セルフレーベル「NF Records」立ち上げ記念でもある、サカナクション約1年半ぶりの全国ツアー、アリーナ編のファイナルを飾る日本武道館2DAYSの2日目。クラブミュージックの密室的な熱狂とライヴハウスの衝動開放感を壮大なアートフォームへと展開してきたサカナクションだけど、今日の武道館で多種多様な演出とともに響かせていたのは、ダンスもロックも上書きしてさらなる高揚の頂を目指す途方もないクリエイティヴィティと揺るぎない意志そのものだった。

そして山口一郎。歓喜のコンダクターのように歓声とダンスを煽り、パンクギタリストのように飛び跳ね舞台を踏み鳴らし、メロディの化身のようにあらゆるフィルターを全開放して高らかに歌い、「やっぱ楽しいね、ライヴ。やばい！」と喜びを露にする。「今日のセットリストどこがよかった？」とメンバーにMCを振りつつ、「顔パンパンじゃない？」と江島を改めてまじまじと見て会場を沸かせたり、「俺が一番サカナクションのファンだから！」と観客とバンド愛を競ったり、この瞬間を全身で謳歌していることがありありと伝わってきて嬉しくなった。

レーベル設立に触れ、「必ずみんなに、音楽で恩返しをします」と話していた山口。“新宝島”のエモーショナルな風景とともに、その言葉がじっくりと胸に残る熱演だった。ツアーはここからホール編へ。今日のライヴの模様は後日レポートしますのでお楽しみに。（高橋智樹）