“START TODAY”、“MY HEART FEELS SO FREE”、“CLOSE TO ME”といったクラシックがあって、“THE SOUND OF SECRET MINDS”の響きにむせび泣く名盤。オリコンチャートでは初登場4位を記録。国内外のタフなツアーでさらに鍛え込まれた3人の筋肉質なアンサンブルが、今も輝きを損なうことなく溢れ出している。
明らかにイカツイし激しいし、気の短そうな奴がこぞって聴いていたのだが、当時のハイスタに、あまりアングリーなイメージはなかった。少なくともハイスタの音楽は陽気で笑顔でポジティブだった。なぜか。そういう音楽が必要とされていたからだ。無かったのだ、心の底まで満たされる、陽性のバイブを持ったロックが。
ハイスタは、きょろきょろと流行り廃りを伺うのとは違う、肌でポップを捉える感性と勇気を持っていた。大袈裟でもなんでもなく、それは異端者の烙印を押されながら地動説を信じたガリレオのようだ。お前こそ空気を読め、という逆ギレ気味の揺るぎない意志があり、その上で、《愛するパンクス、怒れる男達よ/お前も戦う拳を決して失うな!!》(“FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL”和訳より)と歌ったのである。
その結果、たいへんなことが起こった。「AIR JAM '97」だ。今日のようにフェス文化が当たり前にある時代の話ではない。フジロックが初開催された直後で、テレビにも出ないバンドの主導するイベントがお台場で15000人を動員し、シーンをひっくり返した。ユースカルチャー/ストリートカルチャーを結集させた「AIR JAM」もまた、求められていたイベントであった。
ロックバンドとしての高い演奏力。海外バンドと同じ目線での活動。ハイスタがもたらした新常識は多い。でも、「本当に求められていることをやる」という、孤独な科学者か預言者のように真実を追求する飽くなき姿勢こそ、今後もシーンが深く学び続けるべきことなのだと思う。(小池宏和)