キング・クリムゾン来日決定。 闇の傑作アルバム『アイランズ』を完璧に伝える決定的インタビュー、2号連続掲載!!《 後編》

rockin'on 2021年10月号より

「あの頃のピーターが、自分こそがクリムゾンの“良き妖精”だと信じていたことは疑うべくもない。
だが、どうして『アイランズ』が“ピーターのアルバム”なんだ? 彼は一曲たりとも作曲に関わっていないし、演奏もしていない」(フリップ)


キング・クリムゾン史の闇に埋もれていた傑作『アイランズ』の約半世紀に及ぶ物語、その後編をお届けする。

本作が生まれた1971年当時のロバート・フリップは、分裂を繰り返すバンドの遣り繰りに疲れ果て、まさに自暴自棄だった。苦難の末に集めたメンバーたちとはコミュニケーション不全になり、無二の理解者だったはずのピート・シンフィールドとの溝は深まるばかり。翌年早々に解散が決まったにも拘らず、レーベルとの契約をこなすため破綻状態のまま北米ツアーに赴かざるを得なかった。

そんな悲惨を絵に描いたような破局から30年後、フリップがメル・コリンズにかけた国際電話をきっかけに劇的な和解が始まる。かつて、才気が勝ちすぎナーバスで頑なだったフリップは、思い遣り溢れる真のリーダーへ変貌していた。そして2010年、彼の中で長らく封印されていた『アイランズ』に光が当てられ、14年の新生クリムゾン始動後はセットリストの中軸に組み込まれていく。

クリムゾンとはフリップの人格が乗り移ったバンドに他ならず、その人格に磨きがかかれば、おのずとバンドも進化する。これは、まもなく再来する「究極形クリムゾン」の絶対強度を証明する物語なのだ。

それにしても、ジャッコ・ジャクスジクの献身とウイットはいつも魅力的だ。フリップが丸くなったのは、彼の存在に拠るところが大きい。例年より初CD化音源が豊富な『ジ・エレメンツ・オブ・キング・クリムゾン 2021ツアー・ボックス』を聴きながら、来日に備えよう。 (茂木信介)



キング・クリムゾンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

rockin'on 2021年10月号

rockin'on 編集部日記の最新記事