史上最も重要と言われているアメリカ大統領選挙まで1週間を切った。私はもう生きた心地がしなくて、これを書いている手もわなわな震えている。しかも、それ以前に最高裁判事まで決まってしまって、大統領選挙よりそのほうが怖いのでは?とも思っている。さらにアメリカ国内でのコロナの感染者数も過去最高を記録し……本当に世紀末的な日々で気分はどん底だ。
しかし、アーティスト達は人々が弱っている時こそ、その空気を察知してかものすごい力を発揮する。「投票しよう」と最後の最後までさらに激しく呼びかけている。とりわけ、ここにきて目立つのは、さらに具体的に、激戦区にしぼった活動だ。
また、それ以外にも凄く良いニュースとしては、コロナ禍という事情に加え、大きな問題となっている"Voter Suppression"という「組織的投票妨害」に反発してか、記録的な数の事前投票、郵便投票が行なわれているのだ。そこですでに記録的な数の若者が投票している(涙)!
https://twitter.com/fred_guttenberg/status/1319828267625598977
もちろん、ビリー・アイリッシュや、テイラー・スウィフトなど、若いファンを持つアーティスト達が自分には「責任がある」と感じて投票を呼びかけたおかげだけではないと思うが、それが少なからず影響したはずだ。
最近、投票に一番大きな影響を与えたアーティストの1人は、テイラー・スウィフトだと発表されていた。
https://twitter.com/billboard/status/1321813276926365697
アーティスト達の活動なども書ききれないくらいあるのだけど、その中から若者の投票なども含め、最新情報をいくつか紹介する。
1)Z世代、ミレニアル世代が記録的な事前投票
事前投票の数字だけ見ると18〜29歳の投票数が記録的だ。
これはコロナ禍ということもあるし、そもそも全体の事前投票数が増えているので、最終的にどうなるのかはまだ分らないが、大きなニュースとなっている。
https://twitter.com/HeadCountOrg/status/1319757601052233729
https://www.nbcnews.com/politics/2020-election/young-voters-swing-states-are-big-part-early-surge-could-n1244923
ーまずハーバード大の調査によると、今年絶対に投票すると答えた18〜29歳が63%でこの20年間で最高。2016年は47%だったので大幅に上回っている。
https://iop.harvard.edu/youth-poll/harvard-youth-poll
ー現時点で600万人がすでに投票。2016年は同時期に200万人。
ー30歳以下で今回初めて投票した人の数が、2016年のすでに2倍。
ー激戦区での30歳以下の若者の投票数がとりわけ記録的。
テキサス州は史上最高が見込まれている。2016年は、28万8000人だったが、80万人がすでに投票。 そのうち66%は2016年には投票しなかった人達だ。
フロリダ州ではすでに51万4000人が投票。2016年は約半分の23万人。
ペンシルバニア州でもすでに17万6000人が投票済み。2016年の8倍。
ミシガン州、2016年の7倍。
ウィスコンシン州、2016年の3.5倍。
事前投票者がジョー・バイデン支持とも限らないが、NYタイムズ紙の調査によると、18~29歳のジョー・バイデンの支持率は58%。トランプは30%。
https://int.nyt.com/data/documenttools/us101520-crosstabs1/016bc5d8ae03038c/full.pdf
さらに同じ調査によると、61%の若者が事前投票すると答えたそうで、その数字はどの年齢層より高い。しかし、今後当日に向けて数字は減少していくことも考えられるため、どのメディアも、まだ喜ぶのは早いと書いている。が、早速少ないよりは良いニュースだと思う。
ー投票する際に一番大事なこと。
18~29歳の若者が、投票する際の一番大事な基準は、
1位 地球温暖化政策
2位 人種差別への対策
と答えている。彼らにとっては両方とも命に関わる問題なので、当然とも言える。
また、投票への意欲という調査では、前回は意欲的と答えた若者が31%だったのに対して今回は51%。
2016年の大統領選挙では、29歳以下は40%代で、どの年齢層より投票者の割合が少なかった。なので今回の結果を受けて、CNNなども、今回は若者がどれだけ投票するかが選挙の結果に大きく影響するかもしれない、と報道していた。
https://www.cnn.com/2020/01/02/opinions/young-voters-midterm-elections-solomont-glickman/index.html
2)アーティスト達の活動。これまでにも増して激戦区にしぼった投票呼びかけが増えている
a. ビリー・アイリッシュがミシガン州で呼びかけ
https://twitter.com/GaryPeters/status/1321201810988797952
「ミシガン州での結果がアメリカの未来を決定するかもしれないということ忘れないで。だから頼りにしている。みんなマスクをして、安全に気を付けて、お願いだから投票して」と言っている。
ミシガン州は大事な激戦区のひとつで、1992年ビル・クリントンからオバマ元大統領までずっと民主党が勝ち続けてきたのが、前回はヒラリー・クリントンがその差わずか1万票で負けている。それをなんとか今回は民主党が奪回したいと狙っているのだ。
b. エミネムもミシガン州で呼びかけ
ミシガン州と言えば、エミネムだ。ミシガン州での投票が今回大事であることを訴え、事前投票所に行くと、DJや、無料の食事が用意されていると呼びかけていた。
https://twitter.com/ShadyRecords/status/1316727371148525569
https://twitter.com/Eminem/status/1319778754999296001
c. デトロイト出身のリゾもバイデンのキャンペーンに登場
リゾはバイデンのキャンペーンでスピーチをして、「この4年間にまた戻りたくない」とバイデンへの投票を訴えた。また彼女はインスタグラムなどでも積極的に投票を呼びかける投稿を続けている。
https://www.instagram.com/p/CG5Vy-0Bc1S/?igshid=ix8bqrlijhco
先頃ビルボード・ミュージック・アワーズで受賞した際のスピーチでもこう言っていた。
https://www.instagram.com/p/CGWqnO-hkLs/?igshid=1ijq9zotkmn35
「投票妨害が行なわれているということは、私達の票にパワーがあるという証拠だと思う。彼らは私達のパワーを恐れている証拠だと思う。あなたがあなたらしくあるということにはパワーがある。あなたの声にはパワーがある。音楽を通してであれ、プロテストを通してであれ、投票を通してであれ、あなたのパワーを使って欲しい。あなたの声を使って欲しい。妨害されることを断固拒否して欲しい」と正にパワフルなスピーチを行なった。
CNNのレポートによるとミシガン州は、現時点でバイデンが51%支持、現大統領が43%となっている。
d. ロナルド・レーガン以来共和党支持のテキサス州を民主党支持に変えようという動き
アーケイド・ファイアのウィン&ウィル・バトラーが、出身地であるテキサス州でベト・オルークと協力して、1980年以来共和党支持のテキサス州を民主党支持に変えようと運動している。
https://twitter.com/arcadefire/status/1321225879872278528
ウィンはカナダ国民になったが、現在テキサス州に戻って民主党に投票するように呼びかけている。またこの最中にテキサス州で新作のレコーディングもすると言っていた。
前回も大差でヒラリーが負けているが、なんと今1%の差しかない接戦となっている。 万が一バイデンが勝てば40年ぶりの勝利にして、選挙人投票が36もあるので、大事件となる。また今回全米で注目されているのは、上院議員を4人以上民主党に変えられるかであり、テキサス州ではそれも大事なポイントとなっている。
https://projects.fivethirtyeight.com/polls/president-general/texas/
e. ウィスコンシン州でジャスティン・バーノンが地道な草の根運動
ウィスコンシン州も大事な激戦区であり、ウィスコンシン州と言えば、地元愛の強いジャスティン・バーノンが地道に運動を続けている。人種差別問題や、LGBTQコミュニティなど地元で活動する人達と対談をし、場合によっては新曲も披露している。
https://twitter.com/EauxClairesWI/status/1318283497547718656
ここではザ・ナショナルのアーロン・デスナーとのプロジェクトであるBig Red Machineとして、新曲“Latterdays”を披露。ジャスティン曰く、「未来から今を振り返った時に、僕らは出来る事をすべてやり尽くしただろうか?」と問いかける曲だということ。それがアーティスト達みんなのモットーになっているようにも思う。
ウィスコンシン州は1988年以来民主党支持の州だったが、前回の選挙ではわずか2万票差で、ヒラリーが負けている。なので、ジャスティンの地道な若者への呼びかけが大事なのだ。
調査によると現在バイデンが12%リードしている。
https://projects.fivethirtyeight.com/polls/wisconsin/
そしてなんと今日、アーケイド・ファイアがこのジャスティンを支援して、ウィスコンシン州に投票を呼びかけた。
https://www.youtube.com/watch?v=JeLlzxsKFko&feature=youtu.be
「ウィスコンシン州のみんなこんにちは。両方の政党を支持する人達のサイトだということは分かってるけど、一番大事な選挙だから必ず投票に行って欲しい」と語っている。そして『ザ・サバーブス』から“Culture War”を披露! ジャスティン・バーノンとウィン・バトラーが協力し合ってるってだけで大感動だ(涙)。また、別の意味では、曲のアレンジを大きく変えていること、それから、バンドがレコーディングの体勢に入っているのがよく分かるセッティングであることもポイントだ。
f. コモン
コモンは、1つの州のみならず、ノースカロライナ州などを含む重要な激戦区でコンサートを行い、とりわけ若い黒人に投票を呼びかけている。
https://twitter.com/ossoff/status/1321451812965277701
https://twitter.com/common/status/1320881635693309952
g. その他誰もが必死
それ以外にも書ききれないくらいあるのだけど、どのアーティストもあらゆる手段で投票を呼びかけている。
ーテイラー・スウィフト
今回の選挙で最も影響力が大きかったと発表されたテイラー・スウィフト。前回は支持者を発表しなかったことで批判されてしまったが、今年は早くからトランプを批判したばかりかバイデン支持も表明した。
https://rockinon.com/blog/nakamura/195266
https://twitter.com/taylorswift13/status/1313938080290803715
また最近テイラーのCDを注文して、すぐに届いたのだけど、何と中にVOTE(投票して)というカードと、星の切り抜きが入っていた。そういう小さい努力にも感動してしまう。
さらに上にも書いたが、最近の調査によると、全世代を通して選挙があることを最も認知させたのは、
1位 NBAのスーパースターであるレブロン・ジェームズ 36%
2位 テイラー・スウィフト 13%
3位 カーディ・B、ビヨンセ、コリン・キャパニック それぞれ5%
Z世代(25歳以下)だけ見ると、
1位 レブロン・ジェームズ 22%
2位 テイラー・スウィフト 18%
3位 カニエ・ウェスト 11%
4位 ビヨンセ、カーディ・B 8%
という結果が発表されている。注目して欲しいのは女性と黒人が積極的に活動し、影響を与えているということだ。人種差別問題、女性の権利などまさに命がかかっている問題が、大統領が誰になるかで大きく左右されるからではないかと思う。
ーフランク・オーシャン
普段ほとんど公に出て来ないフランク・オーシャンからいきなり「投票しよう」というポスターと人に配るためのポストカードが届いたので感激した。アメリカ在住で、これまで彼のグッズを買ったことがある人に送られたのだと思う。そこに掲げられていた大事なメッセージは、前回の投票で一番多かった層は、「42%もの投票しなかった人達だ」と。だから投票しようと。
ーカーディ・B
元々バーニー・サンダースの熱狂的な支持者だったが、だからこそ、バーニー支持者が多い若者に、ここで諦めずに、バイデンに投票するように呼びかけている。彼女の大統領討論会のライブ中継は最高だった。
https://www.instagram.com/p/CFvgnb3AvvO/?igshid=13hmhrualaqtu
また、バイデンと対談もして、彼女が大事に思うことについてバイデンに質問していた。
https://www.youtube.com/watch?v=o71LtfUtSAo&feature=youtu.be
ーフー・ファイターズがジョー・バイデン支援イベントに出演
フー・ファイターズが、10月25日に行なわれたジョー・バイデンの支援ライブに出演。
https://twitter.com/consequence/status/1320180706086211591
“Times Like These”を披露している。1時間55分あたりから始まる。
https://www.youtube.com/watch?v=KDIAfOJ8kXA&feature=youtu.be
ーNIN
ナイン・インチ・ネイルズが、気合いの入ったマスクを発売したのだが、その一番下に読めないほどの小さい字でトレントからのコメントがあった。その最後に「もしアメリカに住んでいるなら、お願いだからジョー・バイデンに投票して欲しい」と書かれていた。
https://twitter.com/nineinchnails/status/1321467804772544512
ーハリー・スタイルズ
「僕は投票できないけど、出来るなら優しさで投票する」とジョー・バイデンの映像を投稿。
https://twitter.com/Harry_Styles/status/1321174540223795201
ーレディー・ガガからエディ・ヴェダーまで
その他投票を訴えるアーティスト
https://www.instagram.com/reel/CG3QxOBn5YW/?igshid=1baen78mg5fua
https://www.instagram.com/reel/CG1U-QEjAOm/?igshid=1nftde899l21
https://www.instagram.com/p/CEpLus5lykp/?igshid=16v84b53hfpoq
https://www.instagram.com/p/CGNv3HvhLQ3/?igshid=18espee170xbt
https://www.instagram.com/p/CGVPaXcjLyL/?igshid=6fd2phi8plwh
https://twitter.com/PopCrave/status/1320058320137285632
https://www.instagram.com/p/CGlVBBepcvG/?igshid=jk1prn36zs7c
ービヨンセ
6月に行なわれたBETアワーズで「この選挙に命がかかっていると思って投票して欲しい。本当にそうだから」と訴えたビヨンセ。彼女の言葉がその後の空気感を決定したような気がする。それが合言葉のようになっていた。
https://www.youtube.com/watch?v=ekkM7NzCLEM&feature=youtu.be
今後、数日しかないが、まだまだビリー・アイリッシュなども出演するイベントがあるし、アーティストの活動は書ききれないくらいだ。個人的には、アーティスト達が国民を引っ張っているというよりは、彼らが全体的な空気を感じ取って一人一人の言葉にならない言葉を代弁してあげているんじゃないかなと思う。
女性、若者、黒人アーティストが目立っているのは、警察による暴力や、中絶の権利など、彼らこそ人権が危機に晒されているからではないかと思う。
激戦区の中でも最も重要とされているペンシルバニア州の列で踊ってる人達を見て感激した。
https://twitter.com/jerrysaltz/status/1320326810488442880
オバマもツイートしていたが、投票妨害があるため、11時間も待って投票する人達もいるのだ。
https://twitter.com/BarackObama/status/1316846446197563393
前回の選挙では70%の確立でヒラリーが勝つと言われていたが、負けてしまった。それがトラウマになっているので、とにかくジャスティン・バーノンが言うように、やり残したことはないと思えるように最後までアーティストは頑張り続けていると思う。
https://twitter.com/NateSilver538/status/1321240387504218117
『ロッキング・オン』最新号のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。