『崩壊アンプリファー』リリース当時の私は24歳で、JAPAN編集部で働いていた。今からすれば嘘みたいな事実なのだが、当時、JAPAN編集部で、彼らの評価はそれほど高いわけではなかった。そんな中で、熱心に推していた編集部員はKという私の一つ年下の女性。つまり「バンド好きな女の子」が、最も彼らの可能性を見抜いていたのだ。確かに歌と演奏は荒削りだったし、ヴィジュアルも抜群というわけではなかった(失礼!)。しかし、同世代にはビリビリくる焦燥感ときらめくメロディ、等身大の魅力があった。
私は彼らのレーベル、UNDER FLOWER RECORDSからリリースしていたバンド(ZEPPET STOREやShortcut miffy!など)が好きだったのでチェックしていた。いわゆるギターポップが豊作なレーベルで、アジカンもその一つだと思われていたが、どうも私にはそこに落ち着いているように聴こえなかった。ギターポップ特有のキュートさより、当時よく自分が通っていたパンクのライヴハウスに漂う汗臭さを感じたから。今思えば、ギターポップとエモの架け橋のような、浮遊した立ち位置のバンドだったのだ。
言うまでもなく、それから彼らはジャンルなどで語るべきではないような、日本を代表するバンドへと駆け上っていく。でも、原点は今作で芽を出していた「等身大のいびつで眩しいオリジナリティ」に在ると思うのだ。《この不確かなやすらぎすら/僕には居心地のいいものです/いずれ全てが無に帰るとも/僕の目、僕の手でそう 確かめるよ》――最も好きだった“粉雪”の一節、今でも身に染みて聴こえてくる。(高橋美穂)