「ハロー、マディソン・スクエア・ガーデン!! 信じられない。俺たちローマのストリートから始めたんだぜ。こんな大きな夢が叶ったのはみんなのおかげだ。どうもありがとう」と、9月21日、成功の象徴と言えるニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(以下、MSG)公演を完売させたマネスキンのダミアーノ・デイヴィッド(Vo)が感極まって言った。NYタイムズ紙もライブ直前の記事で「新世代で唯一」にして「最後のロックスターか?」と検証していたくらいで、「最後」は言い過ぎだと思ったが、驚異的快挙であるのは間違いない。そんな歴史的な瞬間なのに、『ラッシュ!』ツアーの全米初日がいきなりMSGで、前座もいない前代未聞の彼ら流のやり方だったのにも度肝を抜かれた。
ライブも幕がかかったステージが真っ赤に照らされ、1曲目“ドント・ワナ・スリープ”ではメンバーの巨大な影が映し出されゾクゾクする始まりだったが、幕が落ちると、今度は彼らのワイルドで危険でセクシーな正体が剥き出しになったかのような無機質なステージだったのも衝撃的。美しい光に照らされてリングに立った絶対負けられないボクサーのように見えたのだ。
この始まりだけで、ロックを体現しているようだったが、加えてこの日はダミアーノが何度も言っていた「スペシャル」な瞬間の連続。新曲の“ハニー(アー・ユー・カミング?)”が、この日最大かという大合唱でファンがバンドとともに前進し続けているのも明らかだったし、フロア後方に作られたミニステージでは、トーマス・ラッジ(G)のアコギとダミアーノの2人だけで超貴重なパフォーマンスも披露。「最も偉大なアーティスト」エイミー・ワインハウスのカバー“バック・トゥ・ブラック”で、ダミアーノがソウルフルでこの日最高のボーカルを響かせた。
またNYタイムズの記事のせいでバンドが批判されたことを皮肉り「代わりに最初のラップバンドになる」と超意外ケンドリック・ラマーの“ハンブル”をカバー! ヴィクトリア・デ・アンジェリス(B)とラッジ、イーサン・トルキオ(Dr)によるダークで攻撃的でどこか覚めたマネスキン流解釈が最高にカッコ良くて、バンドの実力を証明するようでもあった。最後はお決まり“アイ・ワナ・ビー・ユア・スレイヴ”をリピートで、バンドもファンも一生忘れないであろう勝利と祝祭の瞬間を歓喜の中締め括った。
ロックスター知らずのZ世代にロックの興奮を体感させ、新たなロックシーンを切り開く圧巻のライブ。言わずもがなだが日本公演も期待して! (中村明美)
マネスキンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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