【インタビュー&出演アクト解説】洋楽好きのための新たなるフェスrockin'on sonic 2026――プロデューサー山崎洋一郎へのインタビューと豪華出演アクト解説で見どころを完全網羅!

【インタビュー&出演アクト解説】洋楽好きのための新たなるフェスrockin'on sonic 2026――プロデューサー山崎洋一郎へのインタビューと豪華出演アクト解説で見どころを完全網羅!

KNEECAP
(文=つやちゃん)

アイルランド・ベルファスト出身のヒップホップグループ、ニーキャップ。彼らは単なる音楽ユニットを超えて、言語と文化の政治的復権を体現する存在だ。

曲中で使われるアイルランド語は、長らくイギリスの支配下で抑圧され、絶滅寸前まで追い込まれた言語。彼らのリリックは、音楽である以前に、失われかけた文化を取り戻す運動であり、権力への抵抗の宣言でもあるのだ。さらに彼らの音楽的土壌には、幼少期から耳にしてきたフィドルやティンホイッスルのような、共同体的体験を示す音が根底にある。

そこにアメリカのラップやアイルランドのレベルミュージックが折り重なり、ジャンルを超えたごった煮のスタイルが形成された。最新作『ファイン・アート』は、ヒップホップ、レイヴ、伝統音楽の要素が交錯する越境的なALであり、グローバル化した音楽市場における「ジャンルの死」と「ローカルの再生」を同時に告げているようだ。

彼らの人気の拡大を決定づけたのは、半自伝的映画『KNEECAP/ニーキャップ』の成功である。映画祭で賞賛され、スタンディングオベーションを巻き起こしたことは、彼らの物語がアイルランド固有の問題を超えて、世界中の先住民族やマイノリティの共感を呼び起こしたことを示したのだった。

言語の復権というテーマは、文化的アイデンティティを奪われたあらゆる人々に通じる普遍的な問いとなったのだ。つまり今、ニーキャップは、ヒップホップが持つ「ローカルな現実を世界に翻訳する力」をもっとも鮮烈に体現するグループのひとつであるということ。彼らの存在は、ヒップホップがただの娯楽にとどまらず、歴史の中で抑圧されてきた声を響かせるための文化であることを思い出させる。

すでに様々なフェスに引っ張りだこの彼らだが、大勢の観客を夢中にさせるパフォーマンスも話題だ。コーチェラに出演した際は、パレスチナ支持を表明したことで配信映像がカットされたという疑惑が浮上。政治家や著名人を巻き込んだ論争に発展するなど、話題を呼んだ。

また、凄いのは痛烈な政治性だけではない。ユーモアいっぱいに観客を笑わせ、挑発し、踊らせることもできるのが強み。海外でのライブ映像では、はためくアイルランドの国旗とともに跳んだり跳ねたりと、観客の盛り上がりはかなりのもの。rockin'on sonicでの舞台、全力で盛り上げたい。

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TRAVIS
(文=木津毅)

ブリットポップが終わろうとする時代にスコットランドのグラスゴーから登場し、切なく沁みるメロディでたちまち人気になったトラヴィス。

当時はコールドプレイやキーンやスノウ・パトロールらとまとめて「UK叙情ロック」などと呼ばれたものだが、以来四半世紀にわたってメンバーチェンジもなくずっと「いい歌」を地道に世に放ち続けているトラヴィスは、その誠実さによって長く愛されてきた。

彼らを一躍有名にしたセカンドAL『The Man Who』(99年)、ディスコグラフィを通しての代表作『The Invisible Band』(01年)の20周年ツアーも敢行し、後者は来日公演も実現したが、そこで明確になったのはバンドのコアにあるものは何ひとつ変わっていない、ということだった。

感情の機微をドラマティックに誇張するのでもなく、けれども複雑な実験に向かうのでもなく、あくまでフレンドリーで柔らかい歌として分かち合おうとするのがトラヴィスなのだ。『The Invisible Band』の20周年ライブでは同作の再現パートとオールタイムベストのパートで構成されていたわけだが、ある意味そこに大きな差はなかった。彼らの30年を超えるキャリアには派手さがない代わりに、会うたびに同じ笑顔を見せてくれる幼馴染のような安心感が宿っている。

とはいえ、バンドが確実に年を重ねているのも事実。最新作であり通算10作目の『L.A. Times』(24年)は「これまででもっともパーソナルな作品」だとフラン・ヒーリー(G/Vo)に説明されており、長年のパートナーとの別れなどの喪失が刻まれている。それは中年期のメランコリーだ。幼馴染も年を取るのである。トラヴィスはその実直さによって、若さや過去の栄光にしがみつくのではなく、その時々の自分たちにできる表現を続けているのだ。それは彼らとともに年を取ってきたリスナーには、深く共感できるものであるはずだ。

今回のrockin'on sonicでの来日はそんな最新作を引っさげたもので、現在の彼らのありのままの姿が見られる機会だ。もちろん、過去の名曲もたっぷり聴けるはず。フジロックのステージで彼らが“Why Does It Always Rain On Me?”を歌えば雨が降る……というのは語り草になっているが、きっとロキソニ当日、幕張メッセの屋内ステージにも、想像上の優しい雨が降り注ぐことだろう。

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WOLF ALICE
(文=伏見瞬)

英国におけるウルフ・アリスの高い人気を日本のリスナーはどこまで共有しているだろうか? 過去のアルバム4作が全て英国チャート2位以上を獲得しており、最新作『ザ・クリアリング』もイングランド、スコットランドでそれぞれ1位。10年にわたって評価を維持する稀有なバンドであることが、どこまで知られているだろうか。

2010年代初頭にロンドンで結成された彼らは、エリー・ロウゼルの大らかさと鋭さと繊細さを併せ持つボーカリゼーションを軸に、ドリームポップの可憐な浮遊からグランジの濁った歪みまで、ニューウェイヴの平熱からサイケデリックフォークの情緒まで、高い技術で自在に行き来するバンドとして注目を集めた。

2015年のデビュー作『My Love Is Cool』、続く『Visions Of A Life』で瞬く間にイギリスのバンドシーンの最重要株として注目を集めることになり、2021年の『Blue Weekend』でブリット・アワード受賞とマーキュリー賞ノミネート。バンドのスケールを決定づけた。

最新作『ザ・クリアリング』ではプロデューサーに大物グレッグ・カースティンを迎え、キャロル・キングやフリートウッド・マックを想起させる1970年代ポップのノスタルジアを開拓。

《とげを抜いて楽になったの? 傷ついたことを世界中に言いふらして》と被害者性とソーシャルメディアの関係を歌う“ソーンズ”、《私の中の“ワイルドな存在”を受け入れられるといいな/誰も彼女を飼い慣らしに来ないでほしい》と家庭における女性の二面性を表す“ザ・ソファ”などで、現代的なユーモアと切実な毒を甘いメロディの中に注ぎ、ディストーション抜きの、新たな楽曲世界を示している。

特に今作のドラムとベースは楽曲の引き締まったグルーヴ感とバリエーションの広さを支えており、それがライブでどのように活きていくのかは今回の注目ポイントだ。

もはやインディシーンの寵児ではなく、世界基準のロックバンドに成長したウルフ・アリス。果たして名曲“Don’t Delete the Kisses”の夢見心地がどのように会場全体へ広がるのか、“Bloom Baby Bloom”や“Just Two Girls”の繊細なアンサンブルがどのように伝わるのか。確かな実力を蓄えてきた彼らのパフォーマンス、是非とも耳と目に焼き付けてほしい。



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