネル4による制作。上映が始まる前に、映画の描写によって気分を害された人のために、メンタルケアのスタッフがいると観客に伝えられたそうだ。アメリカでは春に放送される。自分の目で見てまたレポートしたいと思う。

この記事を書くために以下の記事を参照した。
https://www.rollingstone.com/movies/movie-features/leaving-neverland-michael-jackson-doc-sundance-784801/
https://theplaylist.net/leaving-neverland-michael-jackson-review-20190126/
https://www.theguardian.com/film/2019/jan/25/michael-jackson-documentary-leaving-neverland
https://www.usatoday.com/story/life/movies/2019/01/25/michael-jackson-leaving-neverland-film-shocking-allegations-sundance-film-festival/2681648002/
https://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-sundance-chang-notebook-leaving-neverland-20190125-story.html
https://variety.com/2019/film/news/leaving-neverland-most-shocking-moments-michael-jackson-1203118535/
https://www.latimes.com/entertainment/movies/la-et-mn-leaving-neverland-sundance-dan-reed-20190125-story.html
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