あのヒット曲の数々を生で聴けるだけで幸せなのに、相変わらず演出がてんこもりで、なんというかグランド・イリュージョンのような、すごく楽しい夢を見せてもらった感じ。一夜明けてもまだ余韻が抜けない。
オリジナル・メンバーとしてはブライアン・メイとロジャー・テイラーという1/2なのだけど、
80年代に自分が初めて観たクイーンのステージ(個人的には洋楽ライヴの初体験でもあった)の、人間味溢れるエンターティンメントの温かみは変わっていない。
(以下ネタバレあるのでご注意を)
中盤のアコースティック・セッションでは、“ラヴ・オブ・マイ・ライフ”や“手をとりあって”で会場中が大合唱……日本とバンドとのつながりを象徴するお約束の展開だが、やっぱりじーんときた。
しかも、クイーンと日本とが初めて出会った特別な場所「武道館」で、2016年にもう一度彼らのライヴが体験できる、という喜びが、会場にもうひつの魔法をかけていたと思う。
ブライアン(69歳)も、ロジャー(67歳)も、思いっきり本気でプレイしながらも、心から楽しんでいるように見えたし(ブライアンはなんと曲間に、「ちょっと待ってください。セルフィーください」と言って自撮り棒を持って360度自らぐるぐる回りながら、観客との記念ショットを撮っていた!?)、
クールに登場したアダム・ランバートが、“ドント・ストップ・ミー・ナウ”から文字通りはっちゃけ始め、より自由奔放に、より威厳を持って、ある時(“キラー・クイーン”は特に!)はフレディ以上に茶目っ気たっぷりに、クイーンのヴォーカリストとして君臨していく変化からも目が離せなかった。
自由でわがままな王様っぷりと、ユーモラスでいたずらっぽい妖精パック(シェイクスピアの『真夏の夜の夢』の)の陽気さ、そしてなによりあの歌唱力、フレディを真似るわけでもなく、この3つがごく自然に兼ね備わったヴォーカリストが、クイーンと一緒にステージに立っている、というのはやっぱり時代を超えた奇跡のように思える。
また、ヴィジョンに若き日のメンバーの写真が映し出されたり、“アンダー・プレッシャー”のイントロではボウイの写真が……。華やかな特効や照明はあるものの、素朴な手作り感が全体に感じられて、温かい気持ちになった。
今月号のロッキング・オン10月号に掲載しているクイーンの77年のインタヴューで、
パンクやニュー・ウェイヴが台頭している時代にスターを偶像化するようなコンサートをやってていいのか?と記者に批判され、
「君、ショウビズってことがどういうことだか本当にわかってないんだね?」
とフレディは何度も反論していた。さらに、
「僕らは批判に屈するつもりはない。もし、まだ何かしら価値を認めてもらえるようなら、この先も生き続けるよ」、と。
それから40年が過ぎ、古い新しいを超えた、ある意味で伝統芸能のような普遍的なエンターティンメントとして、クイーンのパフォーマンスを世界中の人が楽しみ続けている。
これこそが、フレディ・マーキュリー生誕70年のこのうえない祝福だと思う。
ちなみに、初来日武道館の1曲目だった“炎のロックンロール”、かなり期待していたけど、初日はやらなかったのでちょっと残念。
今日・明日のセットリストはどうなるのかな?
初日のセットリストは以下の通り。
詳細は、RO69にて公開のライヴ・レポートをお楽しみに。(井上貴子)
クイーン+アダム・ランバート LIVE IN TOKYO 2016
2016年9月21日(水)開場:18時半/開演19時
・輝ける7つの海
・ハマー・トゥ・フォール
・ストーン・コールド・クレイジー
・ファット・ボトムド・ガールズ
・ドント・ストップ・ミー・ナウ
・キラー・クイーン
・愛にすべてを
・ラヴ・オブ・マイ・ライフ
・手をとりあって
・輝ける日々
・ドラム・バトル
・アンダー・プレッシャー
・愛という名の欲望
・地獄へ道づれ
・アイ・ウォント・イット・オール
・リヴ・フォーエヴァー
・ショウ・マスト・ゴー・オン
・ギター・ソロ
・タイ・ユア・マザー・ダウン
・ブレイク・フリー(自由への旅立ち)
・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
・ボヘミアン・ラプソディ
・RADIO GA GA
アンコール
・ウィ・ウィル・ロック・ユー
・伝説のチャンピオン