23年ぶりの新作『クロスアイド・ハート』は、どこを切ってもキース・リチャーズの息吹が生々しく聞こえてくるような、素晴らしいアルバムだ。
試聴した多彩な15曲は、彼が少年時代に出会った「ロック」の衝撃を、今現在のキースが楽しみながら、エキサイトしながら、なおも輝かせ続けているような感じ……。
今日はアルバムのレヴュー解禁日ということで、その興奮をお伝えしたい。
1曲目、タイトル曲でもある“クロスアイド・ハート”がなんといっても素晴らしい!
ギターも歌もたったひとり。キースの魂がかつてなく近くに感じられる剥き出しのブルースだ。
キース・リチャーズからロックの洗礼を受けているかのような、贅沢な気分に浸っていると、
ややぶっきらぼうに曲が終わり、アップテンポのロックンロール・ナンバー“ハートストッパー”へ。
これもまたキースらしい。
ドラム&バック・ヴォーカルに共同プロデューサーのスティーヴ・ジョーダンが参加。
さらにワディ・ワクテル(前作にも参加したエクスペンシヴ・ワイノーズのギタリスト)や
ラリー・キャンベル(ペダル・スチール&ヴィオリン)が加わって演奏を盛り上げる。
3曲目“アムネシア”は、リード・シングルの“トラブル”同様、待ってました!のストーンズ節満開のナンバー。
キースは、エレクトリック&アコースティック・ギター、ベース、ピアノ、ヴォーカルを演奏。
この“アムネシア”と、50年代ロックンロールの原点のような9曲目“ブルース・イン・ザ・モーニング”では、ソウルメイトでもあった故ボビー・キーズ(サックス)との熱い共演を聴くことができる。
4曲目の“ロブド・ブラインド”も本作の聴きどころのひとつ。
サビの高音ヴォーカルや、ペダル・スティールの響きが美しいカントリー・ソングだ。
グレゴリー・アイザックによるレゲエ・ナンバー6曲目“ラヴ・オーヴァーデュー”を、管楽器やアイヴァン・ネヴィル(ハモンド・オルガン&バック・ヴォーカル)を招いてゴージャスに披露!
次の7曲目“ナッシング・オン・ミー”では、アーロン・ネヴィルがバック・ヴォーカルで参加。
シンプルで美しい楽曲が多い本作において、
レナード・コーエンを彷彿とさせるスロー・ナンバー“サスピシャス”や
ノラ・ジョーンズとの共作による、ピアノが印象的な“イリュージョン”、
なかでもアメリカン・フォークのスタンダード“グッドナイト・アイリーン”は秀逸で、アルバムを象徴するような曲でもある。
ハウリン・ウルフのような力強いシャウトがかっこいい14曲目“サブスタンシャル・ダメージ”では
サラ・ダッシュがバック・ヴォーカルで参加。
そして最後15曲目はソウルフルな“ラヴァーズ・プリー”。
途中からホーンが壮大に響き渡っていく様子に、魂がゆさぶられてなんだか泣きそうになる。
と、かなり駆け足だが、これが『クロスアイド・ハート』を一度聴いた印象。
バラエティに溢れた15曲だが、どの音にもキースの肉体性がしっかり感じられて、生々しくて何度も何度も聴きたくなる。
23年ぶり、というのも納得の、長く愛される作品になるだろう。
今日発売されたロッキング・オン10月号では、キースが参加したNYでの試聴会の模様を、
中村明美さんが徹底レヴューしているので、詳しくはぜひこちらを読んでほしい。
ブログでのレポートはこちら。
http://ro69.jp/blog/nakamura/127840
『クロスアイド・ハート』は、9月18日世界同時発売! (井上貴子)
1. Crosseyed Heart
2. Heartstopper
3. Amnesia
4. Robbed Blind
5. Trouble
6. Love Overdue
7. Nothing On Me
8. Suspicious
9. Blues In The Morning
10. Something For Nothing
11. Illusion
12. Just A Gift
13. Goodnight Irene
14. Substantial Damage
15. Lover’s Plea