アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。

アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。 - pic by Pooneh Ghana for Primavera LA 2022pic by Pooneh Ghana for Primavera LA 2022

発表された瞬間からメンツが良すぎて絶対に行きたい、けど遠くて行けないと思っていたフェス、プリマヴェーラサウンドLA。

アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。

これは2000年にバルセロナで始まったフェスで、いつもバルセロナのラインアップも良くて羨ましいなあと思っていたのだ。それが、今年初めてアメリカLAに上陸。9月16〜18日にLA State Histroric Parkで開催された。

このフェスが良いのは、言ってみればかつてのコーチェラみたいなところだ。

小さい文字で書かれているバンドまで、絶対に観たいようなバンドが集まっているばかりか、恐らくバルセロナで始まったから、とりわけUK、ヨーロッパ勢の今観たいバンドが集結していること。Pinkpantheressから、Fontaines D.C., Dry Cleaning, Squidなど、以前のコーチェラだったら絶対にブッキングしていたような旬のバンドが揃っている。

さらに、Clairo, Mitski, James Blake, King Kruleなど中堅どころも最高だし、ヘッドラインは、4年ぶりの新作『The Car』を発表すると発表したばかりのアークティック・モンキーズが久しぶりのライブ披露で完璧だ。

しかも、こういうクールなメンツの中に、しっかりCHAIが入っているのも素晴らしい。そして何より全体として、今のアメリカにはないオルタナなメンツのフェスになっているのが個人的には最高だと思った。

観たかったけど、NYのライブはチケットが即完で買えなかったロードやClairoも観られるし、NINはコロナ前にチケットを買っていたけど観られないままになっていたしで、今年最高と言えるラインアップのフェスだとすら思った。本当は遠いので行けないと思っていたが、ひょんなことから行けることになった。そして行ったら思っていた通り最高のフェスだった。

以下、簡単なハイライト。

1)アークティック・モンキーズの人気が凄すぎた。
3日間で明らかに最も人出で多かったのが3日目。アークティック・モンキーズがトリの日だった。4年ぶりにアルバムを出す彼らがアメリカでもどれだけのスーパースターだったのか、どれだけファンが彼らのライブを待っていたのか、どれだけ彼らがファンの心をガッチリ掴んでいたのかを改めて思い知らさせた圧巻のライブ。

内容的には、久しぶりだし、フェスだしで、ヒット曲連発の王道セットリスト。
『AM』の”Do I Wanna Know?”に始まり、”R U Mine?”に終わった。中で、新曲の”I Ain’t Quite Where I Think I Am”も演奏。歌い終わってから、「今のは新曲でした」と紹介していた。

男子は、まるで自分がアレックスになったかのごとく渋い声で歌いまくるし、女子は踊りまくるし、時々私の周りにいた女子達は前奏のギターリフまで歌っていた。女子がギターリフを合唱するってあまり観たことないというくらいの盛り上がり。こんな男子も女子も無我夢中になり、狂わせるようなロックバンドとファンの関係性って長年観てなかったかもとすら思ったくらいだった。とりわけ、UKバンドでヘッドライナー級になったバンドって本当に数えるほどだ。

このライブは久しぶりの新作を盛り上げるような、アークティック・モンキーズのスーパースターぶり、アレックスのロックスターぶりを思い知らされた最高の内容だった。

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2)NIN
コロナ前にツアーを発表していたNIN。キャンセルしてようやく今回ツアー再開したが、よく考えたら新作があるわけでもない。一体どんなライブになるかと思ったら、1曲目”Somewhat Damged”をオリジナルより爆音で、より速く、よりタイトな演奏で幕開けをしてそのまま有無を言わせず走り切ってしまう強烈な内容だった。何か考えるような余地もない。観客がその瞬間、今だけと向き合う内容だったのが最高だった。翌日Squidも、「昨日のNIN観た?最高だったよね」とステージで言っていた。

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3) ロード
とにかくプロダクション全体のデザインが美しすぎる。シンプルなのに、効果的に柔らかな幸せのオーラを放っていた。「夏はまだ終わってない」と語っていたけど、最新作の放つポジティブさも、アルバムとしてだけ聴くよりライブで体感した方がより実感できるとこの日改めて分かった。

アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。 - pic by Ismael Quintanilla III for Primavera LA 2022pic by Ismael Quintanilla III for Primavera LA 2022

4)バンドの演奏力が高すぎる若手バンド:Fontaines D.C., Dry Cleaning, Squid
この3バンドは、NYですでにライブを観ていたので分かっていたけど、ライブ演奏力が高すぎる若手バンド達だ。さらに、彼らは、ボーカルのカリスマ性は強烈なのだけど、それだけで引っ張るバンドではなくて、それを支えるバンドメンバー全員1人1人の演奏力がものすごく高くて、それがガチで噛み合っていて、全員の聴かせどころがあるので、ライブの満足度が最高なのだ。

Fontaines D.C. とDry Cleaningは来日も決まっているので絶対行って欲しい。Dry Cleaning は新曲も2曲披露したけど、それを聴く限りでは、モノトーンだった前作から、ギターとボーカルが少しだけ色を帯びたかな、という気がした。

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5)待望のPinkpantheress
アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

NYのライブチケットは全然取れなかったので、待望のライブ。世界で最も注目されている新人と言っても過言ではない彼女だが、全くそのプレッシャーを感じさせない。自分が音楽を作っている場所から地続きな等身大のライブを堂々やっていたのにまず感動。

トラックのキレとセンスの良さに、彼女のふんわりしたメロディと歌い方がなんとも今で、重苦しい世界を生きる我々の心を軽やかにしてくれた。期待通りのライブだった。

5)さらに実力と人気を拡大させるMitski, Clairo
Mitskiの人気が圧倒的で、やはりここ数年で出てきたインディアーティストの中でも破格だったことを実感。前回のツアーでは最後にギターをかき鳴らしたけど、とうとう今回はギターを弾かなかった。

Clairoは、前回フェスで観た時は、そのか弱さに大丈夫かなと少し心配したけど、ガッチリとたくましくバンドサウンドに成長していたのが嬉しい驚きだった。2人とも着実により大きくなっていた。

アークティック、NIN、ロードがヘッドライン、今時アメリカにない最高なオルタナフェスに行って来た。スペインのプリマヴェーラサウンドがLAに初上陸。 - pic by Lindsey Byrnes for Primavera Sound LA 2022 pic by Lindsey Byrnes for Primavera Sound LA 2022

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6)CHAI
こんな強烈なメンツの中で、自分たちの場所をしっかりと確保していたばかりか、彼女達を観にどんどん観客が大きくなり、しかも、老若男女、様々な人達が集まっていたのもさすが。

何より、全ての人達を踊らせ、笑顔にし、楽しませていたのが、最高。1曲目でギターをかき鳴らしたのもカッコ良かった。彼女達の元々持っている才能の他に、世界各国でライブしてきた体験から勝ち取ったステージだと思った。

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7)SHYGIRL
今回初めてライブを観て、90年代っぽい懐かしさとオルタナポップ、ダンス、が絶妙にミックスされたサウンドが最高に心地良かった。こういう初体験ができるのがフェスの良いところ。

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9)ARCA
このフェスの良いところの一つは、土地柄南米のアーティストもしっかりとブッキングしているところ。ARCAは中でもカットんだ例だけど、誰よりもこのフェスを象徴していたとも言える存在だった。

ARCAの盛り上がりがすごくて、次に何が起きるのか分からないスリルとともに、ライブを少しでも長く観ていたかったので、離れらなくて、アークティック・モンキーズで観やすい位置を確保できなかったというのもある。

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10)観客が最高。
これまで長い間アメリカのフェスを数々観てきているけど、こんなに様々な観客が集まっているフェスを観たことがない。何より驚いたのは、アメリカで普通メジャーなフェスと言えば、20代が中心で、最終日にフー・ファイターズや、グリーン・デイがヘッドライナーだとそれを目的に40代以上のファンが集まる。というものだが、このフェスは、初日のロードの日から、40代以上も当たり前に来ていた。

しかもLGBTQコミュニティも、白人以外の観客も、大勢。誰もが音楽を楽しみに来ていたのだ。さらに、その他のフェスにありがちな流行の服というのも、特に見当たらなくて、様々な服装でもあったので、本当に本当に感動した。それがLAのフェスはいつもそうなのか、このフェスがオルタナだったからなのか、がいまいち分からなかった。どちらにしても、最高。

プリマヴェーラはLAのみならず、ブラジル、アルゼンチン、チリでも開催されている。主催者はインタビューによると、

「バルセロナのプリマヴェーラを世界中から観に来るので、世界に拡大するのは自然な流れ」と語っている。さらに
「キーはラインアップだ」と。やはり!

「過去、現在、未来の、クラッシックでカッティングエッジなアーティストを集めること。さらに国際色豊かで、かつ地元シーンを象徴するアーティストも入れること。そのミックスの仕方が大事」だと。実際その通りのライナップになっている。
さらに「ヘヴィロックも必ず入れること。忠実なファンがいるから。しかし、全体としては、ロックでもポップでも、オルタナティブなをラインアップにするのは、バルセロナで開催している時からこのフェスのDNAなので、それを失うことはない」と。

その結果が、このフェスを今のアメリカにはないフェスにしている。

会場が州の公園で芝生や木もあり最高だし、広すぎないから疲れないし、暑くないし寒くない。何より駅の真前でLAにして車がなくても街中から行きやすい。ライナップが気に入ったら、日本からでもぜひお勧めです!

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