Hi-STANDARD全ディスクレビュー 4thアルバム『MAKING THE ROAD』(1999/6/30)

Hi-STANDARD全ディスクレビュー 4thアルバム『MAKING THE ROAD』(1999/6/30)

爆裂ショートチューン“TURNING BACK”から間髪入れず“STANDING STILL”に流れ込む流れも、パンクの自由を全身で謳歌するような“TEENAGERS ARE ALL ASSHOLES”“MOSH UNDER THE RAINBOW”も、“JUST ROCK”“MAKING THE ROAD BLUES”の激走感も、ブラック・サバスのカバー“CHANGES”も、そしてもちろん不朽のパンクアンセム“STAY GOLD”も――「この曲が」とか「このフレーズが」とかではなく、今作のすべての瞬間が青春の記憶と一体となって、いや青春そのものとして頭と心に染み付いている人は多いはずだ。

もはや説明の必要もない、ミリオンセールスを記録したメロディック・パンク/メロディック・ハード・コアの金字塔的名盤であり、今作リリースのタイミングでレーベル=PIZZA OF DEATHごとトイズファクトリーから独立したことも含めて、インディーズパンクのDIY精神の象徴として、今なお伝説的な魅力と訴求力を放っている4thアルバム。
僕自身、このアルバムが出た1999年6月は、大卒後3年間勤めた会社を辞めて転職した直後で、もう「青春」と言えるような年ではなかったが、同年のフジロック出演時に甚兵衛姿の3人が冒頭から轟かせた“STAY GOLD”には、あらゆる感覚が少年時代に引きずり戻されるレベルの衝動と歓喜を呼び起こされたことを、今でも鮮明に覚えている。

しかし、当時最も驚かされたのは、『MAKING THE ROAD』でパンクのみならず時代の最前線に躍り出るに至ったスピード感よりもむしろ、この『MAKING THE ROAD』をリリースしてから、翌年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止に至るまでの、わずか1年あまりというスパンの短さだった。

『MAKING THE ROAD』に至るまでに1997年・1998年と「AIR JAM」を開催してきたハイスタにとって、このアルバムは文字通りパンクの理想郷を作り上げた輝かしい記念碑となるはずだった。しかしその後、彼らを取り巻く状況の急拡大ぶりと過熱ぶりが浮き彫りにしたのは、シーンを/時代をリードし続けることの困難さと重さそのものだった。
そのことを痛いほど知り尽くした3人が、それでも2011年には再び集結、今年には16年ぶりのニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』をリリースして新たな時間を刻み始めた。その決断に至った想いが、『MAKING THE ROAD』と新作を併せて聴くことで、よりダイレクトかつ濃密に伝わってくる。(高橋智樹)
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