The 1975やビョークがコラボした温暖化対策を訴える活動家がNYに到着。「16歳の私が主張するために大西洋を横断しなくてはいけないなんて狂ってる」と語る

The 1975やビョークがコラボした温暖化対策を訴える活動家がNYに到着。「16歳の私が主張するために大西洋を横断しなくてはいけないなんて狂ってる」と語る - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

先週のニュースなのでもうご存知の方も多いと思うが、16歳にして地球温暖化の阻止を訴えるために活動し、The 1975やビョークとのコラボでも注目を集めるスウェーデン人のグレタ・トゥーンベリが、二酸化炭素を排出しないヨットに乗り、2週間かけてヨーロッパからNYに到着した。


NY市民は大歓迎だったが、その記者会見で彼女は「16歳の私が主張するために、大西洋を横断しなくてはいけないなんて狂ってる」と語った。その言葉があまりに正しくて突き刺さった。また続けて、「地球温暖化と環境問題は、地球規模の危機であり、人類が直面した最大の危機でもある。なので、それぞれ相違があっても、それを乗り越えて協力し対策をしなければ、私達は全員失敗してしまいます」とも述べている。

ビョークが今年の5月にNYで行なった最新のライブでも彼女のスピーチが使われている。その時のレポートにも書いたけど、地球温暖化を訴える16歳の彼女も、フロリダで銃乱射後に銃規制を訴えた高校生達も、また17歳で今世界に大旋風を巻き起こしているビリー・アイリッシュにも、どこか共通しているところがあるように思う。その言葉は単刀直入で、大人のことはまったく信じておらず、この危機に自分達が立ち向かうしかないと思っていること。そして、これがどれだけ早急に対処しなくてはいけないことなのか分かっていながらも、それなのに全員が思い切り落ち着いていること。

The 1975やビョークがコラボした温暖化対策を訴える活動家がNYに到着。「16歳の私が主張するために大西洋を横断しなくてはいけないなんて狂ってる」と語る - Santiago Felipe 2019 (C)One Little Indian/The ShedSantiago Felipe 2019 (C)One Little Indian/The Shed

今のティーネージャーは、そのひとつ前の世代とはまったく違う概念を持って生まれてきているように思う。例えばブッシュ政権の時に誕生したブルックリンのインディ・シーンなどは、非常にフラジャイルな場所に慎重にその理想主義を積み重ねたようなところがあると思う。あの時代はそれが必要だった。しかし、今のティーネージャー達は、そんなに慎重に手続きを重ねて語っている時間はない、と言わんばかりに、その言葉に恐れがなく度肝を抜かれる。

ビリー・アイリッシュの人気が今年一気に世界に広まってしまったのも、それが理由な気がするのだ。

The 1975やビョークがコラボした温暖化対策を訴える活動家がNYに到着。「16歳の私が主張するために大西洋を横断しなくてはいけないなんて狂ってる」と語る - Santiago Felipe 2019 (C)One Little Indian/The Shed
Santiago Felipe 2019 (C)One Little Indian/The Shed

グレタは、大統領について訊かれ「科学者の言っていることを聞いて欲しい」と答えた。

また、彼女のスポークンワードが、The 1975の来年発売される『Notes on Conditional Form』の1曲目“The 1975"で使われているのはご存知の通り。



彼女は、The 1975の曲の中でこう語っている。

「私達は、私達より上の世代が失敗したと認識しなくてはいけない。そして現在行なわれている政治的なムーブメントもすべて失敗した。だけど、人類はまだ失敗していない。確かに失敗しそうにはなっている。でもまだやり直す時間は残っている」

「私達は、災害による莫大な数の人達の、言葉にならない犠牲に直面している。だから今、それを礼儀正しく語ったり、何ができて何ができないのかと言っている場合ではない。今は、明確に語る時なのだ」

ビョークのNY公演は、地球温暖化に直面した世界を舞台に、そこから女性同士が助け合い牽引し、未来のユートピアを創造したような画期的な内容だ。ちなみに、実際グレタもビリーも、銃規制を訴えたフロリダのエマ・ゴンザレスもみな女性だ。
https://rockinon.com/blog/nakamura/186218

ビョークは、そのメッセージが明確に届くように、ライブの終わりの方でグレタの長いスピーチ映像を流している。

その映像の中で、グレタはこう語っている。以下要約。

今、少数の人達が想像を超えるような金儲けをし続けたいがために、私達の文明を犠牲にしようとしています。お金持ちが贅沢な暮らしを続けているために、生物圏を犠牲にしているのです。限られたお金持ちだけが贅沢をするために、多大なる犠牲を払っているのです。

2078年に、私は75歳の誕生日を祝うことになります。もし子供がいれば、私は子供達と一緒にその日を過ごすでしょう。その時、子供達になぜまだ時間があったのに何もしなかったのか、と聞かれるかもしれません。人はよく子供以上に愛するものはないと言います。しかし、あなた達はその子供達の目の前で、彼らの未来を奪っているのです。

あなた達が、政治的にどんなことができるのか考える前に、とにかく何をやるべきなのか考えなかったら、希望はありません。

危機を危機とみなさなかったら、それを解決することはできません。

そして、もし今のシステムの中で解決策を見つけられないなら、私達はそのシステムを変えるべきなのです。


偉いなあと思ったのは、 The 1975は今年のレディングで新しいTシャツを作らず、これまで残っていたものにプリントして売ったこと。また、昔のTシャツを持って来たファンには無料でリプリントしたそうだ。


さらに、The 1975はビニールによるゴミを減らすために、来年発売されるアルバムはビニールでの包装もなし。CDもプラスチックケースは使わない。さらにアナログも、重いものは作らず、軽量のものを作ることにするそうだ。

ビリー・アイリッシュは、銃規制を訴えるようにと、インスタのストーリーで語っていた。

「今銃乱射が起きていて、どれだけ恐れ、心配しているのかを訴えるためにこのビデオを作っている。そして『責任者』がそれを変えるため、いかに何もしていないのかを訴えるために。以下の番号にテキストメッセージを送って、地元の議員に何かするよう訴えて欲しい。お願いだから。LOVE YOU 」

https://twitter.com/starylize/status/1162077074183675904

アメリカでは巨大な台風が接近しており、アイスランドでも初めて氷河が溶け、ブラジルでは地球上の20%の酸素を生産しているアマゾンが燃えている。アメリカの大統領は、その最中に行なわれたG7の地球温暖化会議には欠席。銃規制の動きもない。ビリーが訴えた後、テキサス州では7人が亡くなる銃乱射事件も再び起きている。

NYの記者会見で、グレタは「私はこんなことをしないで普通に学校へ行きたい。だけど、これ(気候変動などの問題に対する意識)を変えたいと思っている」と語り、さらに「上の世代の人達は、私達に『普通の子供のように振る舞え』と言うべきじゃない。なぜなら私達は、あなた達の後始末をしているのだから」とも答えている。

グレタは、9月23日に国連で行な行われる地球温暖化サミットに出席する。

中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする