Czecho No Republic『MANTLE』:ポップに戦え、キュートに突き刺せ

Czecho No Republic『MANTLE』:ポップに戦え、キュートに突き刺せ

7月16日発売のメジャー2ndアルバム『MANTLE』。すっげえいいアルバムだ。
なぜか。このアルバムはCzecho No Republicにとって戦いのアルバムだからだ。

思えば、5月のSHIBUYA-AXワンマンで山崎正太郎がボウズになってみせたとき、僕は心から興奮と感動を覚えたものだった。変な意味ではない。そういう趣味はない。ただ、ヤケクソなのか何なのかしらないがチェコが全力で戦っていることがわかったからだ。あと、正太郎のボウズが意外なほど似合っていたというのもある。

では彼らは何と戦っていたのか。自分たちの過去と現在、そしてそこにまとわりつくイメージとだ。カラフルで、ポップで、クールで、キュートな、総じて「オシャレ」なチェコ、というイメージ。決して間違ってはいないのだが、確かに、とくに武井優心にとっては、いやいや、それだけじゃないから、という話なのだ。彼は根暗でオタクで、自分に自信が持てないのを必死でがんばって生きているやつである。キラキラ眩しいオシャレバンドとはまったくもって正反対の男である。

だから、チェコは戦うことにした。そのイメージを引き受けるのでも、それに迎合するのでも、そこから逃避するのでもなく、戦うことにした。というのがこのアルバムだ。たぶん異常に音楽好きで実験好きのバンドなので、もっとパブリックイメージから飛距離のある、暗いアルバムとか先鋭的なアルバムとかを作ることもできただろう。それも聴いてみたいが、でもそれでは戦って勝つことにならない。あくまでポップでクールなサウンドを基調としながら、でも自分たちのやりたいことも妥協しない、というポイントに着地しなければいけない。難しいトライアルだ。でも彼らはそれをやりきった。それがこの『MANTLE』だ。

このアルバムはポップである。そしてかっこいい。だがそのポップさとかっこよさは、『NEVERLAND』のそれとはまったく違う。ポップであるのと同じくらい尖っていて、光と同じだけ闇がある。これがチェコである。「MANTLE」とは英語でマントのことであり、転じて「覆い隠すもの」という意味もある。このアルバムはマントに隠れて作られた反抗のアルバムだが、同時に着ていたマントを脱ぎ去るような勝負のアルバムでもある。すっげえいい。

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